大人になりたいゆいこのジェラシー
「あーもう!気になって勉強が手につかない。」
自分の部屋で、鉛筆を置き問題集から目をそらす。
昼間、ショッピングモールに立ち寄ったとき、数軒先のジュエリーショップに入ろうとしているひろしとたくみをみかけたのだ。眺めていたら、他にもう一人いることに気づいた。茶色のゆるいパーマの髪型に、パステルカラーのワンピースの女性だった。
窓から見える月をぼんやりと見ながら、一緒にいた女性を思い出し大人っぽい人だったなと思った。それに対して、校則にそって黒髪に、女子高生とすぐにわかる制服姿の自分。
(わかってる。大学生になった二人に似合うのがどちらかなんて、言うまでもない。それでもひろしとたくみの間には私がいたい。)
と、願わずにはいられない。
「明日は誕生日なのに、なにかが黒く渦巻くような気分になるなんてなぁ…」
と、声に出していた。
翌日、いつもどうり、ひろしとたくみが塾に迎えに来てくれた。公園に寄り道していくことになり、ブランコに座ると、それを見届けたようにひろしが口を開く。
「ゆいこ、お誕生日おめでとう!」
「ひろしズルいぞ。俺が先に言おうと思っていたのに!」
文句を言うたくみをよそに、ひろしが近づいてきて、細長い包みを渡してくれる。
「ゆいこ、あけてみて。気に入ってくれると嬉しいんだけど。」
中には星形のペンダントトップのネックレスが入っていた。
「ゆいこ、俺からも。」
と、小さい箱を渡してくる。包みをあけると、ハート形のチャームがついたブレスレットがあった。
「ほら、着けてやるから。」
ひろしは、箱からネックレスを取り出し、私の後ろに回り着けてくれる。たくみもブレスレットを左の手首に着けてくれる。
二人の距離の近さにどこを見ていいかわからず、ふと包みに目がいく。あのショップのだった。昨日の思いが溢れて涙がこぼれてくる。たくみがすぐに気づく。
「どうした、ゆいこ?嬉し泣き、じゃないよな。」
「ううん。嬉し泣き…」
「違うだろ。ちゃんと言えよ。」
ひろしの強い口調に観念して、訳を話す。ひろしによると大学の友達で、プレゼント選びに悩んでいたところ、店を教えてもらったとのこと。
「彼女に言われたよ。案内はするけど、プレゼントは自分達で選びなさい。他の女に選ばれたプレゼントなんて嬉しくないからって。」
その言葉に、
(あー、やっぱり大人だ。敵わない。)
と思った。だけど、ひろしのあとにたくみが続けた言葉にドキっとする。
「俺もひろしも、ゆいこが一番大切だから、それだけは忘れんなよ。」
その瞬間、気持ちが吹っ切れて心に誓うのだった。
(私、勉強もおしゃれも頑張って、絶対二人の間にいるのがふさわしい女性になってみせる!)
トライアングルレッスン交流ができたら嬉しいです。
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なお、この作品の時系列は、
ゆいこのトライアングルレッスン放課後シリーズ
~いつまでも一緒にいたい雨上がり(ゆいこの視点)~
~君のこと独占したい雨上がり(たくみの視点)~
~恋と友情のはざまに揺れる雨上がり(ひろしの視点)~
と
ゆいこのトライアングルレッスンH~観覧車でダブルサイドハグ!?~
の間に位置する物語です。
よかったら、そちらもお立ち寄りくださいませ。