表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異世界創造のすゝめ~スマホアプリで惑星を創ってしまった俺は神となり世界を巡る~  作者: たまごかけキャンディー
第二の創造~異世界冒険編~

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

49/230

再び異世界へ1



 【ストーリーモード】を開始し、無事に異世界へと降り立つと辺りは既に真夜中だった。

 ここはアプリで惑星を創造した時に月が二つ出来てしまった世界なので、地球よりも月光が強く夜でも少し明るいが、それでも森の中ということでかなり見えづらい。


 アプリで見渡していた時はくっきり見えていたので、ちょっと降り立つ時間帯を見誤ったようだ。

 とはいえ、特にこの視界のせいで苦になる程の魔物も辺りにはいないと思うし、さっそく一尾を召喚する。

 ちなみにワイバーンは夜行性ではないので、今はぐっすり巣穴でお休み中だろう。


「……すやぁ」

「おーい、起きろ一尾。もう自由にしていいぞー」


 すやすやと眠る一尾を揺すって起こし、解放する。

 一尾は最初寝ぼけていたようだが、すぐに辺りが今までと違うことに気付き周囲を見回す。


「んぁ? どこじゃここは? ずいぶん大きな木が生えておるのー」

「よう一尾、おはよう。腹減っただろ、何か食うか?」

「……む? あぁっ! お主はさっきの陰陽師の仲間! ひぃいい殺さないでおくれぇぇ!」


 天敵である陰陽師とその仲間であろう俺に一尾は慌てるが、なにも取って食おうってわけじゃないんだから落ち着いて欲しい。

 必死に地面に頭をこすりつけている少女妖怪を見ていると、なんだかやるせない気分になるからな。


 というか、10歳となった俺の姿でも同一人物だって認識できるんだな。

 もしかしたら妖怪には外見に囚われずに個体を識別する器官があるのかもしれない。

 霊力とか魔力で判別するとかそういう感じのやつだ。


 とりあえず俺は一尾を安心させるためにおにぎりを取り出し、奴の目の前に差し出す。


「ほ~れ、食料だぞぉ~」

「んぁ!? あっ、あぁ、目の前におにぎりがぁ……。そんな殺生な……」


 どうやら自分に差し出されているのではなく、腹が減って衰弱した一尾を追い詰めるために、見せしめとしておにぎりを見せびらかしていると思ったようだ。

 どれだけトラウマになってるんだよ陰陽師、過去に何があった……。


 ぐぅぐぅと腹を鳴らして空腹に耐える一尾が見てられないので、仕方がないから無理やり食わせることにする。


「食べたいなら食べてもいいぞ。というか食え、ほら」

「むぐぅ!?」


 突然口に突っ込まれたおにぎりに対し、一尾は驚愕の目で俺を見つめる。

 そんな驚くこともないだろうに。

 というかそうか、一尾はここが異世界だと認識してないから、きっとまだ隠れて陰陽師が監視しているかもとか、そういう事を考えているのかもしれない。


「そうだ、食っていいんだ。おにぎりの残機はまだいっぱいあるから、いくらでも食え。あともう周りに陰陽師は居ないし、腹いっぱい食ってさっさと元気になれ」

「…………。……はむはむはむはむ」

「そうそう、それでいい」


 ついでに天然水と予備のおにぎりを取り出し、一尾の前に展開する。

 一瞬周りの気配を感じ取るかのように耳をピクピクとさせていたが、こいつの感知には何も引っかからなかった事で安心したのか、差し出されたおにぎりを一心不乱に食べ始めた。


