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4話 爬虫類違いにもほどがある

 ギルドでひと悶着あった後、エレノアの案内でクエスト現場である火山付近まで足を運んでいた。


  「あの、エレノアさん、ここまで来たのはいいけどそろそろ討伐対象が何か教えてくれてもいい

  んじゃないかなぁと....」


 そう、俺はここまで来たのはいいもののまだ何を討伐するかを教えておらってないため気が気ではなかった。


  「え? 何って、ヴォルカニックリザードの討伐に決まってるじゃないの。あたしちゃんと教え

  たわよね?」


 うん、一回ぶん殴ろうかなこの娘。初耳です初耳。

 毎度お馴染み、エレノアちゃんの『あれ、いってなかったっけ?』劇場に頭を抱える。

 もうヤダこの子。なんでこの子とパーティ組んでるんだ俺....


 それにしても今回のクエストでは火山トカゲを狩るらしいが.... 実際にあったことがないからどういう対応をしていいか分かんないな。

 今わかっているのはトカゲは多分火属性で体格も大きいのだろう、ということだけ。

 エレノアが受けてきたということはBかCランクのクエストなんだろう。だとしたら中々強いんじゃないだろうか。


 そう考えながら岩場を歩いていると突然、耳をつんざくような鳴き声が辺りに響いた。


  「アイリス、来るわよ。しっかり構えていなさいよ」

 

 彼女に言われて身構えるが、辺りにそれらしき姿は無かった。

 現在俺達がいるのは火山のふもとで、岩がごろごろしている以外視界を遮るものが無いため、あれだけの鳴き声がしたなら姿が見えていないとおかしいんだが....


  「なあ、全然姿が見えないけど何処にいるんだ? もしかして地面の中から飛び出してくる感じ

  のやつなの?」


  「はぁ!? 馬鹿じゃないの、上見なさい!! もう迫ってきてるわよ!?」


  「は? 上? 何言ってんだよ、空にトカゲなんていn....」


 この子は何を言ってんだか、と呆れながら空に視線を移すと確かに何かがすごい勢いで迫ってきていたのだが....


  「バッカヤロウ、あれのどこがトカゲなんだよ!? 爬虫類違いにもほどがあるだろっ!?」


 俺達に迫ってきていたのはトカゲなんて可愛いものじゃなく、ドラゴンそのものだった。

 

 トカゲを討伐しに来たらドラゴンでした、なんて同じ爬虫類にしても雲泥の差だろ。そもそもドラゴンが爬虫類なのかは怪しいがそんなこと気にせず俺は叫んでいた。


  「リザードってのはトカゲのことなんだよ!! ありゃどう考えたってドラゴンだろ!? 何がヴォ

  ルカニックリザードだ、ヴォルカニックドラゴンの間違えじゃねーか!!」


  「ごちゃごちゃうるさいわね!? ドラゴンって何のことよ!? どっからどう見ても羽の生えたト

  カゲじゃない!!」


  「それをドラゴンっていうんだよ、この馬鹿ちんがっ!!!!」


 そんなやり取りをしていると、羽の生えたトカゲは口から黒煙を吐き出した。

 

  「俺の居た世界の街中でアンケート取ってこい!! 100人中100人がこいつのことをトカゲ

  じゃなくてドラゴンだ、っていうからな!?」


 文句をたれながら俺とエレノアはすんでのところで黒煙を回避した。

 黒煙に当てられた場所は、地面がえぐれて溶けていてグツグツと音を立てていた。

 あの威力からして恐らく当たったら骨すら残らないんだろう。


  「中々やるじゃない、でもいい気になれるのはそこまでよ。なんたってウチにはアイリスがいる

  んだから。アイリス、あんな奴あんたのインチキで捻りつぶしてあげなさい!!」


  「お前ホントにいい加減にしろよ!? え、何、最初から全部俺任せだったの!? ふざけんな後で

  絶対ぶん殴ってやっからな!?」


 なに『君に決めた!』みたいなこと言ってんのこの人。あなたはなんちゃらマスター目指している少年ですか? じゃあ俺は相棒の電気ネズミか何かってことですか?

 もうヤダ、無茶振りにもほどがある。


 冗談はさて置くとして、現状は好ましくない。

 俺が相手にするとしても相手は上空を飛び回っているため、肉体強化をかけたところで届かない。

 あれ、これ結構やばい状況じゃね? 


 そうしている間にも黒煙は吐かれ続け、刻一刻と追い詰められていた。

 ピンポイントで放ってくるせいか避けるので精いっぱいであり、とても反撃ができる状況ではない。反撃しようにもあいつのところまで届くすべがない。


 焦りつつ打開策を考えていると、ふと使える魔法が増えていることに気が付いた。

 この世界で魔法を使おうとすると頭の中に現在自分が習得している魔法の名前が浮かんでくるのだが、その中に一つ知らない呪文が加わっていた。

 

  「超重力? スーパーグラビティ、って読むのかこれ? にしてもこれはデバフ?」


 意識を集中させていくとその呪文の効果が鮮明に分かってきた。

 どうやらこれは相手に重力負荷をかけることで素早さを下げる魔法らしい。ということは俺が初めて使えるデバフということになる。

 

 恐らくはあのゴリラを倒したときにレベルアップかなんかして覚えたのだろう

 しかし、ただ素早さをさげたところでなぁ.... ん?重力?


