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第11話 飲め飲め〜!

ライブは問題は出たけど結果的に大成功に終わり

今日は部室でミニ打ち上げが始まった

まだ私達は大学1年生だから酒は飲めないけど

学園長はぐびぐびと缶ビールを飲み干す


「ぷはー!ライブみんなお疲れー!今日は私の奢りよー!飲め飲めー!」


「ちょ、学園長!はしたないのです!もうちょっと大人の振る舞いを」


「うっさいわねぇ〜元宮さんも飲める歳でしょぉ?あんたものみなさいよぉ!」


「むぐっ」という断末魔の声が聞こえたきり

志保さんは酒を半ば強制でのまされている

初対面の時も思ったけど

学園長って、案外だらしな…いや、これ以上はやめておこう

亜希さんも、静かにチューハイを飲んでその姿を見て笑っている


「あはは、学園長テンション高いね?」


「あったりまえでしょぉ?我が生徒の初日の出なんだからぁ」


最初に会った時も似たようなこと言ってたけど

「そういえば、この前聞けなかったんですけど、るんちゃんと学園長は妙に仲がいいですよね?」


私が問いかけると

しれっと酒を飲もうとしてたるんちゃんと

それを止めようとしてた真凜ちゃんが手を止める

「あれ?言ってなかったっけ?おふくろだよ?」


とぶっちゃけはじめた

…おふくろ?


「「お母さんなの!?」」


蓮ちゃんと私の声が被る

「正確には養子だけどねぇ〜」と付け足してくる

ふ、複雑な事情あったりするのかな


「やば!そりゃ娘のプロデュースだから後押しするわ!今納得!」


「るんはあんまりそういうので力を借りたくないってことで、部室だけ用意してもらったんだ。まあ学園長は過保護だから、チラシとか配ってたけど」


な、なるほど

学園長の謎行動が全て納得した

「ちゃんとした娘も2人いるのよ〜」と酒を飲みながら補足する

本当の娘もいるのに、養子もいれるなんて

凄い人だな……


「次はちゃんと私の力でやるから、おふくろは見てるだけでいいからね」

「えぇ〜?」


そんな会話をしながらも

各々で盛り上がる

蓮ちゃんと亜希さんは服のコーデの話だったり

無理やり飲まされた志保さんも

酔いながらるんちゃんと真凜ちゃんに「今後は気をつけること」を話してたり

なんだか、凄く楽しい空間だった

……あれ?颯は?と見回すと、隅っこで野菜を黙々と食べていた

何故かまだ女装姿のままだ



「颯?なんでそんな所にいるの?」


「俺はこういうのは苦手だ。俺のことは気にせず、楽しんでくればいい」


「もぉ、そんな事言わない。じゃあ隣すーわろ」


というか、颯の皿、野菜しか乗ってない

どうせ、「お前らが食べないものを食べる」に徹してるんだろう

私の皿に残ってた唐揚げを「これも食べてよ」と

私の箸で摘んで口元まで運んであげると


少しだけ戸惑ってから、食べてくれた

「美味しいでしょ?」と聞いてみると

「こういうのは蓮にしろと言ってるだろう」とそっぽを向いた

あれ!?照れてる!!?


「なに?照れてるの?」

「照れてない」

「嘘つき〜なんでそっぽ向くの?」


「……お前はそうやって、昔も俺のことを見つけてくれたな」

「え?またその話?大丈夫!颯がどこ行っても見つけてあげるからさ!」


「……そうか」


ちょっとだけ微笑んでくれた気がする

本当、颯って面白い


「ね、今度はどんなライブできるかな」


「……そうだな、この先、もっと楽しいライブが出来るかもな」


「えへへ、楽しみだね!」


「……やれやれ、人の気も知らないで」



[補足]

芽衣、颯、蓮、真凜、るんは

大学1年生なので19歳で酒が飲めません


志保、3年生、亜希は4年生です


小話 人見知り奮闘記1


あたし、蛯沢真凜は、人見知りだ

特に男子とは全然目を合わせられない

でも……このままじゃだめだと思う

だから勇気を出して、山崎くんにお願いしてみることにした


「……あの……」


普段は練習の合間に読書をしている山崎君

けどあたしの小さい呼び掛けには気付かずに時間だけが経つ


人見知りはそもそも人に話しかけるのすら無理なんだった

あたしは少しソワソワしながらその周りをウロチョロしてると


山崎君は本を閉じて

「もしかして呼んだか?すまない、気づかなくて」

と気遣ってくれた


めいや小嵐さんがお話しする時は

本を読む手は止めないけど

あたしがお話しする時は閉じてくれるんだ

優しい……


「えっと……その、目を合わせる練習、してくれない?」


言った瞬間、顔が熱くなる

死ぬほど恥ずかしい

でも耐えなきゃ


「この前言ってた、女装しての練習か、今回はしなくていいのか?」


「う、うん、大丈夫、前回の女装で、少し慣れた、と、思うから」


「分かった」


山崎君は淡々とした澄ました顔で向かい合ってきた

まっすぐな目線。やばい、やっぱり直視できない!


「……っ!」

顔を伏せてしまった。

無理だ。いやでも頑張らないと……!


「逸らしたら練習にならんだろう」


「む、無理だよ!山崎君の顔が、近いし……!顔整ってるしぃ……!」


「……あまりそういうことは男子に言わないことを強く勧める」


ふええ……自爆した

顔が火照りすぎて死にそうになってると

ドアが勢いよく開いて

今度はめいが乱入してきた


「え、真凜ちゃん!人見知り克服の練習?やるやる!じゃあ私と見つめ合お!」

「う、うん……!」


めいの大きな瞳と正面から

……わあ、なんかキラキラしてて余計緊張する!

でも、女の子相手ならまだ頑張れる気がする。


「真凜ちゃん、かわいい〜!」

「か、かわっ!?……っ、も、もうやめて」


その様子を山崎君が眺めていて、ぼそっと言った。


「……芽衣、相手は少しずつ慣れようとしてるんだ、お前がグイグイくると治らないだろう」


「あ、そっか!ごめんねぇ真凜ちゃん!」


「そして蛯沢、お前はとりあえず同性から慣れろ」


あ、確かに。

少しずつ、慣れていけるかもしれない。


「ありがとう、山崎君……!めい……!少しだけ、頑張れそう」


……ちょっとずつでいい。あたし、人見知り克服してみせる!

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