お見通しなひろしのジェラシー
「案内はするけど、プレゼントは自分達で選びなさい。他の女に選ばれたプレゼントなんて嬉しくないから。」
茶色のゆるいパーマの髪型に、パステルカラーのワンピースの彼女は、俺とたくみにそう言った。
彼女の言葉になるほどと思いながら、その言葉が本当なら、今この瞬間もゆいこに見られてはまずいのではないかと思った。大学でも人気のある彼女は、困ってる俺たちを放っておけないくらい面倒見がいい。見た目も、ゆいこが買っている雑誌に出てくるような綺麗系だ。もし、こんな彼女と遭遇したら、ゆいこのことだから、敵わないと思うのではないか、そんな胸騒ぎがした。
翌日、ゆいこの塾の帰りに、バースデープレゼントを渡すために公園に寄る。ゆいこがブランコに腰かけるのを見届けて言う。
「ゆいこ、お誕生日おめでとう!」
なんかたくみが言ってきたが、それには触れず、ブランコに近づいて細長い箱を渡す。
「あけてみて。気に入ってくれると嬉しいんだけど。」
ゆいこは包みをあけて、星形のペンダントトップのネックレスを取り出して嬉しそうにした。
俺に遅れて、たくみが小さい箱を渡す。たくみのプレゼントを喜ぶ顔を見る気はなく、そそくさと
「ほら、着けてやるから。」
とネックレスを受け取り、ゆいこの背に回った。両手に金具を持つと、手と俺の体との空間にゆいこがいて、このまま抱き締めてしまいそうになる気持ちをなんとかして封じ込める。ややあって金具を留め、手が離れたときだった。
「どうした、ゆいこ?嬉し泣き、じゃないよな。」
左下から声が聞こえた「嬉し泣きじゃないよな。」という聞き方は、人を追いつめずに、逃げ場を与えてくれる。たくみらしい言い回しだ。
「ううん。嬉し泣き…」
「違うだろ。ちゃんと言えよ。」
たくみの用意した逃げ場に飛び込んだゆいこの本心が聞きたくて、つい強い口調になる。俺にはたくみのような
言い回しはできなかった。
ゆいこの本心は昨日の嫌な予感が的中した。涙の理由を癒したくて説明をする。背中から見ていても、だんだん落ち着いくのがわかった。しかし、彼女のあの言葉を引用した瞬間、緊張感がまた走る。しまった、地雷踏んだ!と思う間もなく、たくみが声をあげた。
「俺もひろしも、ゆいこが一番大切だから、それだけは忘れんなよ。」
たくみから、俺の名前が出るとは思っても見なかった。多分たくみだって不本意だったはずだ。思わずたくみを見ると、視線をあげ、もう大丈夫だと目配せをしたのだ。
俺は洞察力はある方だと思う。だが、色々と見通すことができても咄嗟の対応力が低いのだ。こういうとき心の底からたくみを羨ましいと思う。 この思いを抱えながら、これからもトライアングルの関係を続けていくのだろう。
トライアングルレッスン交流ができたら嬉しいです。
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この作品の時系列は、
ゆいこのトライアングルレッスン放課後シリーズ
~いつまでも一緒にいたい雨上がり(ゆいこの視点)~
~君のこと独占したい雨上がり(たくみの視点)~
~恋と友情のはざまに揺れる雨上がり(ひろしの視点)~
と
ゆいこのトライアングルレッスンH~観覧車でダブルサイドハグ!?~
の間に位置する物語です。
よかったら、そちらもお立ち寄りくださいませ。