第1話 プロローグ
声が聞こえる。
窓の外からは人の熱気に溢れた声が聞こえてくる。
「もう昼じゃないか…」
窓から差し込む光は、すでに時間が昼になっていることを示している。
アレンはベットの上で起きてすぐ、窓をぼんやり見つめていた。
「やっと起きたの??」
寝起きすぐに話しかけてきたのは、クールビューティーという言葉が似合う恋人のアンジュだ。
まだ頭はぼんやりとしている。だが何か返事をしなくては機嫌を損ねてしまうので急いで返事をする。
「なんか騒がしくない? 今日って何かあったっけ?」
「はぁ〜? 昨日の夜、説明したでしょう…? もうすぐ王位継承があるからそのお祭りだって」
「あとで行くか?」
「私なら先にアレンが寝てる間、買い物に行ってきたわよ…お昼ご飯も買ったけど食べる?」
そう言って差し出してきたのは、起きがけには重たすぎる肉爆盛りのどんぶり料理だ。
「いや、さすがに重たすぎるだろ…」
「意外と食べられるわよ、たぶん…」
買ってきてもらっただけありがたいので、しぶしぶ食べることにした。しかしこのどんぶり、見た目ほど重くはなく食べやすいものであった。
「意外と食べられるな」
ここは、観光と貿易の都市リグラス。
その街の宿に泊まっている2人、アレンとアンジュは目的があり先月からこの街を訪れていた。
「王位継承はやっぱり第一皇子か?」
「たぶんね、いまのところ第一皇子派が優勢ではあるわ… 第二皇子派は動いているものの第一皇子派の圧力で押されてる状況よ」
「第二皇子も大変だよな」
「何呑気なこと言ってるのよ、王位継承時にマリー皇姫の所持する宝玉をダミーとすり替える必要があるのよ?」
「なぁ… 普通に忍び込んで交換できねえかな?」
「むりよ…あの宝玉は所有者としてマリー皇姫に帰属契約されてるわ。 下手に持ち去ろうものなら位置を特定されるか強制転移なんてこともあるわ」
「なるほどね〜… つまり皇姫の承諾を得るか、帰属契約を強制解除する必要があるのか」
「ただアレンも知ってると思うけど帰属契約の強制解除は…」
「ああ…強制解除と同時に契約者と解除者が同時に絶命してしまうから後者は無しだ」
「とりあえずこれから行くでしょ?街に」
「そうだな、支度するよ」
食事も終わり時刻は2時を迎えようとしていた。
これから忙しくなりそうだ、と考えたが今日は祭りも楽しもうと呑気なことを考えているアレン•エーテルは身支度をする。
第四階梯魔法―
世界加速
これは自分を軸に世界を対象として時間を遅らせることで、1秒に10秒分の行動ができ早く身支度ができるようになるアレンお気に入りの魔法だ。
この世界は誰でも練習すれば使えるようになる魔法と、先天的にその人個人でしか使えないオリジナル魔法など、さまざまな魔法が存在している。
他にもいろいろあるのだが、それについてはまた追々紹介していこう。
これはアレンとアンジュが、様々な任務の中で出会いと別れを通し、自分たちが存在する世界を救う物語である。