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第3話:ボランティア初参加

施設の扉を押し開けると、犬たちの匂い、湿った木の香り、そして鳴き声が一斉に迎えてくれた。

葵は息を呑む。小さな体を震わせる犬たちの姿が、胸の奥をぎゅっと締め付ける。

その中でも、一番臆病そうな犬が、奥の柵で小さく震えている。毛先が雨で濡れ、光を反射してキラキラと輝く。


葵はそっと手を伸ばす。「大丈夫、怖くないよ」

犬は一瞬後ずさりし、体を小さく丸める。

鼓動が胸に伝わり、手のひらに小さな生命の温もりが伝わる。

心拍が跳ね、手が微かに震える。葵は自分の胸の奥の恐怖を感じながらも、犬に向き合った。「私も怖かった…でも、助けたい」


亮と奏も傍に来て、協力して犬を抱き上げる。

犬は不安そうに鼻を鳴らし、体をくねらせるが、葵の肩に頭を預けると少しずつ落ち着く。

仲間たちと一緒に犬の世話をしながら、葵は小さな達成感を味わう。

毛を乾かし、餌を与え、水を替える。少しずつ犬たちが安心して体を預けるたびに、胸の奥の温かさが広がっていく。


その日の午後、庭で犬たちを遊ばせることになった。

臆病な犬は最初、柵の端で固まっていたが、葵の手が届く距離に近づくと、微かに尻尾を振った。

「ほら、怖くないよ」葵が声をかけると、犬は少しだけジャンプして、葵の手に鼻先を押し付ける。

亮と奏も微笑みながら、その様子を見守る。

笑いがこぼれ、空気はふわりと柔らかくなる。


ところが突然、犬が庭の水たまりに足を滑らせて転ぶ。

「わあっ!」葵が手を差し伸べ、亮がすぐ脇で支える。

犬は小さく鳴き、砂まみれになった毛先が光に輝く。

仲間たちは思わず笑い出す。緊張と笑いが交互に押し寄せ、心の奥にほのかな安心感が広がる。

葵も思わず吹き出し、肩の力が抜ける。

小さなハプニングさえ、今の自分たちには愛おしく感じられた。


夕方になり、犬たちを柵に戻す時間が近づく。

臆病な犬は最初は抵抗したが、葵の呼吸のリズムと手の温もりに少しずつ安心してくる。

「今日、ありがとうね」葵がささやくと、犬は鼻先を小さく押し当て、静かに目を閉じた。

亮も奏もそれぞれに笑顔を交わす。

小さな生命とのふれあいが、心の孤独を少しずつ溶かしていく。


夜、帰宅した葵は布団に入ると、今日の出来事を反芻した。

臆病な犬との距離が縮まったこと、仲間と共に協力できたこと、笑い合えたこと。

胸の奥に、小さな光が灯る。

「怖くても、踏み出す勇気があれば、誰かと心をつなげることができる」

そう思った瞬間、胸の中の重さが少しずつ消え、希望の暖かさだけが残った。


窓の外には、まだ小雨が残る。庭の水たまりに反射する街灯の光が、静かに揺れる。

臆病な犬の小さな足音と、仲間たちの笑い声が重なる。

葵は深く息を吸い、目を閉じた。

「明日も、この子たちと一緒に頑張ろう」

小さな決意が胸の奥で固まる。雨音がリズムを刻むたび、孤独と希望が交錯する。


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