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其の十二


おっとっと……これはいけない。

伴蔵は心を入れ替えざるを得ませんでした。


「冗談だよー! 出ていけなんて冗談だよー!

 お前あっての俺じゃねえかー! な! な!

 わかった! 決めた! もう俺は家以外で酒を飲まねえ! 金輪際、お前以外と酒は飲まねえ!」


心を入れ替えた伴蔵。突然愛妻家になります。

毎晩毎晩、二人で美味しいものを食べにいきました。


そしてすっかり気をよくしたおみねの一言……


「あんたねえ、忘れちゃいやだよ。今の生活があるのはどういうことか。

 いいかい? 『新三郎さん殺して、百両貰ったのはお前だよ?』」


……これがよくなかった。


(この女……この間は『私の案』とか言ったくせに俺に責任を押し付けるのか。

 俺のせいか?俺がやったのか? ……この先、あと何回俺はこいつにこのことを言われて、ゆすられ続けるんだ……?)





「……なぁ、江戸に行ってみねえか? 実はお前に内緒にしてたことがあるんだよ」


「あんたまだ、あたしに隠し事かい!?」


「そうじゃあねえんだよ。新三郎さんが肌身離さず持ってた金無垢の開運如来……覚えてるだろ?

 金無垢だぞ……?五百いや、千はくだらねえぞ。実はおめえのために土手に隠しておいたんでい。

 なあ、掘りに行かねえか?」




二人は江戸へ向かいます。


そして言われた通り、土手を掘って探すおみね。


「どこだい? 見つからないよ?」


「そのあたりだよ。よーく探して掘ってみなよ」


「本当かい? おまえさん、独り占めは嫌だよ。ちゃんと山分けだよ」


「おーもちろんでい。山分けしようや。

 ……ただし……あの世で、な」


伴蔵は合口をおみねの首に突き立てます。



ぎゃ! ……という叫び声を風がかき消しました。


伴蔵は町中を叫んで回ります。


「賊だ! 賊がでた!! 助けてくれ!!」


……伴蔵は騒ぎを大きくします。


「俺は逃げたけど女房が見つからねんだ! 誰か探してくれ!!」


そして町内の人間たちによる大捜索が始まり、茂みの中から、首を刺されたおみねの遺体が発見されます。


「そんな! おみねーーー!!!」


……こうして伴蔵は、妻を賊に殺された被害者という立場を手にするのでした。




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