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馬車は酔うものです

ものすっごく遅くなったことをここにお詫びいたします……見てくれる方がいれば幸いです。

揺れ動く馬車に身を任せる。アルフェリオのこむずかしい話はクレインにとって聞き流すものだ。いちいち聞いていたら頭が持たない。後でアインスに要点だけ教えてもらえばいいだろうと窓から外を眺めていた。2台の馬車のやり取りをするために取り付けられた魔法通信器がノイズをまき散らしながらもアインスの声を届ける。


「で、王都では揉めているわけだ。後継者争いの激化が絶えなくて大変なことになってる。第一王子ステファノかエクレ、第四王女エリザベーティアのどれかに決まるのは確実だけど今エクレは行方不明ってことになっているから実質三つ巴じゃなくて睨みあい。そこにエクレが戻ったらもっと大変なことになるっていうのに正教会は戻して少しでも実権が握れるようにしたいから追っ手と、エクレを確実に殺したい第四王女派閥、ステファノ派閥がカノンみたいな殺し屋雇って来る、と……ややこしいな……それで追っ手が来ているわけか。」


『 それでさっきの魔術やった理由はなんですかアルフェリオ。まさか何の理由もなしに壊そうとしたんですか? もしそういうことならただじゃすみませんよ?』


「あれやったの僕じゃないよ……いや正確に言うならやったのは僕だけど僕は仕掛けておいただけっていうか。仕掛けておいた罠に魔法ぶつけて威力上げたみたいな。」

『……どういうことです? あなた以外にこんなことする馬鹿なんて居る筈が……まさか王立特務部隊ですか? でもこんな早く動くものですかね、いくら王女がいるとしたって早すぎやしませんか?』

王立特務部隊とは王家の安全と国家の安泰を最優先に独自に動く部隊だ。こんなに早く動くなんていろいろ手順をかっ飛ばしてないだろうか。

「早かあないさ。狙いは王女の奪還と王位継承争いに参加させる事だろうね。僕らは王女をさらった怪しい人物ってわけだ。さて、ここでひとまとめしようか。」


 そう言うとアルフェリオはペンと紙を取り出しさらさらと書き付け始めた。真ん中に大きい丸、その丸の中に三等分するように三つの輪を描いていく。逆三角形の様な輪の二つ並んだ輪に1と3、その下に4と入れると丸の外に小さな丸を書きそこに大きい丸から矢印を引っ張った。

「この大きな輪が王都ね。1とか3は王女たちの事。今王都はこんな感じになってるの。

軍事のステファノと魔術のエリザベーティアの睨みあい、それに割って入ろうとしている宗教団体……正教会のジジイども。で、この矢印が今僕らに来ている追っ手。まあこんのくらい軽い感じに分かっとけばいいよ。」

「お、おう、俺は何となくわかった。」

「私もです……。何やら大変なことになってるんですね。」

「で、これからの予定は……変えるよ、これからまっすぐ港町マーレウィアに向かう。そこで智の国へ行くよ。亡命だ。智の国でクレインとアインスの魔眼と髪をどうするかと、姫様の知識を付けなきゃ。そうしているうちに動乱も落ち着くだろう。ただ、問題があるとすれば水の遺跡通らなきゃいけないんだよね。追っ手を撒いて山越えするよ。ソドの近くまで馬車へ行って水の遺跡からザール山へ。ザール山を越えればマーレウィアだから。アインス、頭に叩き込んだ? 良いね、行くよ。まずは谷間の町 ソドだ。」


「正確変わりすぎじゃありませんかアルフェリオさん……? お前ってそんなに真面目キャラだっけ。」

「そんな事ないよー! ボクは知ってるもん! こいつの仮面はすごいんだから! だまされちゃだめだよエクレ! あとついでにクレイン。」

「おやおや心外ですねぇ……私は真面目な話をしただけだというのに……そうは思いませんかアインス。ねえ聞こえてますか?」

『 戯れがすぎるのは事実なんですからしかと受け止めたらどうですか。』

「なぜいきなり硬めの敬語になったんですアインス。」

『 あなたとできる限り距離をおこうと思いまして。』

「ひっ酷い!! 私はもう泣きたいですよ……よよよ。」

「じゃ、護衛の任務を果たしてきますか」

そう言うとクレインは馬車の窓から躍りでて屋根に上る。カノンの特等席となっているそこからは黒づくめのアサシンが至るところに見えた。

「ちょっとクレイン何してんのさ。せっかくボクが頑張ってるのに。ジャマだよぉ。」

「お前の投石と……何つったっけあの針。千本だっけ? 千本じゃ間に合わないだろ。加勢してやるよ!」

「いーらーなーいー!! ボクはボクでうまくやってんの! 大体落ちたらどうするのさ。戻れないでしょ。その点ボクは身軽だし簡単に戻れるってワケ。これはマルティア族の利点だよねぇ。ちっさくて身軽。まさに隠密にうってつけ! 権力者が重宝したのも頷けるでしょ?」

そう言うとまた石を投げる。狙いを定めて投げた石は後方の木の上にいた王立特務部隊の黒装束に当たった。

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