第一話 長袖の服
これは千年の花の番外連載みたいなモノです。千が花と別れてどうなったか。みたいなかんじです。花のもいつか書こうと思っています。とりあえず千の話という事で…。
私の彼氏『上城 千』は二年前の夏、この学園に転入して来た。
あの日、教室の窓際の一番後ろの席でよく空を眺めては長いため息を吐いていた。
日に透ける黒い髪がとても綺麗で私たちはただ、じっと彼を見た。
このとき私は初めて学級委員長をやっていてよかったと心から思った。
内気で暗い私は学級委員長でもなかったらきっと一生話すことすら出来なかった。
彼は悲しそうに微笑んでいた。
いまでも忘れられない、それが出会い。
それからというもの、彼は日を追うごとに明るくなっていった。
よく話し、笑う。そんな彼が私の中で恋愛対象となるのに時間はかからなかった。
私達が付き合い始めたのは出会ってからちょうど一年たった日だった。
「千君はどうしていつも長袖なの?暑くないの?」
私が右腕に触れようとすると彼は腕を私から遠ざけた。
「ごめんなさい。」
「ゴメン。つい…。」
千はいつも長袖の服を着ている。それはまるで何かを隠してでもいるかのようだ。柚花はじっと千の右腕をみた。
とくに変わったところは見られない。ではなぜ彼は必要以上に腕を隠す?
「私にはいまの千君はなにかに脅えているっていうか…なにかから自分を守っているようにしか見えないよ。ねぇ、千君は私の事好きだって言ってくれたけど、それは真実?私は今も千君を好きでいていいの?これじゃ、付き合う前のほうが近かった。」
積もり積もった一年分の私の想い。
涙と一緒に流れてくれればこんなに辛くはない。
「好きなの。千君がなにも言ってくれないと私、何もわからない。千君の事、好きでいていいのかも分からなくなる。」
その後、二人はしばらくなにも言わなかった。言えなかった。
千君が言葉を飲み込んだから。




