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愚痴ぐらいは聞いてやる。  作者: ミスター
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店と商人

これは店を持つ時の話。

まだ愛剣も飾ってなければ「賢者に聞け(笑)」なんてギルドで言われることもない。

そんな時のお話。



「本当にこんな所でいいんですか?」


王都の路地裏のボロい酒場を見て鱗族の商人カリュートは言う。

商人らしくきれいに整えられた服装と深緑の鱗。

鷹よりも鋭い縦割れの瞳に190cm以上の長身。

一見強そうに見えるが本来の鱗族のたくましさはなく、実にひょろい。

なんか緑の牛蒡みたいだ…。

以前冒険者時代に農民上がりの山賊に襲われ、泣いていた所を助けて以来、懇意にさせてもらっている。

俺的には助けたとき『浦島太郎』を思い出した。

現状は『鶴の恩返し』だが。


「こんなところだからだよ、直せばそれなりになるだろうし何よりあまり忙しくても人を雇う金がない」


そう金がない。

一様冒険者をしていたのだけど予想外のことで貯えが消えた。

くそ!あの医者ぼりやがって!あんだけ金取って完治しないとかヤブもいいとこだ。

師匠が治癒魔法を使ってくれなかったらまだベットの上だったかもしれん。


「確かにコウイチ殿はその怪我もあり他ではお金様を貸していただけないでしょうし。この店も私が二束三文で手に入れたものですしな」


「カリュートにはいくら感謝してもし足りないくらいだ。いくら二束三文とはいえ店を買ったんだ。しかも採算がとれるかどうかも分からないこんな俺にタダ同然で貸してくれるんだから」


このまま営業しても自転車操業になりかねん。


「それこそ無粋ですな、我々鱗族は受けた恩は必ず返すのが決まりなのです。もっともこの程度で恩を返したとは言い難いですが、もちろんこの店への卸は私カリュートが務めさせていただきます。」


「正直十分すぎるほど返してもらった…と言うのは無粋なんだろう?有難く受けさせてもらうよ、これからもよろしくカリュート」


「はい、よろしくお願いします。コウイチ殿」


そういってこちらに一礼するカリュート。

俺は苦笑を浮かべるしかなかった。

以前冒険者の鱗族が毒をくらっていたので治療薬を飲ませたら、同じことを言って町の露店で売っているパゲア(ハンバーガーのようなもの。ただし何の肉かは不明)をおごってもらい「これで恩は返した。」と言って去って行った。

どうやら同じ鱗族でも認識に差があるみたいだ。


「そういえばこの店の名前は決まったのですか?」


「店の名前は『ネリネ』だよ」


「ねりね、ですか?失礼ですがどういった意味で?」


ネリネは地球の花当然コチラの人は知らない。


「ネリネは俺の故郷の花の名なんだ、そしてその名に意味を持つ花言葉と言うのが有ってな。ネリネの花言葉は『また会う日を楽しみに』と『忍耐』の意味を持つんだ、俺の店にピッタリだろう?」


「ほ〜、なるほど。それは確かにぴったりですな!しかし流石コウイチ殿よく知っておられる」



俺は苦笑を浮かべながら『地球』の事を思い出す。

俺のばあちゃんが好きだった花で、花言葉も教えてもらった。

ばあちゃんもまさか俺が異世界に来るなんて思ってなかったろだろう。



と、まあこれが俺の店「ネリネ」ができるまでの話だ。

あれからいろいろあったが何とかやってる。

働かないと飯が食えないのは、どこも一緒という訳だ…世知辛れぇな。

ん、そろそろ来る時間か?


「おはようございますコウイチ殿!注文の品をお届けに上がりました!」


相変わらずの鋭い目つきで愛想のいい声を上げながら店内に入って来たカリュート。

俺もそれに答えるように言葉を返す。


「いらっしゃい、それじゃ運んでしまおう。茶くらい飲んで行きな」


さあ、開店準備だ。

今日もネリネの花言葉と共にバーは営業を開始する。

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