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其の四

お話はまだまだ序盤にございます。



 孝介と、お徳の縁談の話を、お国から聞いた源次郎は焦っておりました。

源次郎の家来の一人、「相助」がお徳の事を好いていたからです。

そんな話を家来が聞いたら悲しむ、いや、狂ってしまうとお国に告げると、「狂わせておやりなさい」と、お国は告げるのでした。

そして「時蔵」「亀蔵」と共に三人、橋の上で孝介を待ち伏せさせたのでした。


この頃になると新陰流の腕もだいぶ上達した孝介です。立川志の輔師匠の話ですと、元々新陰流とは「刀を極力使わずして相手を去なす」剣術であるそうです。

3対1でも見事手玉にとり、返り討ちにする孝介でした。

その姿を遠くで見ていた飯島平左衛門は、「お見事! 腕を上げたのう!」と大喜び。「いえいえ、殿のおかげです」と、二人はスキップしながらお屋敷に帰ったそうです。




 もちろんこれで諦める源次郎ではありませんでした。翌日この度の騒動を相助の責任であるとし、彼を解雇して屋敷から追い出したと言う旨を平左衛門に報告します。

そして、「喧嘩両成敗」と言う言葉を用いて、飯島家からも孝介を屋敷から追い出すよう平左衛門を説得します。

それを聞いた平左衛門は、「喧嘩両成敗とは、1対1の喧嘩であるからこそ成り立つ。残りの二人も解雇するか!?」と凄み、さすがの源次郎も引き下がってしまいました。

ことの顛末を聞いたお国は、呆れ返ってしまうと共に、なんとしても孝介を始末しないといけないと思うのでした。




 お殿様である飯島平左衛門が、相川新五兵衛のところに泊まりがけで留守にしている間の、夜の事です。

源次郎はいつも通り、お国と密会を重ねておりました。


夜も老けた頃、平左衛門の部屋から物音がすると、お国が様子を見に行きますと、

金庫から百両という金が宙に浮かび上がり、勝手にお屋敷から出ていくではありませんか。

それを見たお国は恐怖した…… ……と同時に、これを孝介のせいにすればいいんだと思いつきます。

(↑この内容、後で中間試験に出てきます! 覚えておいてください!)

 

 平左衛門が屋敷に戻ると、お国は賊に入られたことを報告します。

しかし外から賊が侵入した形跡なないことから、身内の犯行ではないかと告げます。


 平左衛門は、家来の一人である「源助」に、家来達一人一人の帛紗ふくさを確認させます。そして、いよいよ孝介の番です。

孝介の帛紗の中に、覚えのない大金が入っておりました……。

「お前が賊ね!!」お国は声を上げます。しかし孝介には身に覚えがありません。


「なぜ儂の金に手をつけた?」と平左衛門は孝介に問い詰めます。しかし孝介は知らぬ存ぜぬとくりかえします。

憤った平左衛門は「この場で手打ちにいたす!!」と刀に手をかけ、お国は勝利の笑みを浮かべます。


 平左衛門の意図はここにありました。彼には、最初からわかっていたのです。

お国と源次郎の事も、彼らが自分を貶めようとしていた事も。

なので釣りの話も本当は、誰もいない湖の上で源次郎に真意を問いただそうとしていたのでありました。


そんな回りくどいことしなくても……と思われる方もいらっしゃるかもしれませんが、この回りくどさが江戸時代の「侘び寂び」と言うものでございます。

兎に角、知っていて、お国がどんな反応をするか、泳がせた。

そして刀を振り下ろす直前に「思い出した!」と刀を収めるのでした。


 消えた百両は、孝介に縁談への支度金として持たせたのであった。と平左衛門は語り、お国は呆然とします。

そして一瞬でも疑ってしまったことを孝介に頭を下げて詫びます。次に、源助を中心とした家来達にも、孝介に詫びさせます。

最後に……お国にも孝介に詫びるよう言いつけました。お国は屈辱の中、孝介に詫びました。


 孝介の心中は焦っておりました。自分を消すためにここまでするのか、と。いよいよ手段は選んでいられない。

なんとしても源次郎、お国を斬らねばなるまいと。





 孝介が、槍の手入れをしているところでございました。飯島平左衛門は、何故新陰流の門を叩いたのか、孝介に聞きます。

「仇討ちのためにござります。」と、孝介は応えます。

「それがしの父は、藤村屋新兵衛という刀屋の前で侍に斬られました。酔っていたとはいえ、父の仇です」

そして、飯島平左衛門は自身の人生で唯一人を殺した、「あの日」のことを思い出しました。

実の息子とも思っていた孝介の仇が、孝介が自分の元にやってきた原因が、まさか自分だったとは。なんと因果なことか。


 この時、平左衛門はどんでもないことを決心するのです。

(討たれてやろう。そして孝介に仇をとらせてやろう。)


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