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気の実体化

お久しぶりです。ぜひ楽しんでいってください。

 キクチの右手の指先には、もう気が集まっていた。目の前の敵を倒すための技だ。目の前という距離ではない。百メートルはあろう。しかし敵はだ。しかも三メートルは雄に越えるであろう大きさのである。それがキクチ目掛けて走りだしているのだ。


「一気に決めるとするか」 


瞑想モードに入りきったキクチは、タイミングを合わせればいつでも技を放てる。既にイメージはキクチのCRJN内で形成されていた。類人猿を風によって断ち切るというイメージがだ。


そのための風が指先を周り出した。


距離は十分詰まってきている。

呼吸を整え。正確に技がだせるようにする。

 

「よし」 


キクチは走り出した。腕を後ろにし、力を貯める。


指先の風は勢いをましつつある。これが類人猿を倒すための気術魔法らしい。息をまた整えつつ走る。


距離がほどよくなった。腕を勢い良く前に戻して。


「円風式縦断!」


詠唱をし放たれた指先の風は、渦巻いて類人猿に当たった。

類人猿の体はその風によって引き裂かれた。

もがき苦しむこともあまりせず、息絶えさせた。

亡骸はすぐに分解されていく。光となって消えていく。

跡形もなくなった。


草原には類人猿の代わりに透明な水晶がいくつか現れた。

それには壱や弐などの数字がかかれている。

さらに。黒い容器が二つ現れた。


「またこんなもんか」

それらをキクチが拾い、ぼやく。


「【気の実体化】とオーブなんて、見飽きたね」


「ここから早く脱出したくてたまらないですよ、本当に」



気の実体化。これは体力が気術魔法に使う気が同じこの世界独特かもしれない。


気の実体化は、体力が少ないときには回復、あまってしまったときには気術魔法の効果増大の意味がある。

もともと、気術魔法を放つには、周りの気を集めておこなうものの、気を集めることで気が消費される。


なのでむやみに気術魔法を放つと体力、気が失われ、最悪、体力がゼロになる。


ゼロになるとどうなるかはキクチとミヤシタに未知数なので、これ以上は何も言えない。


さて、この気の実体化には、レベルがある。


壱、弐、参、肆、伍と数字が上がれば効き目がよくなる。


いま、キクチたちは弐までがドロップしている。

一体につき四個ドロップするので、五百匹は倒した二人にはまだ千五百という途方もない気の実体化がある。一匹倒すのに一個必要とするためだ。


こんなに集めても仕方がないので、新天地にいくため、女AIアメルバに声をかけたり、マップを見ようとしても、全く反応がない。それでも一つだけはやることがあった。



「また気のおさめどころにいけってことだね」

「やっぱりそうですよね」

「一日一回のこれだけは答えてくれるんでしょう、アメルバさん」


 ̄気のおさめどころにお連れします


移動



すると、眩い光に包まれる。移動した先はある部屋だ。

台のある場所で、それ以外は何もないようだ。ちょうどオーブがひとつ置けるだけのへこみがある。

「キクチからでいいよ」


「嫌なことは先にやりたいタイプだって分かるんですね」


「もう慣れたものだから」


「それじゃあお先に」


キクチはオーブをアイテムからとりだす。念じるといつの間にか手に入っている。


それを前の台座にはめ込む。サイズがまさにぴったりであるから、はまったということが分かりやすい。


はめ込まれると、紫じみた光がオーブをつつんでいく。


キクチは瞑想モードに入る。より深く、より深く。手を腹の前にあて、呼吸を整えていく。

(悪どいイメージ………)

悪に関連するイメージを鮮明に、より鮮明に脳内に描いていく。

(それを放つ、気を放つんだ……)


出来たイメージをオーブの中に流し込むイメージを描いていくと、気の流れが目に見えた。波のようなそれは、キクチの思い描いたイメージそのままの色となり、オーブに吸い込まれていく。


徐々にその流れは急になる。ピークを迎えると、そこから波は穏やかになり、消えていった。

それから周りにあった紫色の光は消え去った。いよいよオーブが出来上がった。


 ̄オーブ、完成です。出来上がったオーブはゲーム開発本部に転送されます。キクチ ケンジさん、お疲れさまでした。


女AI 、アメルバの指示を脳内で聞いたときにはもう、キクチはぐったりとしている様子だった。入っていた力が一気に抜け、上半身から崩れ落ちそうになる、ところをミヤシタがしっかり支えた。


すぐにキクチに【気の実体化】弐 を渡す。キクチはそれを体内に入れ込むイメージを持ちながら、取り込んだ。


それが済むと、さっきのぐったりとした様子から抜け出せたようで、少しずつ元気を取り戻しつつあった。

「ミヤシタさん、ありがとうございます」


「全然大丈夫だよ!本当に無理だけはしないでよ。この作業、【気の実体化】を使ったら楽だってもう知っているでしょう」


「すっかり使うのを忘れていました………以後気を付けます」


前は上司と部下の関係であった二人だから、仕事のミスを怒られている部下を彷彿とさせてしまう絵面だ。

ついつい、キクチも縮こまってしまった。


「別に怒ってはないから。このゲーム、体力がゼロになったらどうなるか聞いていないから、無理しているキクチ君みるとさ、どうも心配になるの。だからもう、無理はしないでね」


怒っているときにはじっくり見つめられてしまうから、キクチは鼓動が高まっているのを感じていた。

「そ、そうですよね。無理は厳禁ですよね」


「そう。無理はしない、無理はしない。じゃあ、なんかあったときはさ、この言葉を思い出すようにしよ」


「そうしましょう」


未知の世界では、無理をしない。ミヤシタの中で、賢明な判断であったと分かる日がもうすぐに、来る気がしていた。


「次は私だね」


「【気の実体化】、使ってくださいね」


「キクチ君じゃないんだから」


同様にオーブを作成し終えた。


「これからまた、あの森に戻るんですよね」


オーブを作成し終えると、先ほどの森に戻ることになってる。あの森に送られてからはずっとそうだ。


「そろそろ別の場所に行きたいかもね。類人猿狩りも、やっぱり飽きるね」


ーアメルバ、しっかりお二人の要望をお聞きいたしておりました。それでは、新たな世界へと、導きましょう。


「アメルバ?」


「キクチ君、いま」


「新たな世界へと、いけるのか、いけるのか」二人とも、気持ちは同じだった。見飽きた世界から脱出できるのだから。


―移動


眩い光の先。一匹のモンスターがいた。洞窟の入り口に移動してきた矢先、久々の新モンスター。


二人は胸を高鳴らせ、瞑想モードに入る。それは全身を包帯で巻かれた、ゾンビのようなものだ。大きさは類人猿ほどではなく、大人の人間くらい。


「ミヤシタさん、技のイメージは」


「剣で斬る」


「じゃあ魔法系でいきますね!」

バトル、スタート。




どうでしたか?

みなさんにどうか幸せがありますように!

HAVE A NICE DAY!


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