10話 実力の隠蔽
「ちなみに皆に伝えておくが言っておくが今回、魔力の使用はなしだ」
「「えっ!?」」
体育館にいるKクラスのみんなが驚愕の声を漏らす。
そしてホームズ先生は何故今回魔力の使用を禁ずるかを説明し始める。
「今、既存の流派は全て魔力を使用することを想定されて出来ている。しかし実戦では魔力を使えない時が無いこともない。普段自分たちがどれだけ魔力に助けられているかを知ってこれから先一体どのように剣術と向き合うのかを考えてもらう」
クラスの中ではその説明に納得するもの、まだ疑問に思っているもの半々といったところだろう。
俺自身はこの先生が言っていることは非常に正しいと思っている。
本当の戦いの中では魔力が切れたりすることもあるし、魔力を使わない方がいい状況やまた魔力を温存するために魔力を使わないことはあるだろう。
まあ僕の場合うちに秘めてる魔力量がとんでもないからまず魔力が切れることはなかなかないと思うが。
「よろしくお願いします」
そしてヴァレルは一言挨拶をしてからホームズ先生へと踏み込む。
そのまま木剣を振り上げ先生に一閃。
だがそれはホームズ先生に軽く受け止められてしまう。
「どうした?やはり魔力がないと無理か?」
「そん、な事はありません!」
ヴァレルは木剣同士が軋み合い重なり合っているところを力任せに振り切る。
「うわぁ!」
だが力任せに振り切ってしまったがためにそのままバランスを崩し膝をついてしまう。
「終わりだ」
ホームズ先生はヴァレルの首に木剣の切先を寸止めしていた。
「・・・」
ヴァレルは一瞬で決着がついてしまったことに言葉が出ずにいた。
「今のように魔力がない場合の戦闘時、お前らは無力だ。それをこれから一人ずつ体感してもらう。じゃあ次はお前だ」
そうして次々と指名され順番に先生と対峙していく。
ほとんどのものは魔力がないがために先生とまともに撃ち合うことすらできていなかった。
「じゃあ次はお前だ」
先生が指差す先には僕が立っていた。
「僕の番か」
「頑張れよ!アゼル!俺たちの仇を打ってくれ」
「頑張れアゼル君」
「頑張ってアゼル」
「頑張って下さいませアゼル様」
僕は先生の前に立つがどうしようか僕は悩む。
ここで本気を出してしまうと目立つし実力がバレて入学試験で手を抜いていたことがバレてしまうし何より目立つ。
それに僕の流派は今この世界では存在しないため構え方でバレてしまう。
「どうした、構えないのか?」
「い、いえ構えます」
僕は木剣を抜き咄嗟にスキアー家で父さんに教えてもらった構えをとる。
「それでは行くぞ!」
僕が構えるや否や先生は斬りかかってくる。
その踏み込みはまだ入学したばかりで剣術がまだまだ未熟な生徒のために甘く、正直めちゃくちゃスローモーションに見える。
「うわぁぁー(棒)」
だが僕は目立たないためにわざと驚いたふりをして目を瞑り木剣を緩く握りながら適当に前に出したかのようにする。
そしてその木剣をホームズ先生は勢いよく吹き飛ばしてしまう。
周りからは見事に木剣が先生に上手く飛ばされてしまったように見えている事だろう。
「次はお前だ」
僕は飛ばされた木剣を拾い元にいた場所に戻る。
「派手にやられたな」
「大丈夫?アゼル君」
「すごかったわね」
ケルスが帰ってきた僕の肩をポンポンと叩きながらそう呟く。
他の2人も僕に対して労いの言葉をかけてくれた。
そして次に先生とに指名されたのはラファエルだった。
僕達はラファエルを見守る。
「大丈夫かな?ルアンちゃん」
「ああ」
「少し心配だよ」
みんなラファエルを心配するような表情を浮かべているが正直僕が鍛え上げたので本気を出せばこの先生ぐらいは魔力なしでも簡単に倒せてしまうだろう。
だが僕達は目立たないために実力を隠さないといけない。
まあラファエルならその辺はしっかりとやってくれるだろう。
僕の予想通りラファエルは一直線に突っ込みそれを先生に見切られて後ろにまわられ首に木剣をちゃんと当てられて終わった。
「頑張ったよルアンちゃん!」
「本当だよくやったよ」
「うんうん!」
「頑張ったなルアン」
みんなから声をかけられてラファエルは少し照れ臭そうにしている。
そして全員が先生との手合わせを終えた時丁度授業終了の鐘が鳴る。
「それでは今日はここまで!次からもちゃんとしごいていくから覚悟をしておけ!」
その後も座学を二限、昼休憩をはさみそして、三限、四限と一日を終えた。
「ふわあぁ」
僕は大きく背伸びをしてあくびをする。
「はあぁー疲れたぁー」
ケルスが机の上でぐったりしながらそう呟
く。
「ちょっと1日目がそれで本当に大丈夫なの?」
それに対してヒマリは心配の言葉を投げかける。
「アゼル達はこの後何か予定ある?ないんなら僕達と街へ遊びに行かない?」
「ごめんだけど僕達この後予定があるんだ」
ヴァレルがそう僕達に聞いてきたが僕は断りを入れた。
正直言うと今日はこのあとは何もない。
でも今日1日疲れたし部屋でゆっくりしたいしね。
「そうなのか、じゃあまた今度誘うね」
「うん、ありがとうじゃあ僕達はもう寮に帰るよ、また明日」
「まだ明日」
「また明日ねー」
「また明日ー」
3人とも手を振ってきちんと挨拶をしてくれた。
そして僕達は玄関に行き靴を履き替えて下校する。
「貴方今日はもう何も予定なかったでしょう何で断ったの?」
「いやーもう今日は疲れたから」
「それ続けると友達無くすわよ」
「はいはい次誘ってきた時はちゃんといくよ、、、それで究明機関の事は何か掴めたの?」
ラファエルから少し怒られてしまったがまあ次はちゃんと行こうと思うので問題はない。
それよりも究明機関の情報収集の進行具合を問う。
「まだよなかなかに手がかかりそわだわ。でも気になる事はあるわ」
「なんだい?」
ラファエルがこれだけ探しても足掛かり一つとして見つかっていないのはかなり手強い。
だが僕もこの王都で気になっている事はある。
「最近王都では人攫いが急激に増えているのよ」
「ふむ、何か関係があると思う?」
「分からないわ。でも関係がある可能性はゼロではないと思うわ」
どうやら僕が気になっている事はラファエルと一致したようだ。
「じゃあ、その人攫いについてこれからは調べてくれる」
「分かったわ」
そして話し終えた僕達は沈黙しながら寮へと歩を進めた。
すると何やら鼻の奥をつくいい匂いがしてきた。




