005 突然異世界
眩い光に包まれて、目を閉じる。
パチパチパチパチ
暫くすると拍手する音が耳に入ってきた。
その聞きなれない音に目を開ける。
するとそこには俺を囲むように人々が沢山いた。
「は?」
そう言葉が出ると共に体が痛み出す。
腹を抱えて蹲って呻く。
目の前に柔らかい真っ赤なカーペットがあった。
「怪我をしているぞ。回復魔法を!」
そう低い声が聞こえて、誰かが近くに寄ってくる。
身体を仰向けにされて、痛みで体を動かそうとする俺の身体を他の人に押し付けられた。
誰かが俺の横に座って、腹の少し上に両手を置く。
「彼の者を癒せ、ハレイン。」
男がそう呟くと、手の当たりに何かが出てきてそれが俺を纏った。
するとすぐに体の痛みが引いた。
目の前も赤から変わって、様々な色が溢れてきた。
「大丈夫ですか?」
「はい。」
俺の傷を治してくれた男の人が微笑んで、俺の身体を起こしてくれた。
真っ赤だった世界は色に溢れている。
真っ白以外の色に、目を奪われる。
なんだこの色は、服は、髪の毛は。
驚きしかない。
どういうことだ。
俺はどこに来た。
「あ、左京は...」
「...誰ですか?その方は。」
「俺の傍にいませんでしたか!?おんなじ顔の!」
「す、すみません。私にはわかりません。」
眉を下げて申し訳なさそうに謝るその人。
その顔にそりゃそうだと、すみませんって謝った。
「その者、勇者殿は大丈夫なのか?」
「はい!王様、無事です。」
その男の人は誰かに声を返すと俺から離れて、人が溢れているところに行ってしまった。
「勇者殿の顔をよく見せろ。」
そう声が聞こえると、俺の周りにいた人たちが消えていった。
すると、ここが良く見えた。
煌びやかという言葉がここまで似合うものがあるのだろうか。
だだっ広い部屋に真っ赤なカーペットが敷いてある。
その先には赤と金の椅子に腰かけた、白髪のおじさんがいた。
なんだ、ここ。
天国?それとも普通の世界?
でも、何もしてないのに俺の傷が治った。
てことは俺たちがいたところとは違うはずだ。
「勇者殿、初めまして。私の名はハヌマス=マグノリア。ここマグノリア王国120代目の王だ。突然転生した無礼を許してほしい。」
ハヌマス=マグノリア?
マグノリア王国?
わからないことだらけだ。
でも、なんとなくわかる。
左京が作り話だと言って読んでいた本に、こういうのがあった。
ここは異世界、なのか?
俺たちが住んでいるところとは違う場所。
転生されたって事は、完全にこっちに来たのか。
「は、はあ。」
「勇者殿、名前を教えていただけないだろうか?」
「あ、はい。俺は右京。ただの右京です。死にかけていたので、助けていただいてありがとうございます。」
「右京か...ふむ。突然だが、右京殿、あなたに我らの世界を救って欲しいのです!」
「は?はあ?!」
目の前のハヌマスと名乗ったおじさんはそう言って、俺に頭を下げた。