  「まあ、物は試しだ。えーと、超重力、ブースト10!」


 そう言い俺は羽の生えたトカゲに向かってデバフをかけた。それも10回ブーストさせて。


 次の瞬間、それまで空を飛んでいたトカゲは何者かに押さえつけられるようにして地面に落ちてきた。最初のうちは抵抗しようと暴れていたが、そのうち地面にピッタリくっついて身動きが取れなくなったようだった。


  「流石アイリスね! Aクラスのモンスターを一撃で倒しただけはあるわ! それにしてもこれ

  なんてモンスターなのかしら?」


  「え? こいつがヴォルカニックリザードだろ?」

 

  「違うにきまってるじゃない。ヴォルカニックリザードはもっと小柄で、それに羽なんて生えて

  ないわよ?」


 あれ、どうなっているんだろう。こいつは目当てのモンスターじゃない? じゃあ一体全体どちら様ですかね?


  『あの、お取込み中申し訳ないのですが.... わたくしの負けを認めますのでそろそろ解放して

  もらってもよろしいでしょうか?』


 地面に突っ伏しているドラゴンがいきなりしゃべり始めた。

 

 目の前の信じられない光景に俺もアイリスも目を丸くしお互いに見つめ合う。


  「ど、どういうこと!? 話すトカゲなんて見たことも聞いたこともないんだけど!?」


  『流石にトカゲと一緒にされるのはちょっと.... わたくしは真なる竜ですわ』


  「とぅるーどらごん? 何それ、どう見てもトカゲでしょ?」


  「エレノアごめんね、ちょっと引っ込んでようか」


 話が進まないので無理やりエレノアを引っ込める。

 それにしても良かった。この世界ではドラゴンのことをトカゲって言ってるもんだと思ったけど、あれは単にエレノアが知らなかっただけか。


  「えと、開放するにしても聞きたいことがあるんだけども....」


  『何なりとお聞きくださいご主人様』


 今何か変な単語が聞こえた気がしたが気のせいだろう。


  「もう敵対しないっていうなら開放してもいいんだけど、どうかな?」


  「何言ってんのよアイリス、そんなトカゲ開放すること無いわ。さっさとトドメをs」


  「エレノア、シャラップ!」


 割り込んで来た彼女を強引に黙らせる。

 戦意が無い相手の命を奪うなんてことはなるべくしたくないからね。


  『それに関しましてはご心配いりませんわ。わたくしはあなた様に敗れ、忠誠を誓った身。わた

  くしの身も心もご主人様のものですわ』


 ご主人様って誰のことなんだろうね。全く見当つかないや。


 とにかく敵対する様子はないようなので解放してあげることにした。

 デバフを解くとドラゴンは体を起こし、パタパタと体を動かした。


  「そういえば俺達はクエストであるモンスターを探しているんだけど、この辺で大き目なトカゲ

  とか見てないかな?」


 ここにはヴォルカニックリザードを討伐するためにやってきているため、もし討伐できずに帰ってしまうとクエスト失敗ということになてしまう。なのでダメもとで聞いてみた。


  『トカゲですか? そう言えばここをわたくしの縄張りにする前にはいた気がしますが....

  恐らく全て片付けてしまいましたわ』

 

 どうもこの火山地帯にはほかの生物の姿が見当たらないと思ったがそういうことだったのか。

 俺達が襲われたのも縄張りに入ってしまったためか。


 つまりはもうトカゲはいないためクエストを完了することが出来ない。失敗になってしまうがこればかりはどうしようもない。


  「ま、そういうことなら仕方がないし。エレノア、一旦ギルドに帰ろうか」


  「ちょ、待ちなさいよ? 本当にこいつ野放しにするわけ?」


  「だって相手も降参っていってるだろ? これ以上戦う意味がないだろ。まあギルドにはこの場

  所には近づかないように言っとけばとりあえずは平気だと思うよ」


  『それでしたら大丈夫ですよ。わたくしはご主人様に付いていくつもりですので、今後どなたが

  訪れようとなにも問題ございません』


  「だそうだ。何も問題ないじゃないか」


 ドラゴンは俺達について来るらしいので、もし仮に誰かがここに来てもさっきみたいに襲われることはない。万事解決だ。


  「んじゃさっさと帰ろう。なんか疲れたからな今日は」


 そう言い、俺達三人は街絵向かって歩き出した。

 

 ......................ん?


 三人? なんで三人? どうして俺はナチュラルにこのドラゴンを勘定に入れてるわけ?


 背後を振り返ると、巨大なドラゴンがドスドスと地響きを起こしながらついてきていた。


  「あー、真なる竜さんは本当に俺達についてくるつもりで....?」


  『はい、もちろんですご主人様! どこへ行こうと一生お供します!』


 その言葉を聞き、俺は静かに頭を抱えました。


 






登校時間がばらばらになってしまっていて申し訳ありません。

次回からなるべく投稿時間を統一していきたいと考えています。

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