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第7話:恋の予感

翌朝、施設の庭にはまだ朝露が残り、淡い光が葉の上できらめいていた。

葵は臆病な犬を肩に乗せ、庭の小道を歩く。亮が隣で笑顔を見せる。

「おはよう、葵。犬も元気そうだね」

その声に、胸の奥が小さく跳ねる。友情の温かさと、何か新しい感情が重なる瞬間だった。


その時、奏が庭の奥で犬を見つめていた。

「おはよう、葵、亮」

奏の声は穏やかで柔らかい。風に揺れる髪の一房が頬にかかるたび、葵の心臓が小さくきゅっとなる。

犬は奏の手に鼻先を押し付け、安心した様子で体を預ける。

その光景を見つめる葵の胸の奥に、知らぬ間に甘い緊張が広がる。


犬と一緒に小さな運動場へ向かう途中、葵は亮と並んで歩きながらふと気づく。

「最近、犬だけじゃなくて…奏のことも気になるかも」

心の中で小さくつぶやく。胸の奥で新しい感情が芽生え、軽く高鳴る。


犬が転び、水たまりで足を滑らせる。葵は慌てて手を差し伸べ、亮もすぐに駆け寄る。

「大丈夫、怖くない」亮が声をかけ、葵も犬を抱きしめる。

奏も微笑みながら近づき、犬を撫でる。三人の距離が、自然に縮まっていく。

笑いとハプニングが、胸の中の小さな感情をより鮮明にする。


午後、犬たちの世話を終えた後、三人でベンチに座る。

光が水滴に反射し、犬の毛が金色に輝く。風が頬を撫で、温かく柔らかい時間が流れる。

奏が静かに言った。「今日も頑張ったね。犬たちも嬉しそう」

その声に、葵の胸が微かに揺れる。友達としての安心感と、恋の予感が入り混じる。


亮がふと笑いながら言う。「でも、犬が一番楽しんでるかもね」

犬が庭を駆け回り、ふたりに寄ってくる。

葵も笑顔になり、奏も柔らかく微笑む。

この瞬間、三人の間に言葉では表せない絆が生まれる。友情と恋の狭間で、胸がざわつく。


夕方、庭の水たまりに夕陽が映り、光が三人を包む。

葵は肩の犬を撫でながら、心の中で小さく誓う。「怖くても、この気持ちに向き合ってみよう」

犬の温もり、奏の存在、亮の笑顔――すべてが胸に重なり、柔らかく温かい光となる。


夜、布団に入った葵は今日の出来事を思い返す。

犬と過ごした時間、仲間と笑い合ったこと、そして奏に対する新しい感情。

胸の奥の小さな光は、友情と恋心の両方で輝き、希望の種となった。


窓の外に残る夜露と庭の影が、静かに揺れる。

葵は肩の犬を抱きしめ、目を閉じる。

「明日も、勇気を持って一歩踏み出そう」

孤独と恐怖の中で芽生えた小さな勇気と、新しい感情が、胸の奥で確かに根を下ろしていた。


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