よし、いまからギルドに行ってやろう
「兄者ぁ」 そう声を上げながら、アクセがスレイの後方に現れた人物に駆け寄っていく。
駆け寄っていくアクセの動きを追うように、スレイが振り返る。
そして、彼女らが「兄者」「えっくん」と呼んでいる人物の姿を確認する。
そこにいた人物は、身長150cmくらいの小柄な男性だった。
[キャラクターデータ:キャラ名「ヴォルク」性別「男」年齢「25」職業「盗賊」……特徴「低身長」]
おいっ、それは書いちゃダメでしょっ。
スレイが心の中でそうツッコんだ直後、その視線を感じたヴォルクがスレイにいい放った。
「おい、今、なんだこのチビはとか思ったろ?」
そりゃ、そうなりますよねぇ。
ああ、そばにいるルフィアさんの視線が怖い。
「兄者、兄者。あいつ、兄者の敵?」 唐突にアクセがヴォルクに尋ねる。
またその話題を繰り返すのかというスレイの思いとは裏腹に、ヴォルクの答えは単純なものだった。
「なんで?」 ただ一言、アクセにそう聞き返した。
そう。正解は単純なことだったのだ。
下手に敵じゃない敵意はないかを言い訳するのではなく、まずなんでアクセがスレイを敵と認識したかを聞くべきであったのだ。
「ん? 前にれーちゃんが言ってたもん。ギルドってのはめんどー押し付ける敵だって」 元凶はれーちゃんというお方ですかいっ。
ヴォルクが「まったくあいつはぁ」といった表情を見せると、ぼやくようにつぶやいた。
「だとよ。ルフィア、そいつはたぶんギルドの関係者だ。そんな敵対心むき出しの態度はやめてやれ。それに、原因はどうやらてめーの妹のせいみたいだしな。……ったく。あいつは子供になんつう愚痴を」
「まぁ、えっくんが敵じゃないっていうなら……」 ルフィアの表情が戻る。
ようやく彼女から解放された。――と、思ったのも束の間、今度はヴォルクが詰め寄ってきた。
「さてと。で、アンタはなんなんだ?」
ここは、正直に話した方がいいな。……さっきのような思いはゴメンだし。
スレイはヴォルクの案内でログハウスの中に招かれていた。
「つまりは――、スレイ、だっけ? お前の言葉をまとめると、ギルドの人間は俺らがなにを考えているかがわからんから、お前を偵察にだしたと?」
ヴォルクがスレイの話を聞いてそう答えた。……おおむねは合っているのだが、言い方がキツイ。
「まぁ、間違ってはいないんですが、そんな言い方では――」
スレイはすかさずフォローに入ろうとする。が、ヴォルクは――
「よし、いまからギルドに行ってやろう」
「おお。兄者みずから敵の本拠地に。オレもいくオレもいくっ」
「ちょっと、ヴォルクさんにアクセちゃん。――って、ルフィアさん、あなたも黙って杖を見繕うのはやめてくださいっ」
これから殴り込みにでもいかんばかりの勢いのヴォルク、それに便乗しようとしているアクセ。黙って装備品の準備を始めたルフィア。……もはやスレイにはツッコミきれ――手に負えない状況だった。
スレイとEasyGoingの三人がキサラギのギルドにやってきた。
スレイに連れられて三人が来たのか、三人に連れられてスレイがやってきたのか……。まぁ、どっちでもいいことか。
ギルドは様々な人々でにぎわっていた。仕事を求め、仕事依頼の掲示板を眺める者、仕事を終えてか、飲食所で食事を楽しむ者、そして冒険者と見えるいろいろな装備を身につけた者など。
受付の女性がスレイに気づき、声をかけてきた。
「あ、スレイくん。どう――」 スレイにEasyGoingの様子見の結果を聞こうとしたが、連れがいることに気づいて言葉を止めた。
「あら? この方たちは?」 そして、質問を連れてきた三人のことに切り替えた。
スレイが答えを返す前に、アクセが割り込んでくる。
「姉ちゃんが兄者の敵か? やんのか、コラ。やんのか、コラ」
「えーと……、スレイくん?」 受付女性は反応に困ってかスレイに質問を飛ばす。
スレイは笑ってごまかすほかなかった。
そして、スレイは彼らがEasyGoingの方々だと受付嬢に説明する。
と、そこにヴォルクが割り込んできた。
「なに。あんたらがまどろっこしい真似なんかするから、こうして来てやったのさ」
「……ちょっと、スレイくん。いったいどんな説明をしたのよ?」
またしても笑うしかない状況となってしまった。