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2話

 ~アルテグラ王国~ 王立学院__周辺


 その後は、恙無く卒業式も無事終わり解散となったのだが・・・誰も居なくなった校舎裏でオレとオルトレは俯き肩を落としていた。


 「見つからなかったな・・・まぁ、最初から難しいとは思っていたが・・・ハァ~やっぱギルドで探すか。」


 「出来れば近い世代とパーティーを組みたかったが是非も無しだなこれは・・・。」


 二人は長く重い溜息を吐き、項垂れる。しかし、予想外の事でも無く想定の範囲内と気を取り直し、ギルドのある方角へ向かい歩を進めることにした。


 それは、仕方の無い話だと最初から解ってはいたものの・・・声を掛けた先々で嫌でも理解させられたからだ。


 冒険者になるものは同級生(クラスメイト)に結局自分達を含めても十人も居らず。


 殆どの者が家業や街での仕事を見つけており、何人か居た冒険者志望の相手も既に所属先が決まっていて、結局断られ続ける結果に終わった。


 そんな二人の行く手を遮る様に現れたのは首から足首迄をマントに包まれたあの少年であった。


 「君達、一緒にパーティーを組む冒険者を探していたと思うのだが、僕も一緒に仲間に加えて貰えないか?」


 そこに居たのはやはり・・・ボンドであった。そして、気付かれぬよう小さな溜息を吐き答えた。


 「ボンド、お前の話は教室で聞いてたよ。中々大変な目に遭ってるっていうのもな・・・だか、オレ達が敢えてお前に声を掛けなかったのは、お前の抱えている問題は明らかにパーティーLvE評価のオレ達では手に負えない問題だと判断したからなんだ。」


 それは事実ではあった。実際あんな上級魔法や対魔の攻撃力を宿した武器ですらかすり傷一つ与えられない様な物を、ぺーぺーの新人(ルーキー)パーティーが解決しようとすれば何年、いや、下手をすればその解決策と遭遇出来るかも怪しい。


 「おれ達もチェントの様に有益な情報を得られればお前に伝えようとは思う・・・が、お前の問題を早く解決させるにはやはりギルドで最低でもLvB評価以上のパーティーに加わる事が最善だしな。」


 「そうでなければ正直、悪戯に時間を食う羽目にしかならないとオレ達は考えてお前に声を掛けなかったんだ。一日も早い解決を目指し可能性を少しでも上げる為にはそれ以外の選択肢は無いと思うぞ。」


 話を聴く内にボンドは俯いていく。(・・・不味かったか?出来るだけソフトに伝えようとしたんだが・・・)オレ達二人は顔を見合わせる。


 話を終え、顔を上げた其処にあったのは溢れる涙を袖口でゴシッゴシッと拭き、満面の笑みで手を握って感謝の言葉を口にするボンドであった。


 「こんな僕の為にそこまで考えてくれていたなんて、本当に僕は幸せ者だ!困った事があれはこんなに心配し、協力し支え合える友人(クラスメイト)がいる。本当に僕は恥ずかしい、なんて大馬鹿者だったんだ・・・僕には過ぎた友人(クラスメイト)がこんなに沢山いるという事が今日良く解ったよ本当にありがとう!」


 感極まってまた泣き出している。まぁ、実際スリングショット(あんな物)を着ていれば色々と何をするにも大変な目に遭ったと思う。


 学生時代何事も率先して行っていたボンドの姿が思い出され、ボンドのこれ迄の苦労が容易に想像出来た。


 正直、多少心が痛む・・・が、問題解決が遅くなると言うのは本当の話だし、流石にルーキーパーティーにスリングショットの”変態”が居ると見てとらるるのは色々と不味くないかと考えるのは仕方の無い話だ。


 どう考えても外套(マント)の下にスリングショットは何かあった時に疑いを晴らせる気がしない。特にルーキーパーティーで何の実績も持たないオレ達は理不尽な目に遭うのは比較的多いものと認識がある以上、出来るだけリスクを下げたいと思うのは当然の流れだろう。


