死者の義憤
◯ホテル・スイートルーム・リビング (夜)
相棒がテレビを観ている
借りたスイートルームのリビングで『why?Japanese people?』と、アメリカ人が日本人相手にコメディをしている番組を観て、アメリカ人である相棒(29)は、ソファで腹を抱えて爆笑している。
俺(29)フランス人、爆笑している相棒に「風呂、入ったら?」
相棒「(ソファの背もたれから仰け反り、俺を見ながら)ああ、もう少し待ってくれ。これ、面白すぎ。本当、日本来て思った」
俺「(テーブルに肩肘ついて呆れたように)確かに意味不明だよ。なんだ、あの人?日中はプロダクトマネージャー、夜はカフェの店員って」
相棒「あの眠ってる人、面白いよね。港区のでっかいビルでアプリの稼働実験とかさ、とても先進的な取り組みを見せて貰ったあとに、夜の待ち合わせに新宿のカフェ指定してきて、店員で登場とか忍者だよね」
俺「日本にもう忍者はいないだろ。いるならスパイだ。まあ、あの人は確かに怪し過ぎるけど」
相棒「でも、あの人、気がついたらいる感じしない?俺たちの工場も、あの最小限で拡張性高いアプリがスパイみたいに活躍するんだ。プロダクトマネージャー or カフェ店員, and Ninja!」
2人「why?Japanese people?」
2人で目を合わせて、爆笑する。
俺「風呂入って飯にしようぜ?」
相棒「そうだな。今日のご飯当番はそっちだけど、何かな?」
俺「(じゃーん)特製ポトフとチーズ、バタールのサンドはバインミー仕様だ!」
相棒「それは美味しそう!早く入ってこよう!いつもありがとう!」
俺「いいって。早く入ってこい。温めておく」
◯同、相棒と食事している
相棒「(バインミーを頬張りながら)これ、うますぎ!鯖の塩焼きに野菜たっぷりでレモンの酸味となんだろ?」
俺「(ポトフを食べながら)んん?ああ、ジャパニーズビネガー?赤酢だな。日本酒の粕から作るビネガーだ」
相棒「へー。モルトビネガーとかバルサミコみたいな?」
俺「そんな感じだな(水を飲む)」
相棒「んー。美味しい。あ、はい(水をカップに注ぐ)」
俺、注がれる水を注視する
× × ×
(フラッシュ)相棒の親父、金持ち。俺の親父、貧乏。
今から20年前、相棒の親父のクルマに猫が入り込んでしまったのを、俺の親父が猫を取り出した。
相棒の親父は感謝して、俺の親父を家に招待した。そして、息子である相棒に会わせた。
相棒は親父に懐いた。俺の家は貧しかったが、相棒が来るからとおやっさんは親父に便宜を図った。親父はおやっさんの部下になり、俺はメシが食えて大学も出れた。そして今は相棒が作った化粧品メーカで副社長をしている。
今回もおやっさんから相棒のお目付け役を頼まれたから来た。1月の旅で5000ドルのギャラが入る格差社会。どこまでも相棒を超えられない。
× × ×
食事の手が止まる、俺
心配そうになる、相棒




