3話 ギルドでひと悶着
俺が力加減をミスって彼女を吹き飛ばしてしまった後、心配になって駆け寄ったら壁に埋もれて気絶してしまっていた。明らかにやりすぎたなこりゃ。
幸い宿屋があったのは街の外れだったため、誰かに見られて騒ぎにならなくてよかった。
その後絵が覚めた彼女にさんざん文句言われました。いや本気でやれって言ったのそっちじゃん....
でもあれでも加減はしたんだけどなぁ.... てかあまり乱用するのも危険かもなこの力。
「ところで君の名前は? そういえばまだ聞いてなかったよね」
「あら、言ってなかったかしら? あたしはエレノア。言っとくけど次は負けないから」
教えてもらってないよ、名前同行以前にいきなりタイマン仕掛けて来たのはそっちじゃん、なんてことを口走りそうになったけど言ったら何されるか分からないんで飲み込みました。いや、力では勝てるかもしれないけどさ、迫力が怖いのよ。
次は負けないとか言ってたけどまた戦わなくちゃならんのか?
「それよりあんたこれからどうするの? とりあえず冒険者ギルドに向かうでいいの?」
「もともとそのつもりだったんだけど.... 色々あったんだよ、分かるだろ?」
元々ギルドに向かうつもりで森を彷徨っていたら命の危機に直面したわけで。
そもそもいきなり森の中放り出されるし、しかも女の子になってるしで何が何だか....
「あ、今俺女の子なんだっけ.... そんなこと意識してるひまなかったなぁ。普通に考えて今そ
うとうやばい状況だよな」
ふと視線を下に向け今の自分の姿を確認するが、明らかに男の物では無い細い腕、肌は白く指も長くて美しい。何よりも胸の二つの膨らみが男ではないことを物語っていた。
髪の毛はショートだったため、あまり違和感はなかった。にしても胸、デカいなぁ。詳しいカップ数とかはわからんけど.... Fくらいはあるんじゃないか?
「ってことは息子の方も消滅していると考えた方が.... うわぁ確認したくない....」
いやいやもし仮に息子だけ残られてもそれはそれで嫌だわ、うん。
え、じゃああれか? 俺は残りの人生は女として過ごして行かないといけないのか。
せめて童貞はすてたかったなぁ....
「ちょっと、ギルドに行くんでしょ? なにボーっとしてんのよ、さっさと行くわよ」
そんなことを考えていたら、エレノアはそう言いながら俺の顔を覗き込んできた。そういえばえ彼女のこと放置してたな。いいや女体化問題については後々考えよう。
「あーごめん自己の世界に潜り込んでた。そうだなじゃあギルドにいくk.... ってなんで付い
て来ることになってんの?」
「は? 何言ってんの当たり前じゃない。私たちパーティなんだから」
え、この人何言ってんだろう。いつそんなことになったんだよ。少なくとも俺は許可してn
「もしかしてあたしとじゃ嫌だとかいわないわよね?」
「何言ってんだそんなわけないだろ。俺達はパーティだ」
「そう? 分かってるならいいけど」
なんで俺はこのワガママ娘とパーティを組まなくちゃいけない状況になっているんだろう。
確かに助けてもらった恩はあるけど強引すぎないか? 嗚呼、女の子って怖い....
そんなこんなで無理やりパーティを組まされた俺は重い足取りでギルドへ向かうのだった。
◇
冒険者ギルドはよくアニメで出てくるような感じで、遠目から見てもあからさまに分かるような外観をした建物だった。
こうもあからさまだと余計緊張するというか何というか。
中に入るといかにもな冒険者達がたむろしていて、感動とワクワクいっぱいになりながらクエストボードの前まで足を運んだ。
まあ冒険者がギルドに来たらやることは一つだよね。お金も必要だし。
一応この世界のことを全然知らないから情報収集した方がいいんだけど.... でも先にクエスト受けてみたいじゃん?
「うーん、俺のランクだとあまりいいクエストが無いっぽいな」
Eランクで受けられるクエストは薬草収集などがほとんどで、モンスター討伐はDランクからだったために俺は受けられない。
「なんだったらあたしが受けてこようか? あたしのランクだったらそこそこのクエストは受け
られると思うけど」
「え、エレノアってそういえばランクいくつなの?」
「Bだけど? 言わなかった?」
いやいやお姉さん初耳ですよ、そういうことはパーティを組む以前に言ってもらわなくちゃ困るんですけど?
