計画、始動
キクチが、【ゲーム禁止法】を疑いはじめた日の事。
ゲーム現実化計画(GGK)
「いまこの世の中には【ゲーム禁止法】などという法律が認められつつある危険な状況であると私は確信している。さまざまな立場でゲームに関わっていた人がいた。ゲームの開発でメシを食べていた人・ゲームによって新しい友人、もしかしたら親友を得たものだっている。さらにゲームによって救われた人も中には、いるはずだ。人生に悩んでいるときにゲームの主人公に救われたなんて人もね。
はたして国は様々な手段・立場でゲームに関わっていた人の事を考えていたのだろうか。
答えはNOであってほしい。
この法律が可決されたときの事を覚えているだろうか。政治家は口をそろえて「ゲームは脳に悪影響を及ぼす」であるとか「ゲームは現実逃避に過ぎない」「中毒者が増えると働き手がいなくなる。既に国民の多くがゲームに関する仕事に就いているんだ。勘弁してくれ」とね。
これらの発言に憤りを覚えたものがいるはずだろう。ゲームを完全否定され、全てをゲームのせいにする…そんな世の中を私は許すはずがなかった、とね。
そこで私はそう思う君たちに解決への第一歩を踏み出すチャンスを与えようと考えていたんだ。ずっとね。
CRJNによるVRMMOの再現だ。これはまだ技術的に難しい。ゆえに私からは一つ。CRJNを利用したARゲームの試作品作りに協力していただきたい。
これは確実に違法行為にあたる。しかしこれは未来を切り開くために必要なことなのだ。それを分かっていてほしい。なお、これより先のページはCRJN所有者のみがアクセスできる。持っていないものはすぐに立ち去れ。
CRJN所有者諸君に次ぐ
私の計画の大筋を話そう。
参加条件/三十歳以下であること
参加方法/CRJNの【全身認識アプリ】で読み取ったあなたの身体の情報を指定先に送信
参加期間/学生がいる可能性を考慮し、8/1~8/31までとする。なお全日程当日発表された時間の間は必ず参加しなければならない。
場所/ここでは教えない。君がCRJNと向き合えば、必ず答えは見つかる。そして参加することが出来る
人数/未定。君たちが知るのはもう少しあとになるはずだ。
以上が私からの提案だ。君たちにもう一度だけ、確かめる。君たちが本気かどうか。何かを変えようとする強い意志があるか……
不正解
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キクチは少しながら違和感を覚えた。あの男、【不正解】が考えていること。法律を違反していまさら改革に打って出ようと。そして対象をCRJN使用者。つまり一般ピープルとは格が違う人物に呼び掛けていることになる。キクチは例外として。
現在【ゲーム禁止法】を違反する者は格段に減り、年十数件あるかないかの絶滅危惧種だ。大概その多くはゲームが出来ないのに耐えかねてついつい違法なサイトからゲームを購入し、それでゲームをしてしまった、なんてものがほとんど。なのでCRJNを持っているような秩序を理解しているであろう上位者がくだらない、たかがゲームの事に我が身を投げ打つ真似をするほど阿呆ではない。なのに【不正解】はわざわざ対象者をCRJN所有者に限定している。だから本気でこのようなことを書いているのではないのだと確信できた。きっと迷惑メールが届いてしまったのだろう。
サイトを閉じようとしたときにパソコンが着信音を鳴らした。どうやら電話らしい。慌ててパソコンを手にかけ、通話に応答する。
「もしもし、どちら様ですか」
顔が見えているが、冗談交じりでキクチは彼に言う。
「ふざけるなよキクチ。タカタ以外の誰でもないだろうが」
「冗談に決まっているだろ。鵜呑みにするなよ、ヤスヒロ」
ヤスヒロは高校時代の同級生。よくよく殴り合いの喧嘩になりがちの二人。
「ところで、こんな夜中にどうかしたのかよ」
「いや、おれのCRJNに異様な広告が出てきてな」
「おい、その広告ってもしや、【不正解】って奴の?」
「ああその通り。勝手にインターネットに繋がって表示された【ゲーム禁止法】を無くそうって呼び掛けていたサイト」
「俺も出てきたよ。あれってただの迷惑メールじゃなかったのかよ」
「それがそうじゃないらしい。あれは正規のサーバーから発信された、正規のサイトなんだよ。怪しいメールじゃない。【不正解】は本気なんだ。きっと」
念のためさっきのサイトをCRJNの【超高性能ウイルス認知アプリ】に通す。ウイルスなど存在しない世の中だが。
結果は白。全くの異常なし。
「本当らしいな」
「そうだろう。このアプリをくぐり抜けるウイルスは無いはずだ。そして、今の世の中にウイルスはない」
「つまりヤスヒロは何が言いたい」
「このプロジェクトに参加しよう、に決まっているだろ」