 二人して軽い罪悪感に苛まれていたが、足取り軽く元気に去って行くボンドの背中を見つめ、小さな安堵を吐き胸を撫で下ろす。


 そして、仕方なくギルドへ向けて歩を進めていた途中、チェントとスレ違った所で声が掛かる。


 「そう言えば君達、パーティーを組む仲間は見つかったのかい?」


 その言葉を聴き歩を止める・・・この国で大臣を務める侯爵の息子であるチェントに声を掛けられたのだ、二人が顔を見合わせていたらチェントの方から意外な話を持ち掛けられた。


 「もし良かったら、俺とパーティーを組まないかい?」


 !?驚きで思わず声が揃う。


 「「何で!?」」


 オレ達の反応がかなり予想外だったのか。狐に摘ままれたような顔をして首を傾げる。


 いやいやいや!?寧ろ何故そんな反応になるのか?此方も訳が解らないと茫然となる。


 そもそもチェントは富裕層だ。態々オレ達と組まずとも仲間など引く手あまたの筈だし、何より侯爵の息子という点から安全(セキュリティー)の面を考えても上級冒険者と組むだろう・・・どう考えても相応でない。


 「えっだって君達、パーティーを組む仲間をさかしているんだろう?俺も探してる。そして、君達は俺の同級生(クラスメイト)だ。ならば友達を誘うのは不思議な話では無いだろう?」


 茫然としていたらそんなことを言ってきた。


 「・・・それはありがたい話なんだがお前は侯爵家の跡取りだろ?新人(ルーキー)だけでパーティー組むのは危険じゃないか?」


 すると、口元に手を当て少し考え込み。


 「そうか。成る程・・・そうも考えられるのか。すまない少し侯爵家の者としての自覚を忘れかけていた様だね。ありがとう。もう少しよく考えてみるよ。」


 「まぁ、オレ達もいきなりハードルの高いスタートを切るのは少し心配でもあるし、何かあった時に役にたてそうもないしな。」


 そんなやり取りの後、別れて歩き始めた直後に不意にチェントの口からが漏れる言葉がオレ達の歩みを止める。


 「・・・Lv40を越えたせいで危険な目に遭わなくなっていたから危機意識が緩んでいたのかもしれないな。」


 その声に二人して目を見合わせ、チェントの方を驚愕の表情で見つめる。それはそうだ一般的に二年間で達成出来るLvと言うのは平均Lv15と言われているからだ。


 Lv40越えてたら流石に侯爵の息子とは言え狙えないだろうとの結論に達したオレ達二人の動きは速かった。


 去ったチェント()の背中を駆ける様に追いかけ、オルトレは満面の笑みでチェントの肩に手を掛ける。


 「チェント、今チラッと聴こえたんだが君のLv幾つだって?」


 「えっ、Lv41だけどそれがどうかしたのかい?」


 「よし、今日からおれ達はパーティーだ。」


 チェントもオルトレの急な豹変ぶりに少し驚きはしていたものの、直ぐに状況を理解し少し呆れた様な顔を見せるも直ぐに笑顔が戻る。


 そして肩を掴んだまま、オルトレはもう一方の手で親指を立て白い歯を輝かせウインクをする。


 何処か遠くで聞き覚えのある声が聴こえた。きっと上から蔑む様な表情で吐いた言葉(セリフ)なのだろう。


 「(クズ)ね。あの二人・・・。」


 そんな外野の声が聴こえた気がしたが、オレ達は歯牙にもかけない、重要なのは外界への必須条件を達成している仲間を見つける事だったのだから寧ろ現金な奴だと言われても構わない。


