第7話 成せば成るのさ計画!
早速放課後、颯とカラオケに向かった
1年ぶりくらいだなぁ
「カラオケだけじゃなかったのか」
部屋のソファに座るなり
すぐに文句を言い始めた
それもそう、ここに来るまでに寄り道を2つくらいして
私の胃の中にはパフェとスムージーが入っている
「だ、だってぇ!美味しそうだったんだもん!」
「俺も作詞に追われていることを忘れるな。全く」
そ、そんなこと言って
一緒に食べてくれて
私の頬にクリームついたのを拭ってくれる優しいやつなくーせーにー
「なんだその顔は」
「別にぃ?颯ってほんと素直じゃないね!」
「……帰るか」
「あぁごめんなさい!調子乗りました!帰らないでくださいぃ!」
私がすぐ折れて謝り倒すと
すぐに小さいため息をついて「やれやれ」とソファに座り直す
ほら、やっぱり優しい
「で、特訓というが、中学もやってきただろう、2日でどうこう出来るのか?」
「為せば成るのさ!なないろたまご計画!」
「……つまり無計画なんだな」
今まで何回か特訓と称してやってきたけど
蓮ちゃんが褒めすぎて特訓にならなかったんだよな
颯は1曲聞くなり殆ど聞いてくれなくなったし
特に解決策みあらないんだよね
「とりあえず一曲歌え、殆ど聞いてなかったからな」
颯に促されて、とりあえず知ってる曲を歌ってみる
音階バーみたいなものはほとんど赤を表示してくる
うぅ、なんで合わせられないんだろう
「……このまえにカラオケ行った時はそんなもの無かったな、それは正確なのか?」
「え?そうなんじゃない?」
「……少し待て」
颯は音階バーを一通りじっくり見始めた
何か分かったのかな
……真剣な表情、イケメンだなぁ
「低い声は出しにくいか?」
「ふぁ!?う、うん、なんかそうなんだよね!」
「少し、この歌を覚えてみるといい」
颯に渡されたのは
めちゃくちゃ高音の多いと言われる歌だった
私も何回か聞いたくらいなんだけど
難しすぎて70点台が最高らしい
「こ、こんなの無理でしょ!?」
「やって見ればわかる、俺を信じろ」
颯に真っ直ぐに見つめられて
仕方なく歌詞をじっくり見始める
深呼吸して、ゆっくり歌い出す
音階バーはもっと高く!と表示される
あれ、なんだろう
高く歌おうとすればするほど
すごく歌いやすい、なんだこれ!!!
「やはりな、おそらく普通の歌ですら、お前にとっては低い音程なんだろう」
「よ、よくわかったね、でも私、普段の声は高くないよ?」
「そこまでの原理は知らんが、お前は今後高音の歌なら歌えることが分かったな」
「颯……!ありがとう!!!!」
私は嬉しさのあまり颯に抱きつく
「やめろ暑苦しい」とすぐに剥がされるけど
これでまだアイドル出来るかもしれないって分かっただけで
本当に嬉しい!
「全く、よくそんなハイテンションが続くな」
「だって嬉しいもん!」
「やれやれ、こっちの身になって欲しいものだ」
「ん?どうして?」
「カラオケで男女2人で来ると勘違いされるだろう、ましては抱擁までされるんだ、蓮が男子を追い払う理由がよくわかる」
確かに、あんまり考えてなかったな
「ごめんごめん!次から気をつける!明日も頑張ろ!」
「…あぁ」
小話 ASS 2
【中学時代の蓮視点】
幼稚園からずっと芽衣と二人で過ごしてきた
ずっと二人で添い遂げると思ってた
……なのに
「山崎颯君!新しい友達なんだ!」
なんだぁこの虫はぁぁ????
「榊原、何故か小嵐にすごく睨まれてるが」
「あ、こら蓮ちゃん!仲良くしないと、めっ!だよ!」
「ちょっと芽衣!あーし以外は友達いらないとかいってたじゃん!!なんで!!?」
「ご、ごめんね!昨日の文化祭の時ね、颯君一人だったからなんかつい声かけちゃった」
芽衣はそういう子
めっちゃ優しい、しゅき……♡
じゃなかった。それでもなんでよりによって男なんだよ
こんなんだから勘違いする男がいて
追い払うのが大変なんだよ!
「おい山崎!勘違いすんなよ!芽衣は優しいから友達になってるだけだからな!」
「……勘違い?確かに手を差し伸べてくれたことには感謝しているが。そんな感情で接さないから安心しろ」
「はっ!どーだか!言っとくけど芽衣は中学でちょーーー人気だから!あんた、他の男に虐められても知らないよ?」
「それは知っている、安心しろ、自分の身は自分で守る、今度からはお前らも俺が守ってやる」
……え?なにそれ
なんでそんなかっこいいこと普通に言えんの?
「もーそんな事しなくても大丈夫だよ〜」
「いや、お前は危なっかしい」
という会話が聞こえるけど
山崎の顔に嘘偽りがないのは見てわかる
「……分かった、ただまだ信じないからな!あーしがきっちり見張ってやる!」
「……好きにしろ」
そのわずか1週間後
お互い名前呼びするくらいには仲が良くなることを
彼らは知らない




