カノンとの邂逅
遅くなって……本当にすみません!
「ばぁ! ビックリした? ボクだよカノンだよ! アインスおひさー! クレインはー? 二人に伝言持ってきたんだケド? そして何か知らない……人じゃないね、エクレーム様、だよね? ボクのことは知らないと思うけれど一応おひさー? ボクはカノン、よろしくね! で、アインス、状況は?」
ハイテンションでまくし立てながら入ってきたのは顔も声も中性的なカノンという少年。男にしては長めの青緑の髪を長くはないポニーテールでまとめあげ、半袖白色のワイシャツに黒のベストを着てホットパンツという露出が多い格好だ。
カノンは暗殺者ギルド所属、それもギルド内では上位に食い込む実力者だ。情報収集伝令暗殺といった裏の仕事をするカノンに、今の派手な姿はおかしい。恐らく娯楽施設である闘技場にふさわしい格好をしているのだろう。
「状況なんて貴方が一番良く知ってるでしょう、今は待機中です。カノン、何用ですか? アルフェリオからですか?」
驚きから覚め、作業に戻り淡々と荷を作りながらアインスが問う。
「暇潰しと~お手伝い、かな? 後知ってるかもだケド、下町の山猫の巣の近くには今不審馬車が現れてるから。ついでにお掃除してこいってー。アルフェリオくんからのご命令です! そのお手伝いしても良いって言われたんだ! 久し振りに腕がなっちゃうよね! アルフェリオから色々起こるから一杯遊んできて良いって言われてるし、クレインも一緒だから色々できるし楽しみで楽しみで!」
それを聞いて頭を抱えるアインス。無理もない、今までカノンが手伝ってきた案件は大概がろくなもんじゃないのだ。アルフェリオからということは相当厄介な事になるのだろう。
状況がいまいち飲み込めていないエクレがおどおどとアインスに判断をあおぐ。
「ええと、アインス、私は何をしたら良いんでしょう?」
これから何かが起こりそうだと感じたエクレは今自分にできることをと指示役へ呼び掛けた。
「あ、エクレさん、呼び方変えていただいてありがとうございます。そっちの方がお姫様だってばれにくそうですね、二人とも呼びすてで構いませんし。もうすぐしたらクレインが帰ってくるのでそこでまた話し合い……おかえりなさいクレイン君。食料はてに入りました?」
バサリと広がる布地。そこから突き出たのは足。両手にバランスを取りながら盆をもち、流れるような動きで腰から短針を取り出すとアインスとカノンの頭部に向かって同時に投げつけた。
後ろに一歩引き、避けるアインスとくるりと飛び上がり避けるカノン。
何の予備動作もなしに投げられたそれは天幕の布を突き抜けーー刺さった所からくぐもった悲鳴が聞こえた。誰かが潜んでいたらしい。
「アインス、食事は移動できるもんにしてもらったからさっさとここ出るぞ。だんだん薄暗くなってきているからちょうどいいはずだ。カノン、支度は? どうなってる?」
「馬を二頭奥の森に隠してあるよー。アインスはわかんないけどクレインは乗れるでしょ? 馬。エクレちゃん乗せるの出来るよねクレイン。ボクアインスのに乗って遊撃するからさ。」
「決まりですね、私の後ろにカノンですか。急ぎましょう。」
スチャリと眼鏡を押し上げながらアインスが言った後、三人が頷き合う。
「え、えっと、私良く飲み込めてないので……任せます。どうかお願いします、クレイン、アインス、カノン……さん。」
ええーボクも呼び捨てしてよー、とカノンの声が響く。わざと明るくしようとしているのが声音から感じられた。
「行きましょう、カノン、クレイン、二人とも頼みましたよ。」
天幕の入り口近くまでクレインとカノンを先頭に並ぶ。アインスがパチンと指をならすと、それを合図に布を勢い良く押し明け、全員飛び出した。
次の投稿の目処が忙しすぎてたってませんが……出来る限り早めに出来るよう頑張ります!
5月15日 タイトルを変更しました