負けたくないたくみのジェラシー
「俺もひろしも、ゆいこが一番大切だから、それだけは忘れんなよ。」
咄嗟にひろしの名前も出たことを思い出しては、やっぱり納得がいかない、と思う。でも、あの泣いているゆいこをなだめるためには、悔しいけど俺だけじゃなくてひろしの力も必要だったことは、確かだ。
ゆいこの塾の帰り、バースデープレゼントを渡すために公園に行った。ゆいこがブランコに腰をかけた瞬間にひろしが声をかけた。
「ゆいこ、お誕生日おめでとう!」
ひろしの抜け駆けに負けまいと
「ひろしズルいぞ。俺が先に言おうと思っていたのに!」
と言うが、ひろしは俺を無視してゆいこの方へ近づいて、細長い包みを渡している。また、先を越された!
「ゆいこ、俺からも。」
と、小さい箱を渡す。ゆいこは包みを明け、俺が渡したハート形のチャームがついたブレスレットと、ひろしの星形のペンダントトップを見てはキラキラと目を輝かせていた。喜ぶゆいこが可愛くて仕方がない。
「ほら、着けてやるから。」
ひろしがゆいこの背に回り、俺は跪きゆいこの華奢な左手をとる。
願わくばブレスレットではなく、薬指にリングをつけてやりたい…などと思いかけたときだった。ポツンと何かが手に降ってきたのだ。顔をあげるとゆいこの目には、さっきまでのキラキラとは違う光が指していた。
「どうした、ゆいこ?嬉し泣き、じゃないよな。」
「ううん。嬉し泣き…」
いや、明らかに表情が違うだろ、と突っ込む間もなく、ひろしが強い口調で言う。
「違うだろ。ちゃんと言えよ。」
観念したのか、ゆいこは訳を話し出す。どうやら昨日俺たちがプレゼント選びをしているときに一緒に女性がいたことが原因のようだ。
彼女は大学の友達でプレゼント選びに悩んでいたところ、店を教えてもらったことを説明したひろしはそのまま話を続けた。
「彼女に言われたよ。案内はするけど、プレゼントは自分達で選びなさい。他の女に選ばれたプレゼントなんて嬉しくないからって。」
その言葉に、話を聞きながらだんだん落ち着いてきたかのように見えたゆいこが、絶望するように目を見開く。その表情にいてもたってもいられなくなった俺は、思わず声を張り上げて言った。
「俺もひろしも、ゆいこが一番大切だから、それだけは忘れんなよ。」
ゆいこはの表情は、ハッと気づいてなにかを決意したように変わっていった。
俺は視線をあげ、彼女の表情が見えず、どうすることもできずにいるひろしに、もう大丈夫だと目配せをしたのだった。
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なお、この作品の時系列は、
ゆいこのトライアングルレッスン放課後シリーズ
~いつまでも一緒にいたい雨上がり(ゆいこの視点)~
~君のこと独占したい雨上がり(たくみの視点)~
~恋と友情のはざまに揺れる雨上がり(ひろしの視点)~
と
ゆいこのトライアングルレッスンH~観覧車でダブルサイドハグ!?~
の間に位置する物語です。
よかったら、そちらもお立ち寄りくださいませ。