第1話 Ass
新作投稿!よろしくお願いします!
唐鏡という地域の、真ん中にそびえ立つ学校、青葉大学
スポーツも学業も芸術も全てのバリエーションを揃えた大学
そんな大学に、何とかギリギリ合格した私はやっと校門前に立てた
「ついに……来た!」
今まで色んな競技、学業、資格に挑戦してきたけど
バスケではシュートが一回も入らなかったり
剣道だと道着が重すぎて動けなくなったり
中々上手くいかなかった
今日から4年間この大学で見つけるんだ
私にしか出来ないこと!
私は、榊原芽衣、朱色のボブヘアを風に揺らし
緑と黒のヘアピンは友達とおそろだ
胸の奥でドキドキが止まらない
やっと…やっとここに来れた!
小学校での水泳、書道、中学の陸上やテニス、高校の剣道やバスケ
果ては資格試験まで、全部中途半端で終わった私
でも、この大学なら、きっと見つけられる
私の「これだ!」って叫べる何か
だって、青葉大学はスポーツも学業も芸術も、全部が揃った夢の舞台なんだから!
校門は、まるで映画のセットみたいだった
巨大なアーチには蔦が絡まり、「青葉」の文字が朝日で輝いている
門の向こうには、緑の芝生が広がり
遠くで陸上部のランナーがトラックを駆け
美術部の学生がキャンバスに筆を走らせていた
どこからかサックスのメロディが聞こえ
「ここなら、私にも何かあるはず…!」と、強く拳を握りしめた。
「芽衣! こっちこっち!」
校門の脇で、派手な朱色のネイルをキラキラさせながら手を振るのは
幼馴染の小嵐蓮
ギャル全開の緑髪とミニスカートが
朝のキャンパスで目立ってる
「遅いぞ〜!あーし待ちくたびれたんですけど!」
その隣で、校門に寄りかかり小説本をめくる
山崎颯もいる
「あ!なんで2人とも家の前で待ってくれなかったの!?」
「お前が寝坊するからだろう。蓮は何度も起こしていたぞ」
「うっ…確かに、蓮ちゃんの『起きなよー!』って声、夢の中で聞こえたような…」
「そーそー! 枕にしがみついて『あと5分…』とか呟いてたよね! (あーしに抱きついてくれればすぐ起きたのにさぁ)ボソッ」
でもでも!「せっかくだから3人で校門くぐろーって話したじゃん!」
とむすくれてみると
「ごめんねぇ、ちゃんと校門前では待ってあげたじゃん!」
「蓮はしれっと1人だけくぐろうとしたがな」
「うわ!それゆーなし!!!」
いつも颯が冷たい態度をとって
蓮ちゃんがノリよくお喋りをする
颯は本を閉じ、ため息をつく
「お前ら、いつまで騒いでるんだ、遅刻気味なのを忘れるな」
そう言われて私は慌てて2人の間に割り込む
颯って、いつもクールぶってるけど
こういう約束は絶対忘れないんだよね
私が割り込んだ時にしれっとカバン持ってくれてるし
私と蓮がつけてる緑と黒のヘアピンも
颯がおそろで買ってくれたんだよね
「よーし、行くぞ!」
私は蓮ちゃんと颯の手をガシッと掴んだ
蓮ちゃんが「ほわっ!? 芽衣、急すぎ!」と顔を赤くしながら小さく叫び
颯は「…ったく、忙しない奴らだ」と呟きながらも
ちゃんと手を握り返してくる。
3人で一歩踏み出す。校門のアーチをくぐった瞬間
朝陽がキラキラと私の目を刺した
まるで、4年間の新しい物語が、今ここで始まるみたいだ
「青葉大学、榊原芽衣!ここで私は、輝ける存在になる!!」
私は思わず叫んで、蓮ちゃんの笑い声と颯の呆れたため息が響き合った。
【数時間後】
入学式が終わり、普通の学校なら
すぐオリエンテーションして帰れるんだけど
この大学はすぐに部活やサークル紹介が始まる
優秀な人達しか集まらないのに、初心者も大歓迎らしい
大学から始めたって追いつけるわけないのに……
と私は過去にやって上手くいかなかった
運動部がプレゼンしてるのを欠伸しながら見る
隣にいる蓮ちゃんも眠そうなので
頑張って起きようね!って意味を込めて手を握る
「ほわ!?」と変な声が聞こえたけど
眠気覚めたなら良かった
ただ、これなら私がやったことない部活もあるはずだと
眠い目を擦って何とか耐える
そういえば、蓮ちゃんはいつも手を握ると顔が赤くなるけど
なんでなんだろ??
