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カインドクロン  作者: 日和日向
12/12

宝物は奪わせない


「お迎えに上がりました」


朝、リルと宿を出るとメガネをかけたいかつい男が立っていた


あの男の執事だろうか




昨日リルと市場で服を売っていると近づいてリルを怒鳴りつけた男

まだわからないが、その男とリルに何かあったらしい


今日はその男の家に行く


真実を知り、リルと無事に帰る


それができれば文句なし


男が黒い車のドアをあけた


「どうぞ」


「はい」


しっかりリルの手を繋ぎ車に乗りこんだ



車にゆられて、無駄に大きくて豪華な家に着いた


「お客様、ようこそいらっしゃいました」


大きな扉を開くとそこにはたくさんのメイドや執事のような人がたくさんいた


その中の少し年老いた人が言った


「ご主人様はもう少しでいらっしゃると思います、あの部屋で少々お待ちくださいませ」


さすがにびっくりする

貴族でもここまで使用人は普通雇わない


よほどの見栄っ張りと見た

多分目に見えるものばかりにとらわれるタイプだ


案内された部屋はこじんまりとしていて中央にテーブルがあって、そのテーブルを挟むようにソファが向かい合っていた


部屋の奥にはクローゼットがあるみたいだ


ソファにリルと腰かける


「失礼します」


使用人が出て行った


ここに来る前私はバーちゃんと作戦をたてた


あの男は何度もリルを連れてくるように言った


おそらくおとなしくリルを渡さなかったら強硬手段にでるつもりだろう


その前になんとか弱みを掴んで…


まだ誰も来る気配がなかったので、部屋を見て回る


部屋の奥にあるクローゼットが気になって、クローゼットに入ると、服やら靴がいっぱいあった


綺麗に掛けられている服に不自然に汚くしわだらけの服がかけられていて


その服をどかすと大事なものですといわんばかりの箱があった


私はこんな盗人みたいなことしたくないんだが…


箱の中には書類があった


「うわ……」


そんなことだろうと思った

書類にはドン引く内容が記されていた


そこにはマフィアと違法なやり取りを記してあった

脅して、金をを奪ったり、奴隷を売りさばいたり


嫌な気分だ

その金で豪華なくらしをしているのか


バッチリ書類を写真にとって、服を元通りにして静かにクローゼットをでた


また部屋をグルグルと回っていると壁に掛けてある一つの絵に目がいった


綺麗な女の人の絵だった

ネックレスをしている


その絵をみていると不思議な気持ちになった


なんかどこかで見たことあるような…


バンッ!


「なにをしている……」


「いや…素敵な絵だなと…」


その絵に見とれていて勢いよく閉まる扉の音にも気づかなかった


無意識に吸い込まれるように絵に近づいていたのだ


「ふんっ!それは王族の絵だ」


「誰ですか?」


「知らん!貰い物だからな」


貰いものってまさかこれも盗んだわけじゃ…


「そんなことより娘!ソイツをどこで拾ってきた!」


リルに指を指し、怒鳴りだす


「久良村の山で見つけました」


「あそこは人にあまりいないはずだぞ!それにっ!」


「ナツメグリユリですか?」


「っ!?」


「まったく…小さな子供をナツメグリユリの危険性を知っていて置いておくなんて」


「人殺しにでも仕立て上げるつもりだったんですか?それとも邪魔になったからナツメグリユリに喰わせるつもりだったとか?」


「お前…!」


「どっちにしろ死んでいるはずのリルがいて驚いているんですよね」


「ちっ!アイツは邪魔だったんだよ」


「愛されて、みんなにちやほやされて!」


「俺が当主になるのに…!」


「だからコイツの両親をまず暗殺した、でもコイツは気づいたんだ」


「暗殺のことを知ったコイツを生かしておけない、殺そうとしたけど殺せなかった、コイツには動くものを止める力があった、コイツの婆もだ」


リベラルは表情豊かで愛らしいのだか、どこか目が合わなかったのはそのせいか…


「リベラルにお前の気味の悪い能力がばれたら、みんなはどう思うだろうな…?って脅したら一気に顔が真っ青になって面白かったよ…ククッ」


クズだ…

その笑い声に虫唾が走る


「コイツは力が強いし、奴隷にできないからそれであのユリの近くに捨てた」


「お婆ちゃんはどこにいったのとか最後は滑稽だったぞ!」


パアンッ!!!


太った体が尻餅をついた


「な、なにするんだ!!痛いじゃないか!!」


太った男の頬を思い切りぶった

ああ、頭がグラグラする


ここで意識を失った


「ふざけんなよ何が痛いだよ!!」


パアンッ!!!


「ヒッ!!」


「リルの家族はもっと痛かった!!!!」


パアンッ!!!


「なんで僕がこんな目に…!」


「それはこっちのセリフだ!!」


「最後にリルの分…リルが一番痛かった…歯食いしばれよ」


「ヒッ」


パアン!!!


ああ、またグラグラする


「ハッ!」


意識が戻る

またやっちゃったし


「よくもお前…侮辱しやがって」


「でも…お前の大切なリルはまた殺すからな…ハッ」


バンッ!!


