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異世界創造のすゝめ~スマホアプリで惑星を創ってしまった俺は神となり世界を巡る~  作者: たまごかけキャンディー
第三の創造~現世動乱編~

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それでも紅葉はご飯を食べたい


 会社で異世界喫茶の企画進行具合を確認した後、自宅へと帰って来た。


 あれから色々と話を聞いたところによると計画そのものはかなり進んでいるらしく、立地なんかに関しても既に押さえているらしい事が分かった。

 場所は会社から少し離れた裏路地の隅っこのほうだが、むしろ一般人に対し目立ってはいけないという事でこの条件になったようだ。


 そもそも扱う品が殆ど普通に生きる人にとっては無縁のものだし、その方がいい。

 あくまでも商売のターゲットは少数だからね。


 その後、やる事をやり終えた段階でしばらく風呂などで時間を潰していたところ、ついにスマホが震えだした。

 どうやらやっとアプリのメンテナンスが終わったらしい。


「どれどれ……、世界の様子はどうなっているかな」


 紅葉を取り出す前に世界地図を開き、星の全容を眺める。

 すると百年前に木っ端みじんとなっていたあの大陸の王城は見事なまでに修復されていたり、ミゼットの故郷であるガルハート伯爵領がさらに発展していたりと、様々な変化が見受けられた。

 龍神や世界樹の様子も普段とはそれほど変わりないし、順調に世界が進化しているようだ。


 ただ気になる点が一つ。

 少し見ない内に文明が進んだのか、空に飛行船のようなものが飛び交っているのがどうしても目に入った。


 これはあれか、人類が百年の間に知恵を絞って機械製品に着手しだしたってことなのだろうか。

 もちろん全てが機械ではなく、随所に魔法や魔法具なんかも使われているのだろうけど、それにしても凄い進歩だ。


 ついに俺の創造した惑星の人間種は、翼を得る事に成功したらしい。

 これはより面白い世界になっていそうな雰囲気があるな。

 今から向こうに向かうのが楽しみだ。


 また百年前とのごく小さな違いでは、魔王と決戦の地になった王城でなぜか子供時代の俺の銅像のようなものが建てられていたり、付き添いのような形で賢者アーガスの銅像が建てられたりしていた。

 それもこれ以上無い程に神々しいポーズと装飾つきで。


「おいやめろ、それは恥ずかしい」


 どういう羞恥プレイなんだこれは。

 確かに王様には俺があの世界の神である事がバレてしまっていたが、それにしたってやりすぎだろう。


 しかもここまで忠実に俺を再現した銅像を建てられてしまうと、このまま子供の姿で地上へ降り立った時に何が起きるか分かったものでは無い。


「……よし、今の内にキャラクター年齢を変更しておこう」


 高速指タップで10歳の設定を15歳に変えておく。

 これで一先ず安心だ。

 後の事はなるようになるとしか言えない。


 だいたいの準備を整えた俺は、ようやく人心地つけるということで紅葉を取り出す。


「ぬ! ……戻って来たようじゃな」

「おう、おかえり紅葉」

「うむ、ただいまなのじゃぁー。……それでおのこよ、儂はお腹が減った」

「はいはい、待ってろ。いまおにぎりを出してやるからな」


 部屋に召喚されたとたんに晩飯の要求をされたが、今回ばかりは致し方あるまい。

 なにせ次元収納内部では時間が止まっているのだし、向こうでずっと戦っていたままの状態で召喚された訳だからな。


 そりゃあ腹も減る。

 次元収納からそのままシャケと昆布のおにぎりを取り出し、一緒に食事を採ることにした。


「う~む。それにしても、おかしいのうー」

「どうした? おにぎりが不味かったか?」

「いや、そうではないのじゃが……。はて……」


 なにやら紅葉の様子がおかしい。

 何も無い空間を見てはキョロキョロして、耳や尻尾をピクピクさせている。


 何かを察知しているような雰囲気があるなぁ。

 はて……。


「ふーむ」

「うーむ」


 考え込む俺と紅葉。

 お互い別々の事を悩んでいるが、よく見ると腕を組み首を傾げるポーズがそっくりだ。

 いや、決して真似をしている訳じゃないぞ。

 たまたまだ、たまたま。


「うむ、やはりおかしい。母様かかさまはともかく、姉様あねさま達の気配が急激に強まっておるな。もしかしたら皆は封印を解いてしまったのかもしれぬ」

「ああ、そういうことか……」


 確か西園寺さんも似たような事を言っていたな。

 二尾以上の妖怪が何匹か封印を破って外に出ているとかなんとか。


 いや、待てよ。

 ……と、いうことはまさか。


「もしかして、お前の居場所も向こうから丸わかりだったりするのか?」

「丸わかりじゃなぁー。この世界に居る限り、儂らの存在はお互いを感知し合えるからのー」

「呑気にいっとる場合か」


 全く緊張感がないなこいつは。

 それってつまり、今すぐにでも二尾以上の妖怪が俺の家に押しかけてくるかもしれないという事だろう。


 どうするんだそれ、やっぱ戦わなきゃいけないのか。

 いっそのこと、見つかる前にすぐに収納してしまう方が良いかもしれないな。

 前は姉妹に対し怯えていたようだし、それが最善だろう。


 さっそくスマホを取り出し、画面を向ける。


「ぬぁー!? やめるのじゃ、おにぎりのおのこよ! 儂はまだお腹いっぱいになっておらんのじゃぁー! もうちょっと、もうちょっとだけご飯を堪能させてくれぬかえ?」


 収納のモーションを見せると、紅葉は必死におにぎりを腕にかき集め、ぷるぷると震えだしてしまった。

 おいおい、自分の安全よりもご飯が大事なのかこいつは……。 


「いやまあ、食べたければ食べていてもいいが。お前の姉妹がやってくるかもしれないんだぞ?」

「む、むぅ……。だ、大丈夫なのじゃ。きっと姉様あねさま達にもおにぎりをおすそ分けすれば、分かってくれるのかも?」

「俺に聞かれてもなぁ……」


 そう言いつつもハムハムとご飯を頬張り、尻尾をイヤイヤと振りながら上目遣いで懇願する社畜妖怪。


 うーん、仕方ないか。

 既に紅葉は俺の保護下にあるようなものだし、こいつの問題は俺の問題だ。

 もし二尾とか三尾とかがこちらに危害を加えてくるようならば、退治するのも致し方が無い。


 正直この社畜妖怪の同族だと思うと手を下すのは気が引けるが、話し合いで解決しなかったら諦めてもらう他ないだろう。


「分かった、もう収納はしないから思う存分ご飯を食べろ。お腹すいてたんだろ」

「うむ」


 収納しないと分かるや否や急に冷静さを取り戻して、何食わぬ顔で平然と食事を再開しはじめた。

 全く仕方のないやつだ。

 もし姉妹とやらが押しかけて来たら、幸せそうにおにぎりを頬張る妖怪のためにも、一肌脱ぐとしましょうかね。 



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― 新着の感想 ―
そういえば、ミゼットも兄の治療の時に、おにぎりをおあずけ状態になってなかったっけ?
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