部活紹介が続く中、会場の後ろでとざわめきが聞こえた
ふと見ると、キラキラしたピンクのジャケットを着た女の子が
ステージ脇でニヤリと笑いながらマイクを手にしていた。
「長い!長すぎるよ!真面目すぎるって! みんな眠そうじゃん!」
教員が「君! どこから来たんだ!」と叫ぶが
彼女は意に介さず、ロックなリズムが会場に響き始めた
どうやらオリエンテーションの予定にない子みたいだ
「なんだなんだ…?」と他の生徒がざわめく中
1人の生徒が舞台に上がる
制服じゃない、凄くキラキラして、ロック調のかっこいい服だ
教員席では、眼鏡の教授が「何!? 予定外だぞ!」と立ち上がるが
ピンク髪の子が「黙って見てなよ、とっつァァ〜ん!」とマイクで茶化した
「ここらで1つ。このるんちゃんが行った、るんちゃんプロデュースのアイドルをご紹介しよう!さぁ!蛯沢真凜!暴れまくれ!」
るんちゃん、と名乗った女の子の掛け声と共に
どこからともなく音楽が鳴りだす
舞台の真ん中に立っていた蛯沢真凜と呼ばれた子は
キレキレのダンスと、圧倒的歌唱力ですぐに私を魅了させた
これが、生のアイドル…?
今まで全く興味を持たなかったけど、こんなに凄かったの……?
か、、、カッコイイ!!!!!
真凜ちゃんのダンスが始まると
寝ぼけていたを生徒たちが少しずつ身を乗り出し
「すげえ…!」と誰かが呟いた
拍手がパラパラと広がる
彼女のダンスはとっても生き生きしてて
力強く足を踏み鳴らすと同時に
腕がふわっと流れるように動いてる
ブルーブラックの短髪を揺らしながら
クルクル回ると、服がキラキラ光ってキレイ!
歌声は心にドンと響く低い音から
ゾクゾクする高い音まであって
「自分を解き放て!」という歌詞が、会場全体に響き渡る。
後ろの席の学生がスマホを掲げ
動画を撮り始めたり
熱気がまるで波のように会場を飲み込み
芽衣の隣にいた蓮ちゃんさえ
口を半開きにして「う〜わ、ヤバァ…」と呟いた。
私はずっと目を奪われた
真凜ちゃんのダンスは
私が今まで挑戦しては中途半端に終わった
どの競技とも違った
陸上のトラックを走っても、道場で作法を習っても
私はいつも「何か足りない」と感じていた
でも、真凜ちゃんの動きには
枠にはまらない自由があった
「自分を解き放て!」という歌詞が
芽衣の心の奥底に刺さった
「私も…こんな風に輝けるかもしれない!」
心臓がドクドクと高鳴り、私は無意識に席から立ち上がっていた
アイドルなんて興味なかったのに、こんなに心を掴まれるなんて!
「…………いい」
「え?」
「カッコイイ…!!!」
「…マジ?」
私はキラキラした目で蓮ちゃんを見るけど
蓮ちゃんはどこか寂しそうな目をしてる気がする
だけど、私はそんなことを気にする余裕がなかった
「あれの良さがわかんないの!?めっっっちゃかっこよかったじゃん!!!」
「良さがわかんない訳じゃないけど…そんな見惚れると思わなかった」
「私、お近付きになりたい!あわよくばお傍につかせてほしい!」
「お傍に!?ナニソレ、まるで好きになったみたいで…」
好き…?確かに、このトキメキ!そうかも!!
「うん!私あの人のこと好きかも!!!」
「は???????」
「あの二人のとこ行ってみる!」
「ちょ、待ってよ芽衣!!!」
かけだしてしまった私をよそに
手を差し伸べたままの芽衣は
私には聞こえない声でこう言った
「あ、あーしが…先に……好きだったのに……」
プロフィール
榊原 芽衣
「私、アイドルやってみたい!」
髪 朱色のボブヘア 身長159センチ
自称器用貧乏で自己評価の低いオタク娘
推しを見つけてからはかなりイキイキしだすが
同級生や年下相手にも蓮の結界のせいであまり仲良しがいない状態で
幼馴染以外に友達が出来ずにいる
幼馴染にはかなり自由奔放で距離感がバグっていることから
たまに蓮が心不全になりかける
ちなみにASSはAあーしが、S先に、S好きだったのに
という略語である
プロフィール
榊原 芽衣
「私、アイドルやってみたい!」
髪 朱色のボブヘア 身長159センチ
自称器用貧乏で自己評価の低いオタク娘
推しを見つけてからはかなりイキイキしだすが
同級生や年下相手にも蓮の結界のせいであまり仲良しがいない状態で
幼馴染以外に友達が出来ずにいる
幼馴染にはかなり自由奔放で距離感がバグっていることから
たまに蓮が心不全になりかける
ちなみにASSはAあーしが、S先に、S好きだったのに
という略語である