閑話 俺はもう長くはない
連続投稿完遂!(`・ω・´)
ラストはちょっと短め!
ふと深く深く鎮めていた意識が、水面から浮かび上がるように覚醒する。
こうして自立して思考するのは久しぶりだな。
しかし、あれから向こうではどれ程の時間が過ぎたのだろうか……。
百年か、二百年か……、それともそれ以上か。
かつて俺の愛した世界は、俺が居なくとも廻っているだろうか。
俺はそれが、気がかりでならない。
────諦めろ。
────お前は失敗したのだ。
「……やめろ」
────今更足掻いたところで無駄だ。
────いずれお前の愛した者達も、世界と共に滅びる運命だ。
「……やめてくれ!!」
十数年間、まともな食事をとらず飲まず食わずで生き永らえてきた己の脳内に、過去の宿敵の声が重なる。
ああ、忌まわしき記憶だ。
こうして人ではなく、他者の血を啜る不死者となった今でも語り掛けてくるのだ。
こいつは何より、俺が吸血衝動に負けないのが不愉快で仕方ないらしい。
だが、ここで折れる訳にはいかない。
いまここで俺の心が折れれば、この地球、いや俺の世界であってすらも自分自身を止められるものが存在しなくなってしまう。
いまはただこうして吸血衝動を抑え、自分の肉体の弱体化に勤める以外にはないのだ。
例えそれで俺の愛した世界が滅んだとしても、全てが無に帰すよりはマシなハズだ。
そう、頭では分かっているのだがな……。
「頼むぞ息子。俺の心が折れる前に、俺を殺してくれ」
一度でもあの世界での思い出が蘇ってしまえば、一度でも彼ら彼女らと再会してしまえば、もう俺は止まれない。
そうなる前に、お前が俺を殺すんだハリー。
その資格が、その可能性が唯一お前だけにはある。
仲間を集め、力を集約させ、俺に挑め。
そして叶う事ならどうか、俺の愛した世界を継いでくれ。
きっと将来、俺を殺す事が出来たお前ならば、あの始まりの創造神に認められる事も不可能ではないはずだ。
だからどうか、二度と俺と同じ過ちを犯さないでくれ。
「この世界を、そして俺の愛した世界の未来を頼んだぞ」
────無駄な足掻きを。
「何が無駄なものか。だが、お前には分からないだろうな」
俺の息子は天才だ。
それは力や技術だけではない。
仲間を集めるカリスマ、可能性を手繰り寄せる幸運、それ以外の俺を超え得るだけの要素全てを持って生まれた最強の後継者だ。
たかだが創造神の肉体に寄生した程度の、俺の世界の邪神などにどうこうできる程、あいつは甘くないぞ。
「覚悟しろヴァンパイア野郎。いつの日か俺の息子が全てを解決するはずだ。自分に足りない力があるなら、それを補うだけの仲間を、協力者を集い、いずれ俺をお前共々灰に変えてくれるだろう」
────世迷言を…………。
そう思うなら試してみるがいい。
その油断こそが、お前の敗因だ。
それだけ思考すると再び俺の意識は深く沈んでいき、希薄になっていく。
ああ、また覚醒できる時間が少なくなったな。
もって後数年、いや、一年とちょっと、といったところか。
俺はもう、あまり長くはないようだ……。
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