閑話 語り継がれる真実
しばらくストーリー考えたいので時間ください(`・ω・´)
10月ごろから再開しようかなと予定しております。
尚、後書きに【異世界創造のすゝめ】二巻の情報があります。
是非ご覧になって頂ければと思います。
時は遡り、斎藤健二が大国アーバレストを脱出した翌日。
アーバレストの重鎮らはもぬけの殻となったその客間を知り、急遽会議を行った。
いや、本当は誰もが理解しているのだ。
彼らを自分達の私利私欲で縛りつける事はかなわず、この戦争から解放し勝利と平和を齎してくれた者達が真に天上の存在であった、ということを……。
なぜならば、彼らにはこの戦争を丸ごと潰してしまう程の武力があったから。
なぜならば、彼らはこの戦争の最終局面においてさえ、悪戯にお互いの兵から命を奪わなかったから。
なぜならば、その生い立ちと生きて来た痕跡が、どこにも見当たらなかったから。
その力と、気高き精神と、閉ざされた謎。
すべてが彼らの存在を証明していたのである。
故に、当然その足取りを追うことは不可能であり、一応国の密偵を王都外へと放ってはいるが、その成果が上がらないであろうとも予想していた。
しかしそれでも国としては表向き国賓として招いた客であり、この戦争の第一功労者だ。
例えその正体が神話の存在だと言うことを悟っていたとしても、なんのアクションも起こさない訳にはいかなかったのである。
それは密偵を放つにしろ、こうして彼らが逃げるような事態になるまで無理やり国へと縛りつけようとしたことにしろ、何も知らないで私利私欲のために使おうと画策していた木っ端貴族達の対応にしろ、状況と成り行き的に仕方のないものなのだ。
そしてそんな真相を理解した彼らが集まり、数日間に渡る会議で最終的に下した決断は、『語り継ぐ』という選択であった。
これは全て彼らへの感謝の表れであり、畏怖だ。
自分達がどうにもできなかった戦争と、その裏に潜む何か。
この世界で一体何が起きているのかは知る由もないが、なんであれそれは世界の危機であり、尋常ならざる理由があるのだと察していたのである。
そして王はひっそりと、数百年前から続くとされるアーバレストの真の歴史の一端として、今後王家に伝わる真実として手記に記録を残した。
────伝説の騎士、ミゼット・ガルハートの逸話を忘れることなかれ。千年の時を超え語り継がれる騎士は確かに実在する。それも疑う余地がない程の力を以て証明され、この眼で確認した真実だ。いまとなっては御伽噺としてしか語られていない伝説の騎士の逸話も、そして伝説にすら残っていない青年、ケンジ・ガルハートのことも。正しく全て、神の意思によるものであったのだ。
────今この時代に我が国が困難に直面した時、彼女らは前触れなくふらりと立ち寄った。戦争で揉める両者の国を救うため、いたずらに兵を消耗させず、この時代に巣くう最低限度の膿だけを切除した。彼女らにはそれを可能にするだけの力があり、そして慈悲があり、理由があったのだ。
────それを私は見て、聞いて、知った。そして理解した。真に彼女らは伝説であると。しかし最後まで、彼女らの本当の目的は分からなかった。彼女らがなぜこの国を救ったのかも分からない。だが、事実として我らの国は救われたのだ。この事実が何を意味するのか、今代の王である私には死する時まで理解はできないだろう。
────しかし後の世に彼女らが再び現れる事があったのなら、今この時に受けた恩をその未来で返せ。国の威信を以て、王の権威を以て、貴族の責務を以て彼らに助力しろ。決してその力を取り込もうとはするな。……これは、今代の王である私から後世を統治するアーバレスト王への、王命である。
最後にそう書き綴った王は手記を閉じ、代々の王家に伝わるこの時代の真実として記録を残した。
全ては国の為であり、世界の為である。
あれ程の力を持った神の使者である彼らが起こした奇跡と、その意図を支える事は何より優先されたのだ。
現在この大陸において最も強大な大国であるアーバレストが手に負えない謎の敵。
それが話に聞く魔界からの侵略によるものなのか、それともそうではない何かの干渉によるものなのかは不明。
恐らく神の次元での争いが人の世に少しだけ降りかかっていたのだろうとは予想していたが、それでも一つだけ理解している事があった。
それは、まだ全てに決着がついた訳ではない、ということである。
というのも、戦争終結後にグンゲルの幹部が携帯している首輪の魔道具から通信が入ったのだ。
聞きなれない言語に、全く原理の分からない魔道具からの通信。
それはまるで、異界の者達からの怨嗟の声のように聞こえ、王は恐怖した。
通信はしばらくすると途絶え、以後反応を示す事がなかった。
だからこそ王は察する。
この時代に起こった物語は、異界の者達によって起こされた事件の先触れ、ほんの序章でしかなかったことの証明でもあるのだと。
いつの時代かは分からないが、この大国が、いや次はこの世界かもしれないが、再びかの伝説と力を合わせ協力しなければならない時が来る。
そう理解した王は事実を記録し、いまはただ備え、後の世への遺産を少しでも残す事に注力するのであった。
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興味がありましたら、二巻も宜しくお願いします(`・ω・´)




