#5 出会い
数分の思考の末、この後の行動は決まった。
狩りに出よう。
このゲームの序盤での重要アイテムは皮だ。
まず皮が枯渇する上に、狩りでしか手に入らない。
帽子と一緒に、石の斧と石のピッケルもクラフトした。
10個あるスロットにセットしておくことで、インベントリを開かずに道具の持ち替えやアイテムの使用ができるため、忘れずセットしておく。
最初の獲物に相応しい "アイツ" は海岸沿いに必ずいる。この立地なら間違いなく。
海岸沿いを歩いて探すとまず居たのはトリケラトプスだった。
こいつはダメだ。
徒歩のサバイバーが斧やピッケルで勝てる相手じゃない。
幸い、こちらから仕掛けなければ温厚だ、スルーしよう。
そのまま歩くと、聞きなれた鳥の声が聞こえてきた。
この声の主こそ、俺が探していた獲物。
『ドードー』だ。
非力なサバイバーでもたやすく仕留められるほどに体力が低く、反撃もせず、逃げ足も遅い。
皮を得るために斧で襲いかかる。
数発殴ると生き絶え、ぐにゃっとその場に横たわった。
そのまま斧で殴ると姿が消え、皮と生肉を入手の表示が出る。
1匹いたら数匹いると思え。とはドードーのことだ。
そのまま鳴き声を頼りに周囲のドードーを狩り尽くした。
初動で必要な皮は手に入ったしそろそろ帰ろうかと思った頃、遠くでなにやら言い争いの声が聞こえてきた。
他のサバイバーか?
クリアするためには協力は必須。早い段階で顔見知りを作っておくのは有利に働く。しかしPvP仕様でもある為、不用意に近づくのはリスクもあるが‥。
数秒の迷いはあったが、様子を見に行ってみることにした。
奪われて困るような貴重品は持っていない。
まずは他のサバイバーの顔と性格を覚えておくことが必要だと判断した。
近づくにつれ、会話の内容が明確になってきた。
「ここは俺のシマだって言ってんだよ!とっととウセやがれ!」
「資源は平等に分け合わねばなりません。採取権を主張できるわけありませんよ。」
ガタイのいい男と、細身の男が言い争っている。
先に狩りをしていた場所に、別のサバイバーがやってきたことでモメているようだ。
このままでは口では済まない争いになりかねないな、と思って眺めているとガタイのいい方の男と目が合ってしまった。
「おいテメェなに見てやがるんだ。俺に何か文句でもあるってのか?チビ野郎!」
めんどくさい。
今度はこっちににじり寄って来る。
拳が届くような距離まで詰めてきた男に返答する。
「いや、声が聞こえたから来てみただけだ。すまない。殴り合いをする気は無いんだ。」
本当に殴り合いをする気はない。これはそういうゲームではないのだ。
「チッ、根性のねぇチビだな。失せやがれ!」
こちらを見下すような態度で、物理的にも見下ろした位置からパンチを1発。
少しダメージを食らったが、なんてことはない。
「気が削がれた。もういい。ここらは粗方狩り尽くした。リポップまで時間がかかるだろうよ。精々待つがいい!俺はGold。次会った時は容赦しねぇ。テメェらその面見せんじゃねぇぞ!」
馬鹿でかい声で宣言して去っていった。
嵐のようなヤツだったな。あれはダメだ。とてもじゃないが友好的な関係を築ける気がしない。
Goldには近づかないようにしておこう。と心に決めていると、細身の男が近づいてきた。