#6 フレンド
「助かりました。無駄な争いは避ける主義なのですが、あのように迫られて困っていたところでした。」
苦笑いを浮かべながらそう話しかけてきた男は、こちらに片手を伸ばしている。
「申し遅れました。私の名はZEROと申します。お名前をお聞きしても?」
こちらが握手を返すと爽やかに挨拶をくれたこの男とは、まだ友好的にできそうだ。
「俺はGG。災難だったな。ああいうヤツとは関わり合いにならない方がいい。」
皮肉っぽくそう言うと、ZEROもまったくだと同意を示していた。
「それはそうと、GGさんはソロトライブですか?もしよければ私と共に‥」
「申し訳ない。俺はどこかのトライブに加入する気はないんだ。せっかく誘ってくれたのに悪いな‥。」
断ると知っていて誘ったようだ。俺の即答に驚く様子もなく、切り返してきた。
「では今回のことは1つ借りと致しましょう。いずれお返しさせて頂きます。」
「いや、俺がなにかしたわけじゃない。仲裁するつもりだったわけでもない。礼など貰う理由はない。」
「GGさんが来たことで彼の気が変わったことは事実です。たとえそれが偶然だとしても、です。現状、ここでの揉め事は私にとっては大きな不利益です。それを回避できたのですから、いずれまた、ということでお願いします。」
理由になっているのかなっていないのかわからないような理論で誤魔化されている気がするが、これ以上断る方がむしろ失礼だろう。
「わかった。トライブの誘い、断って悪かったな。なにかあったら言ってくれ。手を貸すくらいのことはできる。」
「このゲームにおいて拳(手)を借りるようなことはないと思いますが、頭数が必要になることもあるでしょう。その際はぜひ。」
再度握手を交わし、フレンド登録をする。
離れていてもメッセージのやりとりをしたり、任意のメンバーでVCもできるようになる。
予定が詰まっているというZEROはここで引き返すことにしたらしい。
またいずれ。という言葉を残し、あっさりと去っていった。