二話 千年後の世界
僕は転生してアゼルと名付けられ、早くも十年の月日が経った。
十年間生きてみて分かったことは、今生きている時代は確かに《神裁の日》から既に千年の月日が過ぎていたということを実感した。
この千年の間に人間はかなり魔力に適応し魔力回路が体内にでき直接魔力を力として使えるようになっていた。
そして文明のレベルはそこまで退化しておらず、建造物のレベルとほとんど変わらず、都会では普通にガス張りの高層ビルが建っていたりする。
乗り物も全て魔力で動くよう設計されていて、燃料を交換する必要がなくなったり、
他にも魔力によって病気になる人もかなり減った。
魔力のおかげで僕が前世で生きていた高度な文明社会よりも日常生活はかなり便利になっていた。
あとこの世界では民主主義という考え方から退化し、王侯貴族が国を統治するのが主流になっていた。
僕が生まれたのは一応剣術で少し有名な辺境伯のスキアー家の次男だった。
それ以外にも大きく変わったのはそれだけでは無く、前世では比較的平和だったが魔力のせいで人間以外の動物達も凶暴になり魔獣というものもあらわれ、人間の犯罪も増えてしまった。
そんな魔力の存在する世界では自分の身を守るため銃などの武器を使うより、剣などの武術を使うのが主流になっていた。
そんな世界で今も《究明機関》は闇で動いている。
《究明機関》の存在は表社会に知られていない。
十年間過ごして一度もその名を聞かなかったのだからそう考えるのが妥当だろう。
そもそも一度人類は滅びかけたのに千年経った後でもまだ存在していることに驚きだ。
奴らが闇で動くなら僕も闇から動いて対抗するしか無い。
そのため奴らに対抗するため僕は日々修行をしているが家族にバレないよう夜に森で魔獣相手にやっていた。
辺境伯家に生まれたおかげでこの地域一体は辺境で自然に囲まれており環境はかなり良かった。
今もこうして家族が寝静まった後に家を抜け出し近所の森で修行をしている。
日中は姉さんと一緒に、父さんに剣を教えてもらっているが
今この世界の剣術は魔力によって様々な動きができるようになりかなり精錬されたものになっていた。
しかし、それゆえに合理性に欠け、最短最小で動くという理念が無くなってしまっていた。
だから僕が一人で修行するときは前世の剣術と武術を極めることにした。
僕の前世の両親は父親が合気道、母親が剣術家だったため前世で幼い頃は良く鍛錬をさせられた。
前世では将来、跡取りになるはずだったが研究者になりたかった僕は家出をしてその日から実家に帰った事はなかった。
今更後悔しても遅いが、前世の両親には感謝してもしきれない物を与えてもらったことを転生して気づいたんだからなんとも皮肉な物だ。
そして、修行するに当たって最も重要なこと。
それは、魔力に関して僕しか知らない要素があるということ。
僕は前世では魔力について研究をしていた。
前世では研究者こぞって魔力を増やすことばかり研究していたがその中で唯一、僕は魔力の利用価値、利用方法を研究していた。
現代での魔力の使用方法は基本、身体強化以外は《魔術器》を通して使う。
例えば剣の魔術器だったら魔力を剣に通すことで炎を出したりすることができる。
元々地球の文明は技術力が高かったためこの様な道具ができる事は必然だったのかもしれない。
こんな道具が日常的に使われている事から人々がどれだけ魔力に頼っているかわかる。
しかし、僕は前世で研究の最中偶然にも神裁の日の直前、僕はとんでも無いものを発見してしまった。
それは、《反魔力》というもの。
魔力は世界から減ると元々あった量に戻ろうとし魔力から魔力が生まれる。
そのとき、この反魔力が副次的に生まれる。
反魔力は魔力の粒子のおよそ一万分の一の大きさしかなく、ほとんど魔力と同じ構造を持つが重要なのは魔力と対の物質であるという事であり、魔力の粒子一つに対し反魔力の粒子一つを人工的に結びつけると魔力は性質を失い還元され消滅するという事。
反魔力の存在は神裁の日から千年経った今でも知られていない。
僕は反魔力を使えるように魔力で魔力回路を弄り使えるように肉体の改造を施した。
それはそれはかなりの激痛だったが、、
その他にも魔力と反魔力の保有量を増やすために、幼くまだ肉体の成長が終わらないうちに魔力の貯蔵をしている内臓を身体に影響が出ない程度に拡張する改造をし、魔力の練り方も工夫をした。
魔力を練るというのは身体の外部から魔力を取り込み自身の体に馴染ませ止まらせることを指すのだが、僕は魔力を練る時、魔力を凝縮させ濃度を上げている。
転生して十年、まだ反魔力を上手く扱えてはいないがそれなりには強くなったと思う。
さらに、僕は、転生してからも魔力と反魔力について研究をしていた。
そして分かったのは人間の血は魔力をかなり通しやすいという事。
それによってできた転生して初めてできた発明品、
それは、《魔力血》
自身の血とよく濃く錬った魔力を混ぜ合わせ、血を固体に状態変化させられるようにした血液で、今は外套にして着用している。
これは前世の漫画やアニメの吸血鬼の血液を操る能力を参考にしたものだ。
実際には今この世界にも動物が魔獣化したように人間も魔力よって変化し進化して魔人化した吸血鬼などが存在しているがこの世界の吸血鬼は血液を操る能力はない。
そしてこの魔力血は取り出しが自由でとても便利で色も自由に変えられるが元の色が黒紅色でかっこいいのでそのまま使っている。
こんな事をやると失血死するんじゃ無いかと思うかもしれないけど実際は中は空洞だし含んでいる血液の量はかなり少なく、大体98%が魔力だから失血死の心配は少ない。
そして魔力の濃度によって硬度を自由に変えられるため僕の魔力量と魔力操作があれば《魔銀鋼》程の高い防御力を備えていた。
そんなこんなで森の中を駆け抜けていると、熊の姿をした魔獣が出てきた。
「ウォーミングアップには丁度いいな」
僕は早速右手に《魔力血》で刀を作り、戦闘体制になる。
つま先に濃くした魔力を集中させ強化し駆ける。
そして魔獣の背後に回り込み一太刀で首を刈り取る。
魔獣からは僕の動きが速すぎて何が起こったか理解できなかっただろう。
僕の場合、単純に魔力を多く注ぐのではなく密度を濃くして捧げる魔力量を増やしている。
その為、足は普通に注ぐ何倍にも強化される。
僕は刀を収納し一息つく。
そんな風にいつも通り僕が森で修行をしていると近くから人の話し声が聞こえてきた。
この小説が面白いと思った方は
☆☆☆☆☆→★★★★★にしてくださると嬉しいです。ついでにブックマークもお願いします。