鳴くぜウグイス、グンマ京
これから『第八次』のプロジェクトを進めていく上で、どうしても確認しておきたいことがある。
県知事は別の資料を調べ始めた。グンマの歴史に関する資料だ。これらの中には、一般に公開されていない「貴重な文献」も含まれている。
グンマの歴史は古い。県内には多数の古墳が存在している。
昔から、馬の産地として有名だったようで、奈良時代の木簡に、そう書いてあるとか、いないとか。
その当時、もしもグンマが数多くの騎馬隊を編制し、本気で全国統一に乗り出していたなら・・・・・・。
馬は優秀な戦力だ。その保有数の多さは、戦場において優位を築く。チンギスハンのモンゴル帝国は、それで他国を圧倒した。
現在のモンゴルは海を所有していないが、グンマもそうなっていたとは限らない。今頃は日本海と太平洋を、両方とも手にしていたかも・・・・・・。
県知事は想像してみる。
グンマが全国統一を成し遂げていたら、日本の歴史は大きく変わっていただろう。
鳴くぜウグイス、グンマ京。
鎌倉幕府も金閣寺も大阪城もみんな、たぶんグンマにあったはず。
で、三三二メートルの『グンマタワー』に、六三三メートルの『グンマツリー』。それぞれ一メートルずつ低くしているのは、オリジナルへの敬意である。
さらに、「もしも古墳時代よりも前に、全国統一に乗り出していたなら・・・・・・」と想像してみる。
ひょっとすると、「邪馬台国はグンマにあった!」、そんなことになっていたかも・・・・・・。
だが、現実として、今のグンマに海はない。
今も昔も、グンマ県民は人が良すぎるのだろう。全国統一には動かなかった。それで海を取り逃した。
歴史の資料をめくりながら、県知事は考え込む。
(『第七次』の時に重なった不運、あれは本当に偶然だったのか?)
先代の県知事が進めていた、【第七次『グンマ県に本気で海を』プロジェクト】。
呪われているかのごとく、数々の不運に見舞われた。
(もしもグンマが何かの呪いにかかっていて、そのせいで海がないのだとしたら・・・・・・)
それを取り除いておかなければ、『第八次』も同じ結末にたどり着くだろう。プロジェクトは失敗する。
だから、先に確認しておきたい。そんな呪いが存在するのかどうか。
しかし、これといったものは、今のところ見つからない。
(考えすぎか?)
そのあとすぐに、ある資料で指を止める。
(ひょっとして、これか?)
茂林寺の『分福茶釜』伝説。