 それから各々が向き合う様に立ち、正面に真っ直ぐに右拳を突き出す。


 「急な話だったんだけど仲間に入れてくれて助かるよ。人数はもう増やさないのかい?」


 「オレは少数で組みたかったし、同じ学友で組めた方が連携も取りやすい何かあれば増やせばいいさ。」


 「おれからすれば頼りになる奴と気心知れた奴と組めてホッとしてるよ。」


 そして、『これから宜しく!』と全員で拳を合わせ新なパーティーの結成を示した。


 これでやっと外の世界へ向う条件が達成出来た。長かった二年間、自由に旅立てるこの日を夢見て頑張って来たのだ。そんな三人を白昼の光が希望の様に照らすのだった。






 ~アルテグラ王国~ 喫茶ゾンダ_個室


 「此処は俺が行きつけにしている店だから守秘義務も含めた情報漏洩を気にせず内々の話が出来る。」


 そう言ってチェントに連れて来られたのはオレ達下々の民には来る事の無いであろう高級喫茶である。


 大理石で作られた建物に深紅の絨毯が広げられ扉を開ければ中央がホールになっていてオーケストラが音楽を奏でている。


 そして、ステージを取り囲む様にコの字型に個室が並び一階席から五階席まであり演奏を楽しみながティータイムを楽しめるようになっている。


 オルトレと二人して雰囲気に圧倒されているとチェントがこっちだと手招きし進んで行く。


 パーティーを組む以上全てとはいかなくともある程度お互いの能力を共有しようと言う話だ。オレ個人として1番気の重い話題である。


 「場違い感が半端ないんですけどチェントさん」


 オルトレが少し皮肉混じりに言うと「何を気にしてるのさ」と一笑に付されてしまった。


 「まずは、俺から公開しよう魔法は数が多いから大まかにするけど初級、中級の魔法は一部を除いて略全て使える。」


 相変わらずサラッと嫌味を感じさせず凄い事を言う奴だとオレ達二人は内心で感心していた。


 そして、テーブルの上に手をかざしステータスを表示させる。そこには、半透明のボードが現れチェントのステータスが現れる。


 チェント Lv41  加護 賢者

  HP        110

  MP         80

 攻撃力      235

 守備力        191

 スキル    槍の投擲


 「流石Lv41数値の桁が違うなぁ。」

 「あぁ頼もしいな実際このパラメーターを見せられると。」

 二人共まじまじとステータスを見つめ小さく溜息を吐く。


 「じゃあ、次はおれだな魔法は氷雪系しか使えない。」そっぽを向きながらサラッと話を進める。


 オルトレ Lv17 加護 氷雪の魔導師

 HP       45

 MP      100

 攻撃力     36

 守備力     26

 スキル    杖術


 「ふぅ~気が重いな見て引くなよ。」そう言いつつオレもステータスを表示させる。


 ノア   Lv7 加護 侍

 HP     ■■■■■■■■■■

 MP     ■■■■■■■■■■

 攻撃力    SS

 守備力     A

 スキル   桜刀流


 オレのステータス表示を見た瞬間辺りを沈黙が包んだ。


 「何で今だにHMP表示が数値じゃなくてゲージなんだよ!攻撃、守備表示すら五段階表示じゃねえか!」


 声を荒げ疑問をぶつけてくるオルトレにオレも自嘲気味に返す。


 「仕方ないだろ。Lvが中々上がらなかったんだから」


 「だけどこれ見せられたら普通の奴は冒険者になって三ヶ月位しか経ってないんじゃないかと思うぞ。」


 この世界のステータスは本人の意思で表示し、仲間(パーティー)で共有できる。


 しかし、数値で表示されるのはLv10を越えてからだ。それまでは数値自体が少ないのでイメージしやすい様にゲージやABCDEの五段階表示で表されるのだ。


 そして、オレは最近冒険者になった訳では無いし、寧ろ見習い(アプレンティス)の中ではかなり魔物(モンスター)を倒せる方だと最後にパーティーを組んだ冒険者達に言われていたのだが、何故かLvは一向に上がらなかったのだ。


 「とりあえず、落ち着きなよ。僕もLv10に上がる直前までCやD表示だったことを考えると現時点でSSの表示ってことはLv18相当のステータスになってるんじゃないかな?そんなに問題になる様なことじゃないよ。」


