#4 スタートダッシュ
リスポーンを選択すると、視界が一気にしろくなった。
それと同時に瞼の開く感覚がやってくる。
打ち寄せる波の音と、風になびく木の葉のざわめきが聞こえた。
足元は浜辺で周囲は海、ぐるっと囲まれてはいるが遠くで対岸と繋がってはいる。
景色からするに、一番基本的なマップであるスモールアイランドのようだ。
しかも初期リスポーンの中でも一番ベターな位置。メリットは強力な外敵がいないこと、デメリットは資源が少ないことだ。
最初の最初は、贅沢な資源よりも安全な確保と生活基盤の構築。悪くはない立地である。
まずはエングラムを確認する。うん、本編と全く同じだ。よし。
まずは基本資材を集めなければ始まらない。
感動もそこそこに木に駆け寄り殴る。
「ん?」
違和感を感じて、手を見つめる。握って開いてみるが、変化はない。
再度、木を殴ってみるとまた違和感があった。
ほんのすこしだけ痛みを感じたような感覚。
まさか、ダメージを受けると痛みがある、ということなのだろうか。かなり軽減されていて、木を殴って受ける微量なダメージでは、気づくか気づかないほどでしかないが、たいしたものだ。
これが今後どう影響するか、考えておくは必要はありそうだな。
そうして殴って木材と藁を採取する。
視界の端に入手したアイテム名と数が表示されていることを確認し、必要量に達したので場所を変える。
海岸に落ちた石を拾い、草をむしって各種ベリーと繊維を手に入れた。
ある程度の採取行動によって経験値を得ることが出来た為、レベルを上げることができるようになったようだ。
感覚的にそうわかる。左手首に埋め込まれた宝石に触ってメニュー画面を表示させる。
操作方法などは、元から知っていたかのように頭に入っていた。
採取量やテイムなどは本編より倍率がかかっているとは聞いていたが、実際かなりの違いがある。
素手で集めたにも関わらず、なかなか大量に集めることが出来た。
経験値倍率がないのが惜しいところだが、経験でカバーするほかないか。
貯まったレベルポイントを使い、スタートダッシュのために必要なレベル3まで上げる。
そして解放できるエングラムのひとつが『布の帽子』だ。
繊維10で経験値3。
つぎの経験値稼ぎに必要なレベル7まではあと100だ。34個の帽子に必要な繊維340は手元にある。
インベントリを開き、帽子34個のクラフトを始めた。
制作中は移動速度が遅くなる。
完了まで数分あるし、この後の動きでも思案するとしよう。