なんでこの子は重要なことをいつも後から言うんだろう、などと思いつつも表には出さない。
「はい、クエスト受けてきたから早速行きましょ」
終いには、俺が心の中で突っ込みを入れている間にエレノアは勝手にクエストを受けてきていた。
「ちょちょちょ、おま、勝手に....」
「何か文句ある?」
「いえ、なにもございません」
そんなやり取りをしながらギルドを立ち去ろうとしたとき、ガラの悪そうな冒険者三人組がいやらしい目つきをしながら俺たちに絡んで来た。
「おいおい嬢ちゃんたちもしかして二人か? 幾ら何でも女二人のパーティなんて不用心すぎる
ぜ。俺達と組もうぜ? 大丈夫、守ってやっからさ」
そう言いながら一人が俺の腰に手を回してきた。うわっさすがにこれは引くなぁ....
今は女の体だし少なからずこういうことはあるのだろうと覚悟はしていたものの、実際にやられると想像以上に気持ちが悪い。生理的に受け付けないというのはこういうことなんだろう。
なんて思っていたらエレノアがすごい剣幕で俺にセクハラをしている男を投げ飛ばした。
「あんたなにあたしのアイリスに気安く触ってるわけ? あたしの剣でその汚い手を切り飛ばし
てあげましょうか?」
俺は何時あなたのものになったんですか。そういう関係じゃないし、出会って間もないよね? なんていう度胸はなくただその現場を眺めていた。咄嗟にそういう言葉が出ただけだよね?
「この女ふざけやがって! だったら力ずくでいうこと聞かせてやるよ」
なんてベタなことを言い出し、エレノアに掴みかかってきた三下三人組。
まあ彼女ならさっきのように軽くあしらうだろうと思っていたのだが....
「きゃっ、ちょ、ちょっと、やめっ」
想像とは裏腹に簡単に腕をつかまれてしまい、身動きが取れなくなってしまっていた。
ど、どういうことだ? あっきの俺の時はあんなに簡単に投げ飛ばしてたのに....
もしかして自分がやられるのは弱いのか? これは新しい発見.... おっと、いけないいけない。
困っているエレノアを放っておくほど俺もクズではない。俺は自身にそっと肉体強化を三重で施した後――
掴みかかってきた男の腕を捻り上げた。
「いでででででで!!!! な、なんだこいつの力!? う、腕がぁぁぁぁ!!!!」
「あの、そろそろいいですか? おr.... 私達クエストに向かいたいんでどいてもらえるとあ
りがたいんですが。さもないと腕折っちゃいますよ?」
腕を掴まれていない二人はその様子を見て青ざめていた。俺が冗談で言っているわけでは無いことが伝わったのだろう。
「わ、悪かった!!!! 俺たちが悪かったから、頼むから放してくれ!!!!」
涙目になりながら締め上げられてる男は言った。
全くなんなんだこのベタなくだりは。せっかくだしここはベタな言葉で終わりにするか。
「次は無いですからね? 次同じことがあれば今度は本当にこの腕へし折りますよ?」
そう言い男を開放する。
その瞬間三人は我先にとギルドを飛び出していった。
やりすぎないように三重くらいにしたけど、ちょうどいい力加減だったみたいでよかった。にしても、やだなぁ変に目立っちゃったじゃん。気まずい雰囲気になっちゃってるし。
ため息をつき、ふとエレノアの方を見ると彼女はうっすら赤くなった顔でこちらを見ていた。
「エレノア? 顔赤いけど、どうかしたの? それより腕大丈夫だった?」
「な、な、なんでもにゃいわよ!! だ、大丈夫だから、あんまりジロジロ見ないでくれる!?」
と言っていきなり背中を思いっきり叩かれた。
え、なんで俺おこられたん? 俺一応あなたのこと庇ったんですけども。何か癇に障ることでも行ったのだろうか。わっかんねぇ....
それ以来あまり口をきいてくれなくなったエレノアに不信感を抱きつつ、俺達はクエストへと向かうのであった。
またまた短めでごめんなさい....
段々と文字数を増やしていこうと考えていますのでご了承ください。
次回はもう少し長めに出来たらいいなぁ....