其の九
カラン……コロン……
その晩も伴蔵の家に、お米と、お露が現れました。
「伴蔵さん。今日もお札が剥がれておりません。お嬢様が大変おむずかりになります。
もし剥がして貰えばければ、お恨み申しますよ」
いつもはたじろぐ伴蔵ですが、この日ばかりは違いました。
お米に交渉を持ち込んだのです。
「我々は……新三郎さんのおかげで生きながらえております。新三郎さんがいなくなると、生活が立ち行かなくなりますので……
百両!!ご用意いただきたく存じます」
「……おじょう様、伴蔵さんの言うこともごもっともにございます。
お諦めくださいませ」
するとお露は泪を流し……
「いやだ……いやだよ……
百両、才覚しておくれ……」
「お嬢様……百両にございますよ……お嬢様……
……
……伴蔵さん、お嬢様がこう申しますので、百両ご用意致しましょう。
その代わり、もう一つお願いがございます。
新三郎様が懐につけている、金無垢の開運如来。あれがあると新三郎様に触れませぬ。
違うものとすり替えてくださりませ。では、また明晩……」
このようにして、伴蔵は見事、幽霊相手に百両を約束させたのでした。
さて、突然ですがここで中間試験1です。
お米さんは百両という大金を、どこで手にしたでしょうか……?