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インテリジェクトヒューマン社にて キクチ編

お久しぶりです。生きてます。

月は明け、七月も残すところ僅かとなった二十八日。もうプロジェクトは四日前までにせまってきた日のこと。


試験に合格した二人は、残念ながら違う部署への配属が決まった。


キクチは、自身が使っていた目覚まし時計のような新製品の開発、既存の製品の改良を行う製品開発部へ。そしてタカタは情報通信関連部へと。異なる部署に配属されてしまった。


さて、キクチはこの日、入社してから重宝しているインテリジェクトヒューマン社製目覚まし時計の改良に励んでいた。これが無いと確実にキクチは社を辞めざるを得なくなるであろう。


インテリジェクトヒューマン社は常に高みを目指す。故に脳内でインターネット操作等ができるCRJNをの開発が進み、脳内に埋め込まないと使えないところから、カプセルタイプのものを飲み込むだけで使える改良版まで数年作れたのだ。


普通のデスクワークをするようなスタンスではなく、立ちながら仕事をするスタンスであるこの社。キクチはタブレットで改良版目覚まし時計の開発に勤しんでいた。


「ミヤシタさん、この書類データ一式、そちらのタブレットに転送しますね」


「もう、キクチ君。そんなに堅苦しくなくてもいいのに。もう少しフレンドリーでいいんだよ。」


ミヤシタ二十代の新人で、キクチの先輩だ。笑顔が清々しく、もう少し若く見える。可愛げなところはキクチも薄々勘付いていて、関わりたくとも関わりづらかった。なんせキクチの出身高校は男子校であったため、あまり女子と関わってこなかったのだ。下手に接触しようとしてうまくいかないよりかは、関わりを極力持たない方がいいというのがキクチの考えである。


「そ、そうですよね。申し訳ないです」


「そういうのをやめてほしいの、キクチ君。私くらい柔らかくね」

彼女の美しい目がキクチの目をホールドしていたので、すかさず視線をそらしてしまった。それでも何とか視線を合わせ、親指を立て、

「おっけいです」

それがキクチの限界だった。

「ふふふ。そんな感じよ、そんな感じ」


「……仕事の話に戻ってもいいですか」

「はいはい」


「あの目覚まし時計、アラームを止めるには画面をタップしなきゃいけないじゃないですか。その画面の反応が悪いんですよ。しかも指先などで触らないといけないと。それって。手が乾燥していたりすると不便だと思うんですよ」

「そうね」


「なので、あえてアラームを止めるボタンを改良版に取り込んでみたらどうかと思うんです」

「つまり私に言いたいのは」


「そのボタンのデザインに困っていて、先輩のアイディアが欲しいんです」

少し首を傾げたミヤシタだが、何か思いついたようで、キクチの耳元まで近づき、キクチにしかきこえないように言った。


「私、脳内にCRJN入ってるから、そこでパパっとするだけでデザイン設計できるから。少し待ってね」

突然の距離感の近さに男心が突き動かされるが、

「ありがとうございます」

と無難に返す。

「問題ないから。でも、いきなりキクチ君が仕事頼むなんて、どうかしたの」


「実は、本日限りで退職をすることになりまして……」

「そうだったのね。まだ入社して間もないのに。残念。いままでありがとう」

「こちらこそです」

礼をして去ったキクチはインテリジェクトヒューマン社を退社する手続きを終え、入社した日と同じゲートを通ろうとした。会社はさすがにキクチの申請に驚きを隠せなかったものの、キクチがうまくはぐらかしたので、なんとか辞められた。それでこれからの一か月間の決心をつけていたそのとき。


「キクチ君」

甘いミヤシタの声が。

「なんですか」

「よ、よかったら連絡先交換しない」

「え」

「別にそういう意味じゃないよ。キクチ君が最後にした仕事、目覚まし時計の改良版が出たときに知らせたいからだよ。活き活きしてたから」

「とりあえずこれからも頑張ってくださいミヤシタ先輩」

「よかった。また後でね」

殆ど使われないスマートフォンは久しぶりに着信音を響かせたのだった。

















はやくメインスト―リーを投稿したい・・・

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