第5話 もぅ無理……まじしんどぃ…
部室の窓からの夕陽が差し込み
机には散らかった楽譜や衣装サンプルが置いてある
私と真凜ちゃんは対面でソファに座り
私は緑と黒のヘアピンを指でいじりながら
チラチラと真凜を盗み見る
真凜ちゃんはソファの隅っこで
前髪を耳にかけながら
ちょっと緊張気味にモゴモゴしてる
るんちゃんに「水入らず」と言われたけど
二人きりにされても何話せばいいかわかんないよ!
微妙に気まずい空気が流れて死にそう!!
改めて真凜ちゃん見てると……
うわー、めっちゃカッコいいと憧れた人が
こんな近くにいるなんて…!と思ってしまう
まつげなが!顔ちっちゃ!
眩しすぎて話しかけづらい……
「ね、ねえ、真凜ちゃん!」
「え、あ、はい」
「この前も話したけど……ライブ、本当にかっこよかった!」
私がキラキラした目でそう言うと
真凜ちゃんは目が右往左往に泳がせた後
「…え、う、あたし、そんなに上手くないと思うけど」
「めっちゃキレッキレだったじゃん!あのクルクル回るやつ、めっちゃカッコよかった!八重歯もキラッて光ってたし!」
「や、恥ず…そんなとこ、見ないでよ…」
うわ、可愛い…!
ステージの真凜ちゃんと全然違う
でも、このギャップもめっちゃいい!
そんなこと考えてると
「うぅ……るん……なんでこんなこと……」
とモゴモゴなにか独り言を呟いた
…これるんちゃんの話したら
仲良くなれるのでは?
「ね、真凜ちゃん、るんちゃんとはすっごく仲良いみたいだけど、いつから一緒だったの?」
「へ?…えと…幼稚園?かな」
「え!めっちゃ前!ずっと一緒だったんだね!」
「ぅん、あたしがコケて、泣いてた時に、手を引っ張ってくれて……『君に泣き顔は勿体ないよ!』って、言ってくれて、それからずっと一緒にいる」
たどたどしい口調だけど
るんちゃんの話になった途端
笑顔で話だした
きっと大好きなんだろうな
でも喋りすぎたのか、ちょっと一息ついた
「はぁ……心臓痛い……もぅ無理……まじしんどぃ……」
急にそう言って
スマホを横に向けて
ドラマを見始めた
何を見てるんだろうと覗き込んでみる
あれ、このドラマ……え、知ってる!!!!
「これ、知ってるよ!大好きなドラマ!」
「え、ほんと?これ見ると落ち着くんだよね」
落ち着く……?
これ確かホラーグロテスクドラマだったような……
「このドラマに出てくる小鳥遊亜希って人が凄くカッコいいんだよね!バク宙しながら銃で敵を倒す所なんか練習したことあるもん!」
「え、わかってくれる人いた…!るんに勧めても、グロすぎて無理って、言われるんだよね」
意外な趣味の共通で盛り上がり始めた
なんだか、すごく息が合う気がしてきた!
「ね、そのさ、榊原さんじゃなくて、芽衣って呼んでよ!私たち、絶対仲良くなれるって!」
「わ、分かった……えと……めい、ありがとう」
え、ありがと???
「うん、あたしのこと、すっごく気を使って話してくれて。るんと似てる、目を合わせてくれて、やっぱり優しい」
ニコッと笑ってくれる真凜ちゃんを見て
ドキッ!と心臓が高鳴る
こ、こんな可愛い子にそんなこと言われたら
いくらなんでも惚れるってぇ!
危ない危ない……
「いんやー!仲良くなったようで良かったですな!」
後ろからバン!とドアが開き、るんちゃん達が入ってくる
え、今まで覗いてたのか……
「あ、るん……ほんと酷すぎ。今度食堂のパン奢ってやらないから」
「はーーーーーそんなことゆー子に育てた覚えはありません!(裏声)」
「や、育てられた覚えないけど……いいもん、友達増えたし」
え、この子、私をキュン死させようとしてる?
破壊力ヤバすぎでしょ!恐るべし……
と、後ろからちょんちょんとつつかれたので振り向くと
颯がズルズルと何かを引きづってきた
そこにはホラー映画に出てくるレベルの
目も口も真っ黒で血涙流してる蓮ちゃんが野垂れ死んでいた
「あれをどうにかしろ」
「えー!蓮ちゃんどうしたの!!!?」
「芽衣が……ほかの女に……そのホラーアニメあーしもみる……」
「え、見てくれるの?いいよ!見よ!蓮ちゃんと見るの楽しみ〜!」
「……天使……?」
「あぁー!空に行かないで〜戻って来て〜!颯なんとかしてぇ〜!」
「俺を巻き込むな……蓮はホラー苦手だったはずだが……やれやれ」
【数分後】
ようやく蓮ちゃんを元通りにし
引き続き会議を始めた
「うし!親睦をつかめたっつーことで!ライブやっか!」
「え、ライブ??」
「あたぼーよ、何のためにアイドルしてんの」
「急すぎないか?そもそもどこでやるつもりだ」
「そーりゃもちろん、明後日ゲリラライブ、体育館で!」
「「明後日!!!??!」」
るんちゃん
「このるんちゃんに任せておきなさい!」
ピンクのツインテール 身長161センチ
突如アイドルのプロデューサーを始めた謎の少女
人見知りの真鈴を呼び込んだり
見る目がある芽衣を一発で見抜いたり
洞察力がずば抜けている
ただ本人はかなりおちゃらけており
行き当たりばったりで信頼感がないが
何故か上手くいくため憎めない
演出担当を務める




