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異世界創造のすゝめ~スマホアプリで惑星を創ってしまった俺は神となり世界を巡る~  作者: たまごかけキャンディー
第四の創造~創造神編~

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見送り


 異世界喫茶『玉藻店』をオープンした翌日、俺はさっそくストーリーモードの画面を開き、異世界へとログインしようとしていた。


「それでは行ってきます。紅葉もお借りしますね」

「うむ、バカ娘の事を頼んだぞ。あいつはああ見えていざという時に役に立つ。まあ、逆を言えばいざという時まで何の役にも立たんがな! あっはっはっは!」


 ひどい言われようだが、事実である。

 しかしこういう言い方でも九尾が持つ母親としての愛情が伝わるから不思議だ。


 余談だが、この見送りには九尾一族の他に黒子お嬢さんと源三の爺さんが集まっている。

 つまり俺が異世界へ向かう事を事前に知っている面々という訳なのだが、これには少々特殊な事情があるのだ。


 まず黒子お嬢さんにはさすがに異世界の事を隠し通す事ができず、別の銀河に存在する世界だとハッキリ伝えた訳ではないが、薄々俺の事情に勘付き始めているといったところだろうか。

 恐らくジーンと共にダンジョン攻略した冒険の事を、特殊能力により生み出された固有世界というよりは、陰陽師が常に意識している魔界や妖界といった未発見の異次元世界だと認識しているのだろう。


 源三爺さんにしてもそうだ。

 俺との繋がりによって発見されたという魔界の魔神から類推して、この地球と隣接した異次元世界なのだろうという憶測をだいたいではあるが立てているようだった。


 これらに関しては当たらずも遠からずといったところだろうか。

 アプリで創造した異世界は別銀河、つまりめちゃくちゃ遠くに存在しているだけで異次元ではないのだが、九尾の持つ固有世界のように、能力で創り出された結界のような空間とは違うという事には気づいているもよう。


 そしてその事を踏まえ、今回は俺の旅立ちに際してどういう転移を行うのか観察しに来たという感じらしい。


 また、爺さんも黒子お嬢さんもこちらの身を案じてこの事は他言しないようにしてくれているようなので、この二人の戸神家以外には真実は広がっていない。

 故に見送りは二人だけとなった訳である。


 まあ、黒子お嬢さんに関してはあわよくばついて行きたいという願望も透けて視えるが、今回は無しだ。

 異世界でレベル上げをして育てればかなりの戦力になるのだろうが、ご両親に事情を説明しないで勝手に連れ出す訳にはいかない。

 なにせ彼女は未成年だし。


 爺さんの口利きでどうにかなりそうでもあるが、こういう事情で力を借りるのは筋違いである気がするので、もしついて行きたいのであれば黒子お嬢さんが自らの力で自由を勝ち取るべきであると判断した。


「のう斎藤殿よ。今回は世話になったな」

「いや、それはこちらのセリフだよ源三爺さん。召喚したあの魔神、ジーンが稼いだ時間がなければいざという時まで間に合わなかったかもしれない。本当に助かった」


 あの時点ではハリーも爺さんも満身創痍だったというし、ジーンの活躍には感謝だ。

 ただ、あれだけボロボロにやられていた傭兵ハリーが、危機感を感じずどこか余裕があったように見えたのにはちょっと疑問が残る。

 恐らく切り札かなにかがあったのだろうが、果たしてそれが何なのかは見当もつかない。

 まあ、異世界の冒険者と同じで手の内は明かさない主義なのだろう。


「魔神か、うむ。それなのじゃがなぁ、斎藤殿。……お主本当は、魔界出身の悪魔なんじゃないかのう?」

「悪魔!? い、いや、そんな事はない」

「うーむ」


 考え込み始める爺さんに、ここで俺の職業が悪魔である事を言う事はない。

 まあ俺との繋がりを辿って見つけた次元が異世界の魔界だったんだから、そう思う気持ちも分からなくもないが。


 それに俺がどういう存在かなんてワリとどうでも良い事だしな。

 しょせん俺はただのおっさんである。


「ま、そういう事だから皆には一週間世話になったよ。行ってきます!」


 それだけ言って、返事を待たずにストーリーモードの開始画面をタップした。





 世にも摩訶不思議な男。

 斎藤健二の旅立ちに立会い、戸神源三は溜息を吐いた。


「あやつめ、さっそく行ってしもうたのう」

「ああ、行ってしまったな戸神の爺よ」


 見送りを終えて思い返すは、若かりし頃に九尾の逸話を知り、そしてここ十数年で復活が明らかになってからというもの繰り返した今日までの研鑽の日々。


 かつて幼き頃に目指した陰陽道への憧れ。

 成人していくにつれ知った戸神の家に伝わる九尾の逸話。

 そして大妖怪という存在への疑問、逸話への疑問。


 故に辿り着いた、試練の土地神という大妖怪の正体。


 だからこそ決心し、既に先立った妻と約束した、どんな手を使ってでも娘を守り抜くとの誓い。

 いずれ孫が生まれ、九尾の復活という絶望を知ってからというもの繰り返した苦悩の日々を思い返すのだ。


「不思議なものだ。こうして我が人生の大目標とも言える貴様との決戦を終えて見れば、なぜだか全てが幸福につながっている。よもや我が命を対価にする事もなく、貴様という大敵を殺す事もなく、そして孫娘も守り抜けるなどという未来が、本当に存在しているとはな」


 そんな源三の語りに、土地神である玉藻は目を伏せ続ける。


「不思議か、戸神の爺よ。だがな、それこそが人間の可能性、未来というものだ。かつて余も、そんな人間の未来に憧れた。人間にはこれからがあり、愛や憎しみといった感情があり、自由がある。何も持っていないちっぽけな存在のくせに、土地神である余の持ちえぬ全てを持つ、そんな存在だったのだ」


 ────ああ、思い出した。

 そういえば、余が亜神の一柱から堕ち大妖になった事も、娘を生み出した事も、そんな人間を羨み妬んだからこそであったな。

 そんな、ちっぽけな存在への執着がきっかけで、試練の土地神などという定めを受け入れたのであった。


 九尾は昔を懐かしむように、つらつらと思い出を掘り起こしていく。


「途方もなく遥か昔の時代。確か人間を羨んだ余はな、余を生み出した創造の神にこう願った。『人間を知りたい。彼らに身近き存在でありたい』とな。そして確かに、その願いは叶った」

「…………」


 大妖怪になり土地神として定められていたルール、その枠組みから外れた事で自由を知った。

 眷属という形で娘を生み出し、愛を知った。

 人間の仇敵となる事で、憎しみを知った。


 ────そして今はこうして、人間にもっとも身近な存在とちがみとして、異世界喫茶なるものを営業している。


「すべては我が創造の神への願いが通じたのか、それとも……」


 そこまで思い起こし、ふと笑いを零す。


「いや、そうではない。そうではないな戸神の爺?」

「そうじゃ。自由を得た貴様だからこそ、こういう結果になったのは定められた願いなどではない。この結果を生み出したのは儂ら人間と、貴様と……」

「そして、あの得体の知らぬ青二才を含めたそれぞれの働きによるもの、か……。くくくっ、成程な。それは言えている」


 そうして一通り語り終えた二人、戸神源三と玉藻御前は思う。

 こうでなくては、面白くないと。




次回からストーリー進みます(`・ω・´)

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― 新着の感想 ―
[一言] 見える。ストーリーで大変などっかの誰かをほっといて玉藻店でブヒる俺の姿が見える!!(錯乱)
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