熊誘う、兎
☆ロンドン間近だというのに、車掌がチケットを確認しに来た。ガラスの表面はツルツルしているので、表面で光は反射される。昼間はガラスの向こう側から来る光がその反射よりも強いため、表面で反射した光はよく見えない。
だけど、こうして外が暗くなって向こう側から来る光が弱くなると、表面で反射している光が見えるようになる。まるで鏡に映ったあなたと2人の世界に、知らない手が伸びてくる。
…どうせ落っこってくるのだから。
嘆いて、救われないということすら忘れている、救われない人たちと、僕は変わらないのだから。ホントは。
一緒に死んで下さい…
☆なんとなく、あなたが駒を撫でていると、その駒がうさぎに見えてくる。もし全部の駒がうさぎなら、うさぎはあなたの味方だろうから、ルールなんてそっちのけで、僕は負けそうな気がする。
お月様にいるうさぎじゃないけど、その駒に感情があったら、まあ、さぞかし騒がしいだろう。きっと、戦いなんてやめて、ボードから飛び出して、さっき見せてもらった写真のように、あなたの膝の上で、気持ち良さそうに撫でられているに違いない。
ダメだ、笑う。僕らはこうして神さまの目でボードゲームをしているけど、駒の目線で見たら、戦況もわからないし、捨て駒にもされたくない。僕もどうせなら、好きな人の駒がいい。そんな小さなことでしかない。
それに、あなたと戦うとなると、それこそ大量のコマうさぎに襲われて困るから、僕がもし、駒なら戦わないで済む方法を考えると思う。
確かに、ボードゲームは神さまの視線。でも、人は駒でも神さまでもないから、こうして思考して、無言だけど、ボードを介して話しながら、例えば生きている。
だから、楽しい。この時間みたいに、俯瞰的な視線と人の目線とをリアルタイムに行ったり来たりして、お互いがいないと見えて来ない、知らなかった場所を探す。
知らないことを知ることが楽しいし、好きだと思う。そういうことを話し合える仲間が好きだし、自分が持っていない何かを持っている人を尊敬する。
僕だけではわからないことを知りたいから。




