表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

18/24

第18話:亮の告白と、奏の秘密

翌日の朝。

施設の庭には柔らかい光が差し込み、ひかりの寝顔を照らしていた。

葵はベッドの隣でそっと手を握り、ひかりが目を覚ます前にそっと撫でた。


(昨日のこと……ひかりが入院しなくてよかった……でも、胸のざわつきはまだ消えない)


ひかりの小さな呼吸が、葵の胸に深く染み込む。

守らなければという決意と、亮や奏への揺れる感情が交錯し、胸が苦しくなる。



---


その朝、亮がいつもより早く現れ、ひかりのキャリーを運んでいた。

「葵……話がある」

その声には、いつもより緊張が混ざっていた。


葵は少し驚きながらも、「うん、何?」と応える。

亮は目を逸らしながら、手に汗を握る。


「……その、俺……あの……」

亮は言葉を詰まらせる。

葵は胸がどきりとする。

(亮……なに? なんでそんなに緊張してるの?)


奏はその様子を遠くから見守り、静かに目を細める。

微かに胸の奥が痛む気配を葵は感じた。



---


亮はひかりを見て、深呼吸をする。

「葵……俺……お前のこと、ずっと……大事に思ってる」


その言葉に、葵の心臓が跳ねた。

亮の不器用な告白。

今までの優しさや心配が、すべてこの一言に凝縮されていた。


「え……亮……」

葵は驚きと動揺で言葉が出ない。


「俺……ひかりだけじゃなくて、葵のことも……本当に大切で……」

亮は顔を赤くして視線を逸らす。


その瞬間、奏が静かに近づき、葵に向かって小さく笑う。

「亮……ありがとう。でも、葵の気持ちは葵自身が決めることだよ」


その言葉には温かさがあったが、どこか寂しさも含まれている。

葵は胸がぎゅっと締め付けられる。

(奏……なんでそんな顔してるの……)



---


その日の午後、施設の裏庭で三人とひかりは散歩に出た。

ひかりは少しずつ元気を取り戻しており、葵の足元でゆっくり歩く。


亮は照れくさそうに、でもどこか楽しそうにひかりを見守る。

奏は静かに、でも鋭く葵と亮の様子を見つめている。


(奏……なんか知ってるのかな……)

葵は胸がざわつくのを感じた。


そのとき、ひかりが急に足を止め、草むらをじっと見つめる。

小さな猫が隠れていたのだ。


「ひかり……また?」

葵は駆け寄ろうとするが、亮が手を差し伸べる。


「葵、無理に近づくな。ひかりがびっくりする」

亮の不器用な優しさに、葵の胸はまたぎゅっとなる。


奏は静かに近づき、猫を優しく抱き上げる。

「大丈夫、ひかり。焦らなくていい」


ひかりは少し安心した様子で、葵の足元に寄り添った。



---


その夜、施設の宿直室で、葵はひかりを抱きながら考えていた。

亮の告白、奏の微妙な表情、そしてひかりの小さな体調の変化。


(私……どうすればいいの……?

 亮のことも、奏のことも大事……でも、ひかりがいるからこそ迷う……)


そのとき、奏が静かに葵の横に座った。

「葵……実は、ずっと言えなかったことがある」


葵は息を呑む。

奏が何を話すのか、胸が高鳴る。


「僕……昔から犬や動物が好きで、施設でボランティアを続けてきたんだけど……

 その理由は、家族を失った寂しさからだった」


葵は驚きとともに、奏の瞳を見つめる。

「……寂しさ?」

奏は小さくうなずく。


「僕、ずっと心のどこかで、ひかりのような存在に支えられたくて……

 だから、ひかりのことを大事にしながら、葵のことも守りたいと思ってしまう」


葵は胸が締め付けられるような痛みと温かさを同時に感じた。

(奏も……亮も……どっちも私を思ってくれてる……)


ひかりが膝で小さく鼻を鳴らす。

まるで「大丈夫だよ」と言うように寄り添う。


葵は深く息をつき、涙がぽろりとこぼれた。


「ありがとう……奏……亮……ひかり……」

その小さな声に、夜の静寂が柔らかく包まれる。



---


その夜、三人とひかりの間に静かな絆が芽生えた。

亮の不器用な告白、奏の隠された想い、そしてひかりの存在。


この小さな奇跡のような日常は、

次の大きな試練に向かう前の、ほんの一瞬の静けさだった。


――胸の奥で揺れる感情は、

これからの物語をさらに深く、感動的に導いていく予感に満ちていた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