第一話 鍛歩という少年と世界
暗い部屋。錆びた鉄の匂いがとても辛い。
薄い毛布に包まって寝ていた鍛歩、一日の疲れと壮絶ないじめによって熱を出していた。
気付いた者はいない、気付いたとしても看病をするものもいない。
ああ、これがここ(場所)のルールなのだから仕方ないのであろうか。
少年は何処にでもいるような明るくて気のいい優しい少年だった。
黒い髪に黒い目、部活に野球をしていたためか腹筋がうっすらと見えていた。顔立ちは中々整っていたが女のようなくりっとした大きい目に腹は割れているのになぜかなめらかながっしりとしていない体型のことでよく女子と間違われた。
友達思いで親孝行でスポーツ万能、勉強は少し苦手だったけれど特別おかしいところは無かった。
少し大人びていて、小さい頃から難しい言葉を使ったり読めないはずの漢字が沢山詰まった本を読んでいたりと不思議な行動をとることは度々あったがそれもそこまでの話。なんらおかしいところは無い。
そんなある日、少年は50年に一度のくじ引きで、赤を、引いてしまった。
50年に一度、全世界が一斉に行うくじ引きがある。
国ごとに変わるので、もしかしたら綱引きやじゃんけんであったのかもしれないがとにかく、日本の、少年が住んでいるこの地域ではくじ引きだったのだ。
内容は、表向きには将来に有望な子供を育てるまたは世界に必要な人材にするなどの理由があるが、本来の目的はいわば人体実験。異世界へのゲートを開くときも開いたときなども彼らが使われてしまうのだ。
そして一度入ると絶対に出してもらえない。死んでしまったとしても、解剖され臓器移植など散々空っぽにされた挙句に燃やされて灰になって帰ってくるのだ。
国民が知っているのはそれだけであったが、それだけであっても少年は生きて帰ってこられないということが容易にわかるだろう。
この世界は、地球と言う名前で、水があり緑があり豊かな資源は少なからずあった。
だがそれも、ビルがたち家が建ち土地が減り森を切り開いて資源が減り昔の話となってしまった。
そんなとき、ある科学者が異世界のゲートを開いた。放置され続けていた奴隷が極限までの状態になったときにたったの1秒であったが開いたのだ。
勿論、ゲートの研究をしていたわけではなく全くの偶然のこと。
はじめは科学者の言い分を信じられない人の方が多かったが、2人目が現れたときに世界は変わってしまった。
科学者達は研究に研究を重ね、世界中のそれにかかわる文を読み、そしてほんのかけらの部分であったがそれを理解した。
10年に1年だけ、ゲートの開きやすいときがあるのだ。
身体強化の薬のことだってそうだった。
肉体労働を続ける人や眠らずに何かを進める人のために作ろうというのが始まりだったというのに何処からか湧き出た軍事活用の件により強い薬を開発し始めてしまったのだ。
ありがちな話と思ってしまうかもしれない。だが、彼らにとっては大真面目で世紀の大発見や歴史に名を残す重要なことだったのだ。
兵器を作ろうというのもあった。
だが全てを自分で考えるうえで命令を絶対忠実にきく機械人間を作り出すのには費用と多大な時間があまりにも不足していたのだ。
そこで現れたのがくじで選ばれる人間達。
可哀想に、彼らは自分で考える上で命令を絶対忠実強制的にきくロボット(機械人間)となってしまったのだ。
壊れてしまった(精神的に)人間達は、容姿の良い者は愛玩用に、体つきの良い者は肉体労働にと堕ちて行く。
彼らには拒否権はない。
ああ、これがここ(世界)のルールなのだから仕方ないのであろうか。
そうして今年も195名の男女が自由に手を振りさよならをした。
ロボット(機械人間)という文があったと思いますが、これはできればロボット=機械人間と書いたつもりなのでロボット=機械人間と読んでほしいです。




