小さな自由をみつけた
しばらくして、泣き止んだ男の子に聞いた
「君の名前は何?」
「リベラル…」
「いい名前ね」
「うっ、ひぐっ…」
また泣き始めた
「お婆ちゃんがつけてくれた…」
お婆ちゃん…私は祖母の名前すら知らないが、この子にとってお婆ちゃんはとても大切な存在なのだろう
リベラルは自由という意味だ
彼の祖母が彼を大切に思っていたのはあきらかだろう
「さあ、帰ろう…君のお母さんとお父さんがきっと心配してるよ」
「…お母さんとお父さんはいない」
この世界は厳しい
この小さな男の子にも両親がいないのだ
リベラルは不安そうな顔をうかべる
「私の名前は日奈美、よかったら一緒に来る?」
リベラルは何も言わず、ただ私の手を小さな手でぎゅっと握りしめた
「じゃあ、行こうか、バーちゃんリュック入ってね」
「はい…」
バーちゃんは疲れ切っているようだった
宿に着くころには夕日が沈み始めていた
小さな暖かい手が私の手をしっかりと握っていてなぜか安心した
チャリン
宿のドアのベルが鳴る
「遅かったねえー…ってどうしたの?」
リベラルに気づいたみたいだ
リベラルは私の後ろに隠れる
「親戚の子で…この子も私たちの部屋で泊めていいでしょうか?」
「ああ、そうだったのかい、いいよ可愛い子供は大歓迎だ」
「ありがとうございます、おやすみなさい」
「おやすみー」
リベラルと二階にあがって、自分の部屋のドアをあける
「ふうー、何回やっても緊張しますね…」
「うん、そうだねー」
リカルドがそわそわしている
「お姉ちゃん、ほんとにいいの?」
今にも泣きそうだ
「いいの、君こそこんなダサい姉ちゃんといていいの?」
リベラルを抱きしめた
「僕、お姉ちゃんがいい…」
弟がいたら、こんな気持ちなのだろうか…
「わかった、よろしくねリル」
「うん!」
やはり疲れていたのか、リルは私のベットでぐっすり眠っていた
リルが寝ているのを確認してバーちゃんは私に言った
「この子…どうするんですか…」
「安心できる里親が見つかるまで私が面倒みる」
「でも…おかしいでしょう?普通の子供があんな道にはいるとは思えません」
「それはリルの整理がついたら、話してくれるよ」
「必ずトラブルに巻き込まれます」
「それもまとめて面倒見るって言ってるの」
日奈美が向けるまなざしの意志が強くてバーちゃんは何も言えなくなった
「最悪私をおいて逃げればいい」
「あなたねえ…」
ふざけているわけでもなく、嫌味でもなく、本気で日奈美はそう思っていた
もう誰も失いたくないのだ
「おやすみー」
「おやすみなさい」
バーちゃんが寝たのを確認して、静かにベットをでて、カーテンをあける
月の光がはいってきた
夜の静けさと月の光が胸にすっとはいってくる
落ち着く…
世界は残酷だ
あんなに小さな子供にも容赦しない
私が守る…
胸に手をあてて、心で繰り返し呪文のように唱えた