002 16歳の誕生日
今日は誕生日、らしい。
毎年、ドクターからそう言われる。
お前らが生まれた日だ、好きなものを一つやる、と。
俺はご飯を、左京は本を強請っていた。
毎年の事だ。
だからドクターも予想していたのだろう、左京にリボンで舗装された白い本を。
俺には昼食の時に、豪華な食事が運ばれてきた。
「これさあ、嫌がらせだよな。」
「えー、そんなこと言うなら左京もご飯にすればいいじゃん。」
「いや、俺は本が欲しいし。でもさ、こんな嫌がらせみたいに同時に持ってこなくていいじゃん。右京だけ別部屋で食うとかさ。」
並んでご飯を食べる俺たち。
俺の前にはチキンに魚に色々並んでいるのに対し、左京の前にはいつも通りの質素な食事が置いてある。
いじめだよって言いながら左京は食事を突いた。
「隙あり!」
チキンを食べていると、隣で左京がそう叫んで肉を奪取した。
「あ!おい!」
「ふあー。」
ガブッと肉に齧りつき、うまーとかふざけたことを言う。
「俺の肉!」
「油断する方が悪いんだよ~。」
ケラケラ笑ってそう言うから、一発鉄拳をお見舞いした。
「っでえ!!!はあ!?めちゃくちゃ痛てえんだけど!?」
「うるせえ!俺の飯食った罰だ!」
頭を押さえてキャンキャン叫ぶ左京。
それを無視して、痛みに離した肉を食う。
「あー、俺の肉!」
「ちげえ、俺の肉だ!お前はそれでも食ってろ!」
左京はチェーとか言いながら、質素なご飯をちびちび食べ始めた。
「俺、昨日頭切開されたのに、殴るなんてひでえ。」
「は?肉食うのが悪いんだろ。」
そう言い捨てると、こわーと言う。
「楽しそうだな。」
いきなり後ろから声が聞こえた。
その聞き覚えのある声に二人で一緒に振り向く。
「ドクター!」「...ドクター。」
「やあ。食事中に悪いが今日は二人で新薬の実験だ。」
「は~い。」「はい。」
「それを食べて1時間したら実験室にくるように。」
「了解しました。」
左京はそれだけ言うと、ご飯を食べるのに集中し始めた。
俺はドクターに近づいて、はいっと頷く。
するとドクターは頭を撫でてくれる。
それが欲しくて近づいて行ったんだ。
それに笑って、俺もご飯を食べるのを再開した。
ドクターが出て行ってから左京が口を開く。
「なあ、今日のはどうだろうな。」
「痛いんじゃない?新薬いっつもきついし。」
「そうだよなあ。今回は休憩二日とか取ってくれればいいのに。」
「無理でしょ。その二日実験して誰かの命助けないといけないんだから。」
「…そーだな。」
左京はそう言った以降何もしゃべらず、ただ黙々と飯を食べてその後の待機時間はただただ本を読んでいた。
何が面白いのか知らないが、俺はその横で絵を描いた。
俺と左京が勇者になって魔物を倒す絵を。
下手くそすぎるけど、夢を描いた。
「…なにそれ。」
「んー?これはね俺の夢。」
「…相変わらず、絵が個性的だな。」
「褒めてくれてありがとー。」
「けなしてんだけど。」
「は?」
いつも通りに話して笑って、実験室に向かった。