#2 思惑
「どうぞ、こちらへ。」
柔らかい笑顔から一転、真剣な眼差しをこちらへと向け、柳は歩き出した。
等間隔で並んだ機器の間をズンズン進んでいく。
途中に1台、遠くにも数台、すでに稼働しているであろうものも見てとれた。
急な呼び出しからまだ2時間も経っていないというのに、暇な人達もいたもんだ、と盛大なブーメランにも気付かず考える。
少し歩くと目的の場所に着いたようで、柳は振り返って言った。
「下着姿で横になってください。衣類とお荷物はお預かり致します。」
言われるがまま服を脱ぐのを確認すると、さらに続ける。
「こちらの中では、GG様の心拍数、血圧、血中の酸素濃度、脳波、あらゆる観点からモニターされます。専門の医療スタッフによって、健康状態を常時監視しておりますので、ご安心ください。」
医療については無知だ。それでもとにかく多機能で、安全面にかなり考慮してあるということはわかる。だが逆に、そうする必要があるということが少しの不安でもあるのだが。
言われた通り下着姿で横になったことを確認すると、GGの指先や体に様々な器具をつけながら柳は言った。
「本編ではチュートリアルも説明も特にはありませんでした。今回もそれにならい、手探りの状態から始めて頂きます。」
柳の真剣な眼差しが、さらに光りを強めた。
「お伝えできるのは、このゲームモードの趣旨です。環境はPvP。さらにボス戦クリアタイムを競って頂きます。勝者には賞金を。GG様なら、この意味をおわかりですね?」
わからないほど浅くない。
「ただのタイムアタックじゃない。そういうことですね。」
敵を倒すだけじゃない、ボスを目指すだけでもない。タイムアタックに賞金。それだけわかれば充分だった。勝つための最善の方法はある程度浮かんだ。あとはやるのみだ。
「では、ご検討をお祈りしております。」
その言葉と共に、機器が作動し、GGの体がゆっくりと吸い込まれていく。
完全に入り込んだあと、入り口の蓋が閉じ、視界が完全に真っ暗になった。