さっき撮った写真をテーブルに叩き付ける


「お前ッ…!?これッ」


「爪が甘いんですよ、鍵でもかけとけばいいのに」


「盗ったのか!?う、訴えるぞ」


「違いますよ、その写真は床に落ちてるのを”拾ったんですよ”」


「証拠としてその写真は証拠になるかどうか怪しいし、見せたところであなたの立場が危ういですよ?」


「くそっ!!」


ガシっ


「写真を全部捨てて、手をあげろ、言うとおりにしないとコイツを殺すぞ」


リルの首に手をまわし、ナイフをあてていた


おとなしく手をあげる


「ハッ…お前もあの家族と同じでバカだな、生かしておくはずないだろ!」


男がナイフを振り下ろす


「コケェ!!!」


「は?」


すとんと男の腕から抜け、でてきたのはニワトリだった


その隙を見て、手に持っていたナイフを蹴り飛ばす


「なにも気づかなかったの?リルはここに来てから一言も発していなかったのに」


「リルは最初からここにいなかった、ていうかこんな危険ですって書いているような家にわざわざ来させるはずないよ」


もう勝ち目はないとわかったのか泣きそうな顔でビクビクしていた


「す、すまなかった…金はいくらでもある、お願いだ…」


「あなたみたいなのがいるから困るんですよ、金なんていらない」


金はいくらあっても困らないがコイツみたいなのはできるだけいないほうがいい


「リルを傷つけたこと、私は絶対許さないから」


「あと、この使い魔を変身させる魔法誰に教わったかわかる?」


太った怯えた男に耳を近づけて言った


「教えてくれたのは…     」


「ッ!?た、頼む…それだけはやめてくれ!」


さっきまで偉そうにしていた態度とは思えない


「大丈夫…彼女優しいから少し罪が重くなる程度だと思う」


「まあ、貴族とか名声とかくだらないものはもう諦めたほうがいいと思う」


白いニワトリを抱いて、ドアを出る


「お、おい!待ってくれ!」


バタン!


木の扉がやけに重く感じた


「日奈美さんっ!!何してるんですか!?ギリギリだったじゃないですか!怖かったです!」


「ごめんね」


「それにあんな嘘までついて!ひやひやしましたよ!」


「大丈夫だよ、友達だから」



脅しに使ったのはこの国のお姫様の名前だ


三年前、私の服の評判を聞いて姫アンナは私を城に呼んだ


そこで頼まれたのは王族は普通しないような注文だった


「もうあなたにしか頼めないのよ、お願い!」


彼女は王族なのにドレスやきらびやかな恰好はしたくないというのだ

お姫様にそんな服はあげられないと他の服屋は断ったそうだ


そんなアンナに私は好感を持った

最初はそこまでやる気じゃなかったが彼女の人柄にひかれて依頼を引き受けた


私は形にこだわったドレスに見える楽なワンピースを作った


彼女はこれなら楽だしお母さまに怒られないと気に入ってはしゃいでいた

やっぱり品のある服じゃないと怒られるみたいだ


それから定期的に城を訪れるようになり、友達となった


アンナの気取らない話し方や好奇心旺盛な性格が好きでどんどん仲良くなり、服を見立てた後、話をしたり、こっそり抜け出したり

彼女は魔法が得意だったので魔法を私に教え、私は彼女に薬学を教えた


そんな日が続いて三年目

昨日の夜、城に行って相談したら彼女は親友の頼みは断れないっ!と言って快く頼みを聞いてくれた




「そんなわけでアンナと友達っていうのは嘘じゃない、まあ…あの魔法はバーちゃんの訓練の成果だね」


「まったく…びっくりさせないでくださいよ」


たくさんの使用人たちが心配そうにこちらをみている


こんな主人に仕えるなんて可哀想だ


バーちゃんがメイドさんや執事さんに囲まれている


「えっと…あなたたちのご主人様は違法行為をしていたので逮捕します」


ニワトリが説明する


「えっ…?」


使用人達がぽかんと口を開けている


私が説明するよ…


「あなたたちはどちらかというと被害者です、脅されたとか理不尽な理由で働いてる人もいると思います」


「でもこれからは自由です、自分の人生を歩んでください、職がほしい人は城でメイド、執事募集してるのでそちらに」


こんなところで人間関係が役に立つなんて…

使用人がたくさんいるというアンナの予想が的中している

使用人が足りないからお城で働くよう勧めろと昨日アンナに言われていた


彼女、結構やり手なんです


話がおわるとメイド、執事がぽろぽろと涙を零し始めた


「じゃあ私達はこれで」


ふかふか絨毯を踏んで、ニワトリを抱え、大きな扉を開ける


「あ!あの「「ありがとうございます」」


最後に涙で顔をぐしゃぐしゃにして私達に言った


「うん、どういたしまして、これで誰ももう宝物は奪われない」


重い扉を閉めた


「終わりましたね」


「うん」


もうすぐ警察が来る


アンナに頼んだのは指定の時間に警察をこの家に行かせることだった


「ぎゃああああ、出してくれええええ!!!」


なんだか叫び声が聞こえるような…


あの部屋にいる男はしばらくあの部屋から出れないだろう


アンナからポケットから貴重品を盗る方法を教えてもらった

あの部屋の鍵は今私の手の中にある


本当にお姫様がやることじゃないと思う

まあ、そこが好きなのだが


「お城に行こう、アンナとリルが待ってる」


「はい」


何事にも終わりと始まりがある


今悪事が一つ終わった


次はなにが始まるのだろうか























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