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夜の森を駆ける

またもや短いです……

 真夜中ではないとはいえ、もう薄暗い森の中を馬で駆け抜けるにはそれ相応の技術がいる。急いで森の中を進みつないであった二頭の馬のうち黒い毛並みの馬にエクレを乗せ、その後ろにまたがると、クレインはごめんと一言いってから素早く鞭を馬に振るった。


「アインス! あの場所な!」

「ええ、わかりました! 行ってください!」

 黒馬が駆け出し、アインスの馬が遅れて出て、その馬の背からカノンが森の中に消える。少しいった辺りでアインスの馬が止まり、背を向けた。暫くして聞こえる爆発音はアインスが放った魔術だろう。


「この音は!? どうなっているんです?」

「大丈夫だ、アインスだろ。所々聞こえる鉄を打ち合う音がカノンかな? 派手にやってる。ま、そっちの方がこっちの目が眩んでくれていいんだろうけど、な!」


 言いながら腰から取り出した短剣を木の上の方に投げつける。くぐもった悲鳴のあとに何かが落ちるような音がした。思わずクレインの背中にしがみつこうとして……迷惑になるかと感じ、耳を塞いでこらえる。


「……離れんなよ、落ちんぞ」

 k耳を塞いだことで少しばかり離れたエクレの体を自分の体に押し付けるよう手を動かす。ただでさえ暗い森の中を早がけしてるのだ。馴れないエクレには相当怖いだろう、先程よりも強くしがみついてきた。


 爆発音から遠ざかるように駈け、数十分になるだろうか。森の中を進み、樹の影から光が差し込むようになってきたところで手綱を引っ張り、馬を止めた。


「クレイン、なぜこんなところで止まるんです! こんなところではすぐに見つかってしまいます! それにアインスとカノンがまだ追い付いてません!」

「良いんだよ、もうすぐ来るし。それよりエクレ、かなりとばしてきたんだが、大丈夫か? 葉っぱで切り傷とか出来てないか?」

「私は……大丈夫です。それよりもカノン達が……どうしましょう、私のせいです、私が、巻き込んじゃったから……」

「んなの関係ねぇよ。それよりお客さんだ。目、瞑ってろ。」


 馬から降りると長剣を腰から抜き出し、構える。目をつぶり、森の静かさに身を委ね、耳をすませる。

 聞こえてきた空気を切り裂く音。真横に刃を瞬時に滑らせるとカキンと音がした。杭のようなものが地面に転がる。


「そこだな! 奏流斬!」

 鮮血が舞う。血の臭いが辺りに広がる。エクレは馬上で独り身を強ばらせた。


 だが、追い付いてきていた賊は独りではなかったようで。


 ガサリと音をたてたのはエクレの後ろの茂み。剣を持った賊が二人丸腰のエクレに襲いかかる。急いで行こうとするが如何せん距離がありすぎる。しまったさっきの暗器使いは囮だったかと呟くがもう遅い。


「きゃあ! ク、クレイン! こっちからも!」

「わかってる! ちくしょう! エクレ! 見るんじゃねぇぞ!」

 髪留めを外す。広がる黒髪に混じった白髪。それは彼が忌み嫌われる存在であることを示していた。髪を見て一瞬怯む賊。クレインはその隙を見て呪歌を唱える。


「誰かを救うために 今こそユリウスの力を此に!」

 白髪の回りの黒髪から少しずつ色が抜け落ちる。まるでこれから使う力の代償とも言うように。


 体から黒い靄のようなものが吹き出し、クレインのスピードが異様なほど上がる。剣を構えるのも走るのも速すぎるほどに。

「ハァァァ! 奏流錬牙斬!」

 クレインの体から黒い靄のようなものが現れる。それは剣にまとわりつく。素早さの上がった体でその剣を何度も敵に斬りつける。いろんな方向から瞬時に場所を変えながら。……そして止めだ! の一言で上段に構え、敵の頭の上から勢いよく降り下ろす。衝撃波と剣撃で呆気なく賊は倒れた。


「……一応、もう目開けていいぞ。」


 重い声で言うクレイン。


「……ええ、ありがとうです、クレイン。また助けていただいちゃいましたね。」

「もうすぐカノンたちも来る。合流したらさっさと安全なところいくから、安心してくれ。」

「はい……そう言えばカノン達は何を……」


「エクレちゃん呼んだ?」


 近くからカノンの声が聞こえた。きょろきょろと辺りを見渡すが、エクレの目はカノンの服のはしすらもとらえられない。

「おー、もう終わったのか?」

 クレインが声をかけると木の枝からぴょんと飛び出し、地面に身軽に着地する。


「うん、全部。でもね、アインスがぶっ倒れちゃったからこれからつれて来ようかと思ってる~。」

「ぶっ倒れたって何で……ああ、あれ使ったのか……後でボスに怒られるぞ、あいつ……。取り合えず掃除は終わったんだろ? 先山猫の巣向かってるぞ。エクレにこれ以上負担はかけられねぇ。馴れない馬で疲れただろうしな。」

「はいはーい。お茶でも飲みながらゆっくり待っててねー。すぐ行くから。」


 軽い口調で場を和ましてから木の枝を跳び移りながらまた消えていく。安心したのだろうか、いつの間にかエクレはうとうととしてしまっていた。クレインが気付き、寝ていいぞ、と声をかけてくれた辺りから記憶がない。気付くと……見知らぬ部屋にいた。

 思い体を動かし起き上がると軽い頭痛がする。体の節々もあちこち痛い。


「おや、気付きましたか、エクレ。隣のベッドですよ、私です、アインスです。無事なようで何よりですね。」

 声のした方を振り向くと部屋の端に備え付けられたベッドの上に首だけを動かした状態でアインスが寝ていた。

「アインス! 良かったです、無事だったんですね。」

「心配なさらずとも、そこまで柔な体じゃないですし。動けますか? 動けるなら下に行ってください。クレインとカノンが心配してます。」

遅くなってすみません! 読んでくれてありがとうございます!

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