 「そう言われればおれはEだったな・・・それにSSって何だ?聴いたこともないな。」


 「そうだね5段表示ですらないし、今まで普通に魔物(モンスター)を倒せてたんなら尚更気にする程の事じゃないんじゃないかな?」


 「悪いなどういう訳かLvがやたら上がりにくくてな。戦闘で足を引っ張りそうなら切り捨ててもらって構わないからな。実際足手まといになるつもりはないが・・・」


 「すまん、別にそう言う訳じゃなくて少し驚いただけだ。パーティー組んだら情報共有も大切なんだそう怒るなよ。」


 「別に怒ってねぇよ。反応が予想より大したことなくて拍子抜けしてる位だよ。正直パーティー解消しよう位は言われる覚悟があったからな。」


 オルトレが焦った様子で謝って来たが、そもそもオレからすれば想定内の反応だったし気にもしていない。


 それからチェントからの意見で実際の力量は実践で直接お互い確認していこうと決まった。


 「あとは、アビリティだけどあれは神殿に行ったついでに予約だけでも取ってそのうち調べて貰おうか。」チェントが呟く様な言葉に二人で同意する。


 この世界にはスキルや魔法以外にも戦力を見定める指標となるアビリティが存在するが、この能力は神殿等で特殊な鑑定スキルを持った一部の者に調べて貰わなければ本人でもどんな力が備わっているのか判らないのだ。


 勿論、予測は出来る。やたら重量級の武具を装備して軽々と扱い重い荷物まで楽々と運んだり出来る様な奴は大抵”筋力増強”等のアビリティを有している。


 だが問題になるのは”悲運”等のアビリティを持っていた場合である。気づかず持っているだけで魔物(モンスター)によく襲われたり、流れ弾がやたら向かってきたりと録な事がなくパーティーを組んだ仲間にそんなのが居たら大変なことになる。


 とは言え、実際の処は回復魔法を極めようと数年を費やし何の成果も得られなかった者が、アビリティを調べたら”火炎魔法の才覚”を持っていた何て事が粗にあるのだ。


 それ故に鑑定所は予約待ちで長蛇の列が出来ているのだ。


 その後は装備の話になったので今度はオレから説明を始めた。


 「オレの獲物は此だ。」


 無造作にテーブルの上に同じ形をした両刃のショートソードを二本並べる。刃の形はコピスと呼ばれる剣に似ているが、刀身は厚く重量も在る為投げればブーメランの様に扱うことも出来る。


 「それと刀が一振、後は見ての通り鎖帷子を冒険者の服の下に着てるだけで盾や兜は持ってない。」


 そう言って綺羅冷やかな白銀の装飾が施された朱色の鞘に納まった刀を見せた。(間違っても三本剣を持っているからと言って刀を口に咥えて戦う趣味はない。)


 「おぉ、なんか凄そうな刀だな。どうやって手に入れたんだコレ。」


 「預かり物だからな。冒険者やってないと返しにも行けないだろ?だから使えない物と思ってくれ。」


 続けてチェントが布に包まれた長物をテーブルに置き、巻かれていた布を剥ぎ取る。中からは碧く綺麗な装飾を施された柄に白銀に輝く美しい笹の葉形の穂先の一本の槍が出てきた。


 「一応ドラゴンフライという銘はあるけど・・・まぁ、普通の槍だね。」


 まぁ、見るからに普通の槍ではないことはオレ達二人にも分かる。金銭感覚の違いだろうか?オレとオルトレは目を見合わせる。


 「まぁ、他の鎧や盾なんかは屋敷にあるから明日にでもまた見せるよ。」


 最後にオルトレは何の変哲もない言われなければただの鉄の棒と思ってしまう様な鉄製の杖を出して来た。


 「後はノアと同じだよ。おれも他の武具は持ってない。」


 それを聴いてチェントは顎に手を当て考え込むが、取り敢えず明日またギルドで待ち合わせよう。と言って解散することになった。


 店を出る時にオレ達二人が二度見してしまう程の代金を当然の様にチェントは紅茶三杯に払っている。


((流石、富裕層の息子は違う。))そんな二人の視線に気付いたのか


 「ん?何か言ったかい?」


 「「ゴチになりま~す。」」


 微笑を浮かべただの紅茶代じゃないか。と小首をかしげている。


 確かに高級な味ではあったがオレ達からすればあの額を出してこの店にティータイムに来ることはないだろう。


 経済感覚の違いに一抹の不安を覚えつつ店を後にするのだった。


私事で暫く更新出来なくなります。


感想、ご意見は募集してます宜しくお願いします。

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