第2話:幼なじみの友情
雨はまだやまず、空は重く、灰色の雲が街を覆っていた。
葵は傘を握りしめ、足元の水たまりを避けながら亮と並んで歩く。
「雨、止みそうにないね」亮がつぶやく。
その声に、胸の奥が少しだけ温かくなる。孤独だった朝の感覚が、微かに溶けていくようだ。
施設の門に近づくと、柵の奥で小さな犬が震えていた。
雨に濡れた毛が光を反射し、まるで小さな星のように見える。
犬は葵に気づき、鼻を鳴らしながら後ずさりする。
「大丈夫、怖くないよ」葵はそっとつぶやく。
手を差し伸べると、犬は少しずつ近づき、鼻先を葵の手に押し付けた。鼓動が伝わる。温もりが胸の奥にじんわりと広がる。
亮もそっと傘を差し出し、笑顔を見せる。
「ほら、怖くないって」
二人の心拍と犬の小さな震えが、不思議なリズムを奏でる。
葵は思わず息を整え、ゆっくりと犬の体温を感じながら心の中でつぶやいた。「怖くても、前に進むんだ…」
突然、犬が勢いよく走り出す。
水たまりに足を取られ、葵は思わず転びそうになる。亮が手を差し伸べ、二人で犬を追いかける。
犬は書類や小さな荷物に突っ込み、周囲の仲間たちは思わず吹き出す。
一瞬のハプニングに笑いが生まれ、緊張と笑いの波が交互に押し寄せる。
「もう、こいつったら!」亮も笑いながら言った。葵も自然と笑顔になる。
犬を無事に保護すると、仲間たちとの距離もぐっと縮まった。
「名前はどうする?」亮が訊ねる。
葵は少し迷いながら、犬の瞳をじっと見つめる。「まだ決められない…でも、一緒に考えよう」
奏も隣で微笑む。犬の体温と鼓動が、三人の心を自然に結びつけていく。
その日の午後、施設の中は雨の音と犬たちの鳴き声でにぎやかだった。
犬の体温や息の音、濡れた毛の匂いが入り混じり、葵は自分の心が少しずつ解放されていくのを感じた。
孤独だった自分が、少しずつ仲間や犬たちと繋がっている。
笑いと小さな事件が、心の中にあたたかい光を灯す。
夕方、雨が弱まり、窓から差し込む光に犬の毛が金色に輝いた。
葵はそっと犬の頭を撫でながら、心の中でつぶやく。「今日、ここに来てよかった…」
亮と奏も隣に座り、静かにその瞬間を共有する。
雨上がりの庭には、まだ水たまりが残るが、空気は清らかで、希望の匂いが漂っていた。
その夜、葵は布団に入っても、胸の奥にあたたかさが残っていた。
犬との出会い、仲間たちとの笑い、互いの心の触れ合い。
孤独だった朝の自分が、遠い出来事のように思える。
そして小さな決意が再び芽生える――「この子たちと、少しずつでも前に進もう」




