2話 異世界の女の子って怖いね
ゴリラとタイマンしてMP切れでぶっ倒れた俺は、目を覚ますとベッドの上で寝かされていた。
「確かあの後あそこでたおれて.... てかなんでベッドで寝てるんだ? そもそもここどこだ?」
体を起こして辺りを見回した。
俺が寝かされていた場所はいかにも古びた宿屋ですといった部屋の中だった。
一体だれがここまで運んだんだと疑問に思っていると、部屋の戸をコンコンとノックする音が聞こえた。
「はいどうぞー」
「あら、やっと目が覚めたのね。ケガ人よりも寝てるってどんな神経しているのかしら」
そう悪態をつきながら部屋に入ってきたのはあの時の蒼髪の少女だった。
「ということは君がここまで俺を運んでくれたわけか。っというかよくあの怪我でここまで人ひ
とりを運んでこれたな.... 体は大丈夫なのか?」
「ええ、おかげさまで。あなたの回復魔法のおかげであの場で大抵の傷は癒えていたわ。だから
といって直前まで瀕死だったあたしに宿屋まで運ばせるなんて.... あんた何様のつもり?」
彼女は不機嫌そうに言った。正直苦手なタイプだ....
「それにしても、あんた女の子なのに今自分のこと俺って言わなかった? まあいいわ、あんた
に聞きたいことがあるんだけど」
一人称のことを指摘され、一瞬ビクっとする。聞きたいことって何? まさかあなた実は男なんじゃないの、とか聞かれないよね? 聞かれた場合どうする?
などと心配していたが、彼女の聞きたかったことはもっと別のことだった。
「あんたあのマキシマムコングを一撃で倒してたけど.... あれはどういうこと? Aクラスモ
ンスターを一撃で倒せる奴なんて見たことないけど。確かにあいつはAクラスでは弱い方だけど
それにしても異常だわ」
え、あのゴリラそんな小学生が考えたみたいな名前なの? てかあれで弱い方? どういうことですか、先生詳しく教えてください。
「ちょっと、あたしが質問してるのに無視? 喧嘩売ってんの?」
その声で現実に引き戻される。うわぁ、凄いにらんでくる。怖いなぁ....
「えっと、俺にもよく分かってないんだけど.... とりあえず自分にバフを最大でかけたらなん
か勝てちゃったというか何というか....」
実際自分でもよく分かってないから聞かれても困るんだよな、と思いつつも答えないと殴られそうな雰囲気なので答える。異世界の女の子っておっかないね。
「バフを最大でかけた? はぁ? 適当なこと言ってんじゃないわよ! 同じ系統の補助魔法は
一回しか掛からないってのは常識でしょ? あんた馬鹿にしてる!?」
正直に答えたらなんか滅茶苦茶キレられたんだけど。同じ系統の補助魔法は一回しか掛からない? 何言ってんだ確かにあの時重ね掛けできたぞ。そのせいでMP切れて倒れたんだし。
「いやいや俺は嘘はついてないぞ? そもそも一回しか掛かってなかったらMP使い切って倒れる
訳ないだろ?」
もし同じ系統の補助魔法が一回しか掛からないとして、あの時の俺は全部の魔法を一回ずつ使った訳だが.... それでなくなる量のMPしか持ってないとかだったら流石に泣くよ?
「どう考えてもあんたが嘘をついてるようにしか思えないんだけど。そうだあんた冒険者? も
しそうなら冒険者カード見せなさいよ。それで何か分かるかもしれないわ」
そう言われてそんなカードあったな、と思い出した俺は彼女に自分のカードを差し出した。
「へえ、あんたアイリスって名前なのね。いっちょ前に可愛い名前しちゃってムカつく」
あなたはいちいち悪態をつかないと生きていられないのですか? と心の中で思ったが、口に出さないでおこう。だってこの子怖いんだもん。
するとカードを見ていた彼女が驚きの声を上げた。
「あんたEランクなのにあいつを一撃で? しかもステータスもほとんど初心者じゃない。ただ
なによこのスキル.... 補助魔法重複化? こんなスキルありえないわ。ということはさっきま
での話は本当に? あんた何者? バケモノにもほどがあるわ....」
おい、人のことをバケモノって言うんじゃないよ。
何、スキルが異常? というとこれは俺TUEEEってこと?
「よく分かってないんだけど、俺のスキルってどれくらい強いの?」
正直比較対象とか無いからどのくらいの強さだとか分かんないのよね。
「強いなんてもんじゃないわ、最強と言ってもいいくらいよ。そもそもこれが事実なら補助魔法
掛けまくることでどこまでも強くなれるってことじゃない。狂ってるわ」
その言葉を聞いて俺はもう何も考えないことにしました。
◇
暫くして宿屋を後にした俺達は何故かタイマンすることになりました なんで?
彼女曰く、
「あんたのスキルが本当ならあたしにも勝てるはずよね? まあそんなことありえないけど」
ですって。嫌ですね最近の若い子は。血の気が多いったらありゃしない。
そんなこんなで手合わせしなくちゃならない訳だけど....
えと、バフは掛けていいんだよね? じゃないと勝てないもんね?
「なにボーっとしてるのよ、始めるわよ? よーいドンッ!!」
いきなり開始のゴングが鳴り、ものすごい勢いで迫ってきた。
「うおっ早!! 待て待て! 危なっ! ちょ、話を....」
目にも止まらない速さで迫ってきた彼女は、俺に向かって遠慮なしに大剣を振るってきた。
もはやそれを避けるので精いっぱいで反撃どころじゃない。
「ほらほら何してんの。避けてるだけじゃ死ぬわよ?」
いやわかってるけども、理不尽すぎないか?
バフ掛けるにしても掛け過ぎて殺してしまうのは不味い。
あのゴリラの時は結局どんだけ重ね掛けしたんだ?
とりあえず俺のパワー的に考えて10回くらいにしとこうかな。
「えーと、肉体強化ブースト10! これでいいのか?」
そう言い拳を構えた。
それに反応したのか彼女は大剣でガードの姿勢をとった。
「んじゃ遠慮なく行きますよ?」
俺はガード姿勢をとっている彼女の大剣を思いっきりぶん殴った。
次の瞬間―― 彼女は遥か彼方へ飛ばされていった。
何が言いたいかっていうと....
やりすぎちゃった。てへぺろ♪
1話を投稿ししたばかりですが、想定していたよりも早く仕上がったので連続投稿です。
数日お休みしてしまったのでこれでチャラってことで....
3話に関しましては早ければ明日に、まあ保険をかけて明後日くらいには投稿出来たらなと。
曖昧で申し訳ないです....
ぜひ次回もよろしくお願いします。