表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/9

プロローグ

不定期投稿となる可能性がありますが、よろしくお願いします。

 東京杉並区の住宅街にある一軒家の一室で、部屋の住人である小林優理は、勉強机の前に座って小説を読んでいたが、突如として顔を上げ、音を立てて椅子から立ち上がった。

 まだ僅かに幼さが残る顔立ちに、深い栗色の短い髪と瞳。自分の女らしさなどに興味のない彼女は、初夏にはまだはやいのだが、最近部屋着として紺色の甚平を愛用していた。これが意外と軽くて涼しく、動きやすいのだ。服装はともかく、彼女は素早く周囲を見回し、それが外からの音ではなく、直接頭に響いてくるものであることを確かめた。

(……何か聞こえる。この感じ――『心声』(こえ)? この世界には存在しない筈の異世界の術法……。でも、確かに聞こえる……)

 一度、異世界に召喚されたことがあり、向こうではアルの呼び名を持つ、異世界大好きなその少女は、微かに聞こえるその声を聞き取ろうと、眼を閉じると意識を集中する。

 すると、目の前に、淡い光を湛えた白い玉が飛び込むようにして空間転移して来た。

 双方の視線が合った。そして再び運命の歯車が廻り始める――。


 同時刻、異世界メント国領にある、時空の接点痕。王都レオカリスから程近い草原の中、突然目の前に空間転移して来た見知った顔に、赤紫の髪の青年――フィアレスは、足を止めて声をかけた。

「……アルか?」

 かつて異世界から来た、価値観の違う知り合い。ライバルと言ってもいいだろう。

 だがアルは、フィアレスの言葉など聞こえていない様子で、その瞳は何も映しておらず、フィアレスの質問にも答えない。しかもアルの姿は淡い光に包まれながら揺らいで、酷く不安定に見えた。そして、一際大きな揺らぎがアルの姿を包み込んだ後――目の前にいたのは、かつての旅の知りあいではなかった。

 その姿は見る間に、見たこともない黒髪、黒い瞳の少年のものに変わっていた。年はアルと同じ十代半ば位だろうか。着ていた紺色の衣服も黒の上下と緑のマントになっている。

(姿が変わった――?)

 その奇妙な現象に、流石に少しばかり驚いて、フィアレスは橙色の瞳を二、三度瞬いた。

「お前――誰だ? アルじゃないのか」

 やや警戒しながら目の前の少年に訊ねると、今度は反応が返って来た。

「アルって?」

 少年は訳が解らないといった顔で、フィアレスを見つめて聞き返した――。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