私が付いた嘘は正しかったのか?
中編?小説を書いてるんですけど、息詰まったので気分転換に短編を書いてみました。
下手くそですが良ければ最後まで見ていってください。
「お父さんはまだ帰ってこないの?」
雅也のその言葉を聞く度私の心は揺らぐ。必死に顔に出さないように私は「遠い場所に行ったから帰ってくるのはまだ先だよ」と誤魔化す。
真実を雅也に教えてしまえば、私はこの苦しみから開放されるのかもしれない。それは自分でも分かっている。
たけど、大人の私でもその真実に未だに受け止めれない。それなのに、8歳の小さな子供にこの真実を伝えれば心が壊れてしまうのでは無いかと、私は怯えてた。
何度も考えたが、結局いつも同じ答えだ。大きくなるまで嘘を突き通そう。そう、いつも心に誓うが、雅也に父親につてい尋ねられる度、心が揺らぐ。私は今日も必死に作った笑顔で心配をかけまいと真実を濁す。
夫が亡くなってから2年がたった。ここ最近雅也から父親の事に付いて聞いてくることはない。雅也は何かに気付いたのではないかと、怯えていた。それでも、私は今日も笑顔で雅也に話しかける。
お父さんがいなくなって2年、僕は母が言う「お父さんは遠くに行っているから」は嘘なんじゃないかと薄々気付いていた。
最初の1年は、遠くの場所に居て忙しいから家に帰ってこないのだと、考えていた。だけど、僕が見ている限りではお父さんから1度も連絡が無い。お父さんはそんな非情な人ではない。
お父さんは何時も僕を可愛がってくれた。テストで良い点を取ると、頭をクシャクシャに撫でてくれるし、僕が間違った事をすると、顔を赤くして怒ってくれる。そんな自慢のお父さんだ。そんな人が僕に何も言わずに遠くに行くはずがない。
お母さんは何かを知っているはずだ。だけどお父さんの事に付いては何も教えてくれない。何で本当の事を教えてくれないのかと、僕は考えた。
最初に考えたのは離婚だ。だけどその考えは直ぐに捨てた。お父さんとお母さんの仲は、とても親密だった。いつも2人とも笑顔を絶やさなかった。そんな2人が離婚するはずがない。なら、何なのか。僕は色々考えた結果、1つの答えを出した。
もうこの世にお父さんはいないんじゃないかと。考えたくない答えだった。もしそうなら、僕に隠すのもわかる。違うかも知れないが1、度そう思い込んでしまうと、本当にお父さんは死んでしまったんじゃないかと、考えてしまう。
僕は不安と悲しみに押し潰され、涙が止めなく溢れ出した。
散々泣き腫らして少し落ち着いた僕は、台所で夕飯の準備をしているお母さんの元に向かった。
夕飯の支度をしている時、雅也に声を掛けられた。震えた声で喋っていたので何かあったのかと振り向くと、そこには目を腫らしている雅也が立っていた。
私は固まってしまう。そして頭の中でぐるぐると真実についての事が過ぎっていく。少しの沈黙の後、雅也は口を開いた。
「お母さんお父さんはもう……」
雅也の消えかかった悲しい声は、私の心臓を凍らせた。それでも私は踏み出して、雅也をそっと抱きしめる。雅也の悲痛の叫び声がリビングに響き渡った。
雅也が落ち着きを取り戻した後、私は真実を伝えることにした。椅子に座り雅也と向き合い父親の事に付いて話していく。
悲しげな声でお母さんから語られる真実に、僕は理解が追い付かなかった。いや、信じたくなかったのかもしれない。もう会えないその事がずっと頭の中で回った。
真実を知った日から1週間後、僕は母に連れられ、お父さんが眠る墓に来ていた。墓の石にはお父さんの名前が刻まれていた。
「お父さん……まだ一緒に過ごしたかった」
僕は墓に問いかける。けど、返事は帰ってこない。帰ってくるはずはないのに僕は何度も問いかけた。
我慢しているはずの涙が、再び流れ出してくる。流れ出すともう僕には止められなかった。
そんな僕をお母さんは優しく抱きしめてくれる。お母さんの暖かい温もりが僕を落ち着かせてくれる。僕は服で涙を拭い、手を合わせた。
私は父親との最後の別れを奪ってしまった。私の身勝手な判断で、息子に真実を隠した。それで良かったのか、悪かったのか、私には分からない。今でも悩み続けている。それでも私は今日も笑顔を絶やさず雅也に話しかける。
少し視点を切り替えすぎたかもしれないです……。
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