「うまいのじゃぁ、幸せなのじゃぁ……。ううぅ、でも母様かかさま姉様あねさまにもおすそ分けしないと……」


 そういって涙を流しながらも、惜しむようにおにぎりをかき集め献上しようとする社畜妖怪。

 憐れだ、あまりにも不憫すぎるぞ一尾。

 きっと一族内でのヒエラルキーが低いから、こうやっていつも成果の上前をねられて生きて来たんだろう。


 くぅ、おっさんを泣かせるなや。

 まるで社畜としての俺を見ているような気分になる。


「待った待った、待つんだ一尾。ここには、というかこの世界にはもう陰陽師は居ないし、お前の成果を取り上げる姉も母も居ないぞ。落ち着け」

「そんなはずは無いのじゃ。儂らは生きている限り封印されようともお互いの居場所が……、居場所が……、あ、あれ?」


 ようやく気付いたのか、一尾は困惑したようにキョロキョロとする。

 九尾の一族にそんな固有能力があるとは思わなかったが、どうやら異世界にまではその力が届かなかったらしい。


 式神もここまでは察知できなかったようだし、順当な結果といったところだろう。


「どうだ、俺の言った通りだろう。ここは異世界って言ってな、日本でもなければ海を渡った別の国でもない、完全な別の世界なんだよ」

「……封印とは違うのかえ?」

「俺には封印の事は良く分からないが、たぶん全然違う原理だと思うぞ」

「ふぅーむ」


 一尾は一族の感知能力も通用しない異世界という場所をじっくりと考察し、腕組をしながら頭をひねっている。

 考えている間にもときどきおにぎりを食べ、もぐもぐしながら考える。

 そしてついに結論が出たのか、食べて食べて食べまくった一尾はお腹をぽっこり膨らませて笑った。


「納得したか?」

「うむ。どういう訳か分からんが、どうやら儂の一族はこの世界にはおらんようじゃ」

「よし、ならもう問題ないな。あとはお前の自由に生きろ。ただこの世界にも人間はいるから、あんまり悪さするとまた酷い目に合うぞ。……それじゃ、達者でな」


 そう言って俺は一尾を置き去りにして立ち去っていく。

 いやぁ、こうして一匹の社畜妖怪が救われたと思うと、感無量だね。

 おにぎりは犠牲になってしまったが、報酬で受け取った1000万から考えれば、120円なんて誤差だ、誤差。


 ちなみにおにぎりは旅を考慮して大量に購入してあるので、残機はまだ沢山ある。


 後ろからも一尾の「儂、解放!!」とかいう歓喜の叫びが聞こえてくるので、きっとこれからは自由に生きていく事だろう。

 さて、それでは次の目的地である紛争大陸に向かうとしようか。


「…………」

「…………」


 無心で歩を進め、時折飛び出してくる夜行性の魔物を聖剣スキルで瞬殺していく。


「…………」

「…………のう」


 あ、あの崖の上にいるのってワイバーンじゃね?

 ぐっすり寝てるなぁ。

 いつかリベンジマッチがしたいので、冒険者ギルドに討伐の依頼があれば腕試しにチャレンジしてみよう。


「…………」

「…………のうのう」


 さっきから後ろから幻聴が聞こえるが、無視だ。

 この歳で幻聴なんて、よっぽど疲れてるんだな俺。

 いや、修復を終えたばかりのこの身体が疲れてるって事は有り得ないんだけどね、うん。


 そろそろ現実を受け止めようか。


「…………はぁ」

「…………のう、なんで無視するのじゃ? おにぎりのおのこよ。儂、またおにぎりが食べたい」


 振り返ると、そこには何食わぬ顔で後を付いてきていた一尾の顔があった。

 なんで付いてきたんだよこいつ。

 せっかく野生に返してあげたのに、また人間と関わったら面倒臭いことになるだろ。


 臆病故に頭の回転が速いこいつは、そんな事が分からないハズないんだがな。

 これが野生動物に餌を与えてはいけませんという社会ルールの理由か。

 完全に餌付けされちゃってるよこの狐妖怪……。


「はぁぁぁぁぁ……。どうして付いてきた?」

おのこのおにぎりがまた食べたい。それに儂は役に立つぞ? 本気を出せばおのこを乗せて野を駆ける事もできるし、耳と尻尾を隠せば人間に紛れ込んで情報の盗み聞きもできる。便利じゃぞ?」


 必死にアピールする一尾の姿は、捨てないでくれと言わんばかりに目をうるうるさせていた。

 ああー、困ったなぁ。

 色々自分は役に立つとアピールしているが、これが所謂ありがた迷惑というやつだろうか。


 しかしどうやっても諦めそうにないぞこれは。

 まったく、どうしたものか……。


「一度だけでいいから、儂の背中に乗ってみてはどうじゃ? それで便利な奴じゃと思えば、またおにぎりを恵んで欲しい。ダメかの?」

「分かった、分かったよ。一度だけだからな? それで役に立たないと思ったら、ちゃんと野生に返れ。約束だぞ」

「うむ」


 そういうと突然一尾はヘンテコな舞いを踊りはじめ、決めポーズで『コン!』と一声鳴くと獣の姿に変化した。

 おいおいマジかよ、背中に乗るってこういうことか。


 ……まさか、騎獣モードになるとは思わなかったよ。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