突然の襲来
月一更新すら守れないとは……
長いこと和やかにカードゲームに興じていた。それこそ時間を忘れるくらいに。だからなのか、アインスは普通ならあり得ないミスをした。体調不良では済まされないミスを。それに気づいたのはカノンが帰ってきてからだった。帰ってきて早々したくは終わった? と訪ねられてはじめてもう一方の連絡手段の存在を思い出したのだ。そしてミスをおかしたのはアインスだけではなかった。
「あああ忘れてた! アルフェリオと会ってこれから馬車で来るって、案内するよって、でいたずらしちゃおってマスター、アルフェリオ様が言い出して、僕たち止められなくて、ああもうカインも悪ノリで! 今馬車からアルフェリオとカインとカランっていう女の子の護衛と一緒に庭に降りてる! ええとそのごめんなさい! ……というわけで謝ったから良いよね!? ボクはエクレと逃げるから! 囮よろしくネ!」
「ほう……この私の思い出がたっぷりつまった屋敷を潰せそうな上級地属性魔術起こしていたずらですか……しかも行ったのがあいつとか最悪じゃないですか……クレイン君この場は任せました私急用ができたのでこれで失礼を」
「てめえら逃げんな死ぬときは俺も一緒だじゃなくっておいカノンふざけんな。……もうしかたねえだろ諦めろよアインス。お前が色々な意味でアルフェリオに気に入られてるから会いたくないのは知ってっけど、ギルド連合の依頼受けたときからこうなる運命だったんだ……俺も会いたくねぇけど会わなきゃダメだろ……」
見知らぬアルフェリオという人の話題がポンポンと出てくる。それも悪い意味のようだ。どうやら相当な変人らしい。
「あ、アルフェリオさんってそんな変な人なんです?」
会ったことがないエクレが不思議そうな顔をした。今まで人に会うことじたい少なかったのだ。変人に対する経験値は一番低い。困ったような顔をしてカノンがエクレに向き直る。
「変というか……エクレ様、会っちゃダメです。あの人変人なんだけど優秀すぎて色々と策練ってくるから。感化されちゃう染まっちゃう洗脳されてアルフェリオは 仲間を てに入れた になっちゃう。あの人に染まっちゃダメ、絶対。」
必死そうな顔でカノンは訴えた。何で? と疑問を示すようにエクレの首が傾げられる。桃色の髪がゆらりと揺れた。
「カノン、様付けなんて他人行儀です?……お友達になれたんだからエクレって呼んでほしいです……。駄目です?」
「いやそうじゃなくて、友達って言うか主従関係って言うか……ボクの種族的に……ってそんなことじゃない、早く逃げないと普通の人があんなのだってエクレに思われたら困る! アルフェリオはエクレに会わせちゃダメなの絶対!」
「とにかく逃げましょう、ええ早く。あんな人に会いたくないです。一番被害が少ないだろうクレイン君囮お願いします。」
「おい勝手に囮にすんなするならアインスだろあいつお前のこと好きだから一番効果が良い。……おちつけよ、どうせ家の前まで来てんだろ、あの先見眼鏡。家っつーか規模的に屋敷だけど。トランプやってる間馬車の音と馬のいななきがが聞こえたぜ……。聞こえただろ? 諦めてお茶の用意でもしようぜ……」
クレインの言葉にエクレを除いたみんながため息をつく。諦めムードが漂い始めた時、アインスの背後から聞いたことのない男の声がした。
「わかった、今までの話を聞いているとアインスを縛って屋敷の前においてそのうちに逃げるってことだね!? 大歓迎だよさあこっちへ来てお話ししようアインス君! 具体的に言えば君の部屋に有るベッドの上でこの僕と!」
「ギャアーーー嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ滅んでください! アイスレイン!」
気配もなく話に入ってきた男にアインスは詠唱をする時間すら飛ばして魔術をぶつける。制御が不足した氷の散弾が雨のように降り注ぐ。いつもなら急所を外して擦り傷で済ませるはずのそれは体調が悪い今の状態では無理だったようだ。このままでは満遍なくアルフェリオの体に突き刺さる。が彼は意にもかいさずただ眺めて指をならした。後ろから躍り出た護衛の少女が礫を欠片に変える。アイスダストのようにキラキラと砕けた欠片が舞った。
「アインス落ち着け! お前今魔法禁止だろ! マナが暴走したらどうする! アルフェリオさんもアインスからかわないでください!」
「ハイハイわかったよー。……カラン、アインスを馬車へ。あの縄使って良いから。」
「yes、マスター。」
アインスの抵抗むなしくぐるぐる巻きにされたアインスが小さな少女に運ばれてくのを眺め、それから男に向き直る。ゆったりと纏った東洋の服は趣味のものだろう。腰まで有る金の髪が紺の着物に映える。男が眼鏡を押し上げると場の空気が変わった。
「……さて。お初に目にかかります。ギルド連合『ユニオン』の五角が一角、商業ギルド代表、『アルフェリオ商会』ギルドリーダーのアルフェリオと申します。エクレーム姫様におかれましては、王選が始まろうとしている中無事に王都を抜けられたようで何よりです。積もる話は、馬車の中で全てお話いたします。付いてきてくださいますか。」
言われてエクレのスイッチが変わる。ただのエクレという少女のものからエクレームという王女に切り替えると王族に合うように鋭く言葉を発した。
「……案内をしてください、アルフェリオ。クレイン、行きましょう。カノン、護衛を。」
「yes.MyMaster. ちゃーーんとこのカノンちゃんが守るよ! 安心してね、エクレ様☆ そしてアルフェリオ、説明ちゃんとしないといくら元ご主人様だからって容赦しないんだから☆」
「俺も……聞きたいこといっぱい有るし。アルフェリオちゃんと話せよ、アインスは何か勘づいていたみたいだけど、俺はちっとも解ってないんだからな。」
「馬鹿なのは変わってないねぇクレイン……。さあ、行きましょう。服などは準備してありますので着の身着のままで結構です。」
「お気遣い、感謝しますアルフェリオ。」
階段を降り、馬車に向かう。2台有るうちの一つに横になったアインスが寝かされ、荷物と共に固定されているのが見えた。猿轡を噛まされどうにかして動こうと必死になっている芋虫が正直知り合いだとは信じたくない。クレインは現実逃避を始めていた。
元々巻き込まれたに等しいのだ。依頼は受けたがこんな大変なことになるとは思っていなかった。
(やっぱあいつ、俺嫌いだわ……あのテンション付いてけねぇし、何より全てわかった上で遊んでる感が丸見えだし……正直味方でも厄介だけど味方でよかったわ……。)
アインスを固定しているのは魔術を使わせないためだろう。ご丁寧に魔力封じのロープを使って縛っている。話してもいないのに魔力暴走が起こっていることが解っているとは化け物か。いやサトリだ。サトリと呼ぼうこれから。馬車に乗りながらふとそんなことを考えた。鞭が当てられ馬が駆け出す。どこに行くかも知らされぬまま。目の前に有るムカつく金の髪が風にあおられ揺れた。
遅くなりました。今回だらだらと間を開けながら書いたため自分でも矛盾が生じています……後で直し決定ですな